TEAM NACS FILMS 「N43゚」
30点満点中14点=監3/話2/出3/芸3/技3(平均)
【TEAM NACSによるオムニバス・ムービー】
昔の仲間たちを急遽集めた男・シゲの目的とは……『頑張れ!鹿子ブルブルズ!』/散歩中に出会ったお爺ちゃんと幼女の秘密の交流……『神居のじいちゃん』/散らかしさんと片付けさんの壮絶バトル……『部屋クリーン』/謎の奇病に冒された“ヤスダッタ”の生きざま……『ヤスダッタ3D』/かつての人気劇団が60年ぶりの復活公演に挑む……『AFTER』
(2008年 日本)
【全体として自己満足の域を出ず】
TEAM NACSのメンバー5人がそれぞれ監督・脚本を務めた、各編約20分ほどのショート・ムービー集。まぁあまり期待していなかったが、もっとも知名度が高く、さまざまな現場を経験しているはずの大泉と、公演で演出には慣れているはずの森崎による2本がダメダメ、挟まれた3本はそれぞれ見どころがある、というバランスになっていた。
●頑張れ!鹿子ブルブルズ!
監督:大泉洋
出演:戸次重幸/大泉洋/森崎博之/安田顕/音尾琢真
慣れていない人が撮るとこうなるよ、という見本。ベタっとした平面的なレイアウトで、人物を正面から捉えたカットが多くて単調、間も悪い。
内容としては、クスリとホロリを交えつつ、ブラックとシュールとバカをミックスさせた、いかにもNACS的なお話。誰もバスケ選手に見えないという部分も含めて、各人の役柄もファンにとっては予想の範囲内だろう。
つまりはファン向け+NACSってこういう感じです、という紹介編。この内容から「生きることの意味」まで考えられる真面目な人なら楽しめるかも知れない。11点。
●神居のじいちゃん
監督:音尾琢真
出演:平田薫/大野百花/森崎博之/滝野洋子/夏八木勲
まぁありがちなファンタジーだが、ストーリーとしてはもっとも可能性を感じる作品。もう少しテンポを上げてよりコンパクトにまとめてもいいが、エピソードを増やして60分~90分の映画として独立させても通用するんじゃないだろうか。
ただ、難しい脚本であることは確か。ミエミエの“裏”を観客に読ませつつ、それでも感情移入を誘って引っ張っていくには、スケール感や情感、ポイントとなる部分を「ぐぅわっ」と印象づける演出が不可欠。残念ながら音尾監督にそこまでの技量はなかった。15点。
●部屋クリーン
監督:戸次重幸
出演:音尾琢真/戸次重幸
ヘタウマ&緻密なイラスト、吹き替えが醸し出す不思議な空気感、音尾と戸次のキャラクター作りと気ぐるみ……などによって楽しく見られるが、結局は手の込んだバカ・コント。15点。
●ヤスダッタ3D
監督:安田顕
出演:安田顕/安田こずえ/安田唯乃/安田和博/安田大サーカス/安田弘史
安田の持つ“狂気”を、そのまんま叩きつけたかのような作品。シャープなモノクロとパートカラー、立体的な構図、多彩なアングル、計算された照明など、演出/映像の両面で、5エピソードの中で唯一「映画にする」という意志を感じさせる。往年の円谷プロとか押井守の実写作品を髣髴とさせるイメージだ。
大真面目にバカをやりつつ、「夢を絶たれた人間の行く末」という哲学にまで踏み込んでいるのが、いい。17点。
●AFTER
監督:森崎博之
出演:秋元博之/坂見猪兵衛/斉藤冨夫/小山博/畠山直隆/大泉洋/田野アサミ/松田沙紀/森崎博之/鈴井貴之
大泉作品同様、あくまでファンサービス的な1本。演出的には大泉よりも多少は“こなれて”いるものの、内輪受けに終始し、素人同然の人物ばかりを配置し、地方の劇団における普遍的な事象を描いたストーリーにすらならず、ただただ森崎の「NACS愛」だけで作られている。
ファン感謝祭での限定上映ならともかく、劇場にかけてはイケナイ作品だろう。まぁ観に来るのはNACSのファンだけなんだろうけれど、その現状に甘んじてしまうところに、この「N43゚」というプロジェクトの限界を感じてしまう。松田沙紀は可愛いけど。9点。
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