笑う大天使(ミカエル)
監督:小田一生
出演:上野樹里/関めぐみ/平愛梨/菊地凛子/松尾敏伸/加藤啓/村木仁/伊藤修子/佐津川愛美/谷村美月/キタキマユ/大田ななみ/ブライアン・デイビス/デルチャ・ミハエラ・ガブリエラ/手塚理美/西岡徳馬/伊勢谷友介/広川太一郎(ナレーション)
30点満点中14点=監2/話1/出4/芸4/技3
【庶民派お嬢様たち、誘拐犯に立ち向かう】
母を失くした司城史緒は生き別れの兄・一臣と再会、資産家となっていた兄の勧めで良家の子女だけが通う聖ミカエル学園に編入することとなる。長い貧乏暮らしのせいで学園の空気に馴染めない史緒だったが、クラス委員の更科柚子と副委員の斎木和音も自分と“同類”であることを知り、さらにこの3人は大天使ミカエルの計らいからか、不思議な力を身につける。いっぽう国内各所では、まさに良家の子女ばかり狙った誘拐事件が多発し……。
(2005年 日本)
【ベクトルは許すが、作りはダメ】
天才という言葉から連想する人物のひとりが、川原泉。その敬愛すべきカーラ教授の作品を映画化しようとすることじたい、無理があるのだが。
原作は単行本で全3巻。「天才」による「中編」を“そのまんま”90分の劇映画に作り直すのは無理だっていうことはさすがに製作サイドもわかっていたらしく、和製チャーリーズ・エンジェル風味のバカ映画へ持っていこうとする。そのベクトルは、悪くない。教授らしさがこれっぽっちも再現されていなくたって、そんなのはこっちも覚悟のうえだ。
でも、作りそのものがダメダメ。
とにかく喋りすぎ。ラジオドラマかっていうくらいの説明的独白の量。しかも史緒にも柚子にも和音にも独白を用意して視点はバラバラ。そこにナレーションまで加わる。そのナレーションは、広川太一郎(合掌)らしさをまったく生かせていない。
そこまで喋っているのに、史緒に対する一臣の想いは十分に描けているとはいいがたいし、主役3人の疎外感・連帯感・使命感だって醸し出されていない。展開も強引。
要するに、かなり稚拙なシナリオ。
撮りかたも、やや中途半端。笑わせたいんだかハラハラさせたいんだか感動させたいんだか、ぬぴょぉ~っとした空気のまま、深夜ドラマ・クォリティの絵と間(ま)が続いていく。
鎖骨たっぷりの制服デザインとか、日本にハウステンボスがあることのありがたみを感じるロケーションとか、ファンタジックな背景とか、史緒が海に沈んでいく際の浮遊感とか、それなりに「ディテールと、1つ1つの画面を丁寧にしよう」という意気は感じるものの、作品トータルとしては安っぽい仕上がりだ。
まぁセリフがセリフだから学芸会になっちゃうのは仕方ないとして、そんな中、キャストは頑張っている。
上野樹里は久しぶりの関西弁に加え、ふんわりからキリリまで多彩な眼線を見せてチャーミング。関めぐみも同様に、真面目顔と笑顔とのギャップが楽しい。平愛梨なんか、いまよりこの頃のほうがずっとカワイイだろ。伊勢谷友介も、意外と難しい役どころをキッチリまっとうしている。
ってことで、主演3人のファンのコレクターズ・アイテムかな。
間違ってもこれを観た人が、本作だけで川原泉を評価してしまうことのないよう願いたい。
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