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2009/12/11

純喫茶磯辺

監督:吉田恵輔
出演:宮迫博之/仲里依紗/濱田マリ/近藤春菜/ダンカン/和田聰宏/ミッキー・カーチス/斎藤洋介/伊藤明賢/田島ゆみか/悠木碧/堀越のり/あべこうじ/麻生久美子

30点満点中16点=監3/話3/出5/芸2/技3

【ダメダメ父さんが始めた喫茶店】
 不意の「父さんは喫茶店を始めます」宣言。手にした遺産でノホホンと暮らしていた磯辺裕次郎は“純喫茶磯辺”を開店させ、娘の咲子も手伝うハメに。咲子はバイトとして雇った江頭や素子と店に立つものの、いつまで経っても閑古鳥。ダサダサの内装を思えば無理もない話だ。やがて裕次郎のバカバカしいアイディアがもとで店はにぎわうようになるのだが、急接近する父と素子の様子や、店で原稿書きに勤しむ作家・安田が気になる咲子は……。
(2008年 日本)

【スマートな生きかたなんか、ありえない】
 しかしアレだな、仲里依紗って全人類の中で最強に可愛いな。おなじみのハナにかかった声、蔑んだ眼と怒り顔、はにかむ微笑みなどが渾然一体となって醸し出される、ツンデレとしての天性の素養。
 今回は入浴シーンも風呂上がりもあるし、イヤイヤながら写メに収まる際のポーズは、このうえなく愛おしい。

 彼女という稀有なタレント(才能)が、バカ父さんの言動や周囲の出来事に一喜一憂し、表情の変化を見せる。それが本作最大の見どころであるはずなのだが、残念ながら低予算邦画特有の「カット数が少なく、寄るべきところで寄らない」という作りにより、しっかりとうつされずじまい。

 まぁカット数が少ないなりに「手前と奥」という構図にこだわり、舞台に立体感を与えている点は評価できる。が、あの絶妙の鼻血シーンでもわかる通り、もっと各人の表情を大切にした撮りかたをしてもよかったんじゃないだろうか。
 ナレーションでのしゃべり過ぎ、BGMの安っぽさも耳障りだ。

 ただ、脚本は「考えられているなぁ」と感じさせる。かなり意識的に、頭の中で考えたキッチリしたセリフではなく極力ナチュラルに言葉をつなげることを徹底し、演者もそれに応えて、リアルな“どこかの町の人々”を作り出している。

 とりわけ作り手からのメッセージとして強く迫るのが「アレ」の多用。うん確かに、ちゃんと言葉では表せない感情や状況で、僕らの世界は作られている。
 割り切れない世の中で上手く生きられない人たち、周囲からないがしろにされているような疎外感、どうして誰もデリカシーというものを持ち合わせていないんだろうという思い、いたたまれなさ……。そういう、ウダウダっとした世界を表現するのに、「アレ」という曖昧な言葉ほどふさわしいものはないだろう。

 やがて咲子は知る。そもそも世の中って、自分の理想通りに動いてくれたりなんかしないし、スマートなものなどありえない。そして、どんなに野暮ったくダサく思えるものでも、いったん自分の中に入れば、いったん自分を取り囲む景色として存在するようになれば、それが消えてなくなってしまうとき、どうしようもない寂しさに襲われてしまうものなのだ。

 結局は人って、叫んだりわめいたり怒ったり当たり散らしたり、カッコ悪くて曖昧な生きかたしかできない。ただし自分の中に沸き上がった「大切にしたい」とか「申し訳ない」という想いだけは、尊重して歩んでいきたいものである。
 ということを、まったりと伝える作品。

 つまりまとめれば、仲里依紗をオレにくれ。

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