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2009/11/16

ゴーン・ベイビー・ゴーン

監督:ベン・アフレック
出演:ケイシー・アフレック/ミシェル・モナハン/エド・ハリス/ジョン・アシュトン/エイミー・ライアン/エイミー・マディガン/タイタス・ウェリヴァー/マイケル・K・ウィリアムズ/エディ・ガテギ/マーク・マーゴリス/マデリーン・オブライエン/スレイン/トゥルーディ・グッドマン/マシュー・メイハー/ジル・クイッグ/ショーン・マローン/キッピー・ゴールドハーブ/エリザベス・ダフ/モーガン・フリーマン

30点満点中19点=監4/話3/出4/芸4/技4

【消えた少女を追って】
 小悪党と小市民たちが暮らすボストン。麻薬中毒のヘリーンの4歳になる娘アマンダが何者かに誘拐された。アマンダの伯父ライオネルとその妻ビーから依頼を受けた私立探偵のパトリックとアンジーは、早速捜査を開始、わずかな時間で警察もつかめなかった重要参考人の存在を突き止める。だが、捜査の責任者ドイル警部、その部下のレミーやニック、麻薬密売人や前科者らが複雑に関わるこの事件は、意外な進展を見せるのだった。
(2007年 アメリカ)

【あなたに覚悟はあるか】
 主に会話と取り引きによってストーリーは進む。やや単調な流れだ。
 その合間にカメラは、パトリックの周囲、街と、そこに生きる人々の様子を執拗に捉える。レポーターの下半身、無責任な野次馬、誘拐事件と同列に扱われるスポーツニュース、自分のテリトリーを守ることだけに懸命な者、口汚い少年たち……。

 つまり、この映画で描かれるのは、背景
 パトリックのいう通り「人間を形作るのは自分の周囲だ」とするならば、そして実際この世界が会話と取り引きだけで満たされた単調なものであるとしたら、どうだろう。人間は「保身のための取り引きと他者への無関心・無責任とで成り立っている大きなシステム」、すなわち社会の、主体ではなく背景でしかない、といえるのではないだろうか。
 なんと哀しい現実。

 ただし、この映画の登場人物たちは、背景であることから脱して主体となるべく、エゴイズムにしたがって行動する。
 アマンダの母ヘリーンは「注射よりも身体にいい」という理屈でコカインを吸い、「車に残しておけない」からと幼い娘を危険な現場へと連れ出す。唾棄すべき身勝手さ。
 世界から哀しみを失くすために働くはずの者たちは、ルールを捻じ曲げることでその仕事をまっとうしようとする。アンジー(ミシェル・モナハンが美しい)は、人の世の哀しさを受け入れる現実主義の姿勢を示す。
 唯一アマンダの身を真剣に案じているビーは、やがて物語からフェードアウトしていく。
 救いや理想を放棄する人々。

 そんな者たちに取り囲まれてパトリックだけは、無関心も無責任も打ち捨てて、責任感を取り戻そうとする。子どもたちの幸せ、子どもたちの未来に対して責めを負う覚悟を見せる。それもまた一種のエゴイズムだと批難されるのだが、少なくともパトリックが、世の中も人間も“こんなもの”じゃないはずだという想いを具現化する行動を取ったことは確かだ。

 だがパトリックの心の内にも、まだ自分の理想主義への不信感と躊躇がある。自分が巻き込んだ人たちの、不幸の連鎖への後悔がある。それを物語るような、ソファに座った彼と少女との距離が痛々しい。
 ゴーン=消えてしまったのは、子どもたちだけではない。子どもたちを守るはずの、信頼に足る周囲、理想の社会もまた、失われてしまったのかも知れない。そして「人間を形作るのは自分の周囲」なら、そんな社会にいるパトリックが自分自身を信じられなくなっても、無理はない。
 なんと哀しい現実だろうか。

 ただ、パトリックにしろドイルやレミーにしろ、その行動において評価すべきは、「何が幸せか?」という問いに対する答え・判断を4歳の女の子に委ねようとしなかったことだ。
 そう、それだけは、絶対にやってはならないこと。回答も判断も行動も、大人が責めを負うべきものである。

 撮影、美術、音楽、演技など多くの面でハイレベルの仕上がりを見せるものの、事件の裏側を“説明”することに終始しており、物語を見せる映画としては決して完成度が高いわけではない。が、同種のテーマを扱った『フリーダムランド』と同様に、突きつけてくるメッセージは実に強烈だ。

 これは「ただ背景にとどまらず、他者や周囲に影響を及ぼし、その人を、ひいては社会を、そして子どもたちにとって理想的な未来を“作る”存在となる覚悟が、あなたにはあるか?」と、問いかけてくる映画である。

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