装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ
監督:高橋良輔
声の出演:郷田ほづみ/長嶝高士/江川央生/矢部雅史/後藤哲夫/石塚運昇/大塚周夫/銀河万丈
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸4/技3
【彼は死神か、死神に嫌われた者か】
ギルガメスとバララントが激しく交戦するアストラギウス銀河。ギルガメス勢メルキア軍の将校ヨラン・ペールゼンは、秘密裏に特殊部隊を編成した罪で軍事裁判にかけられ失脚を目前としていた。だが情報省のウォッカムは強引に彼の尋問続行を主張する。ウォッカムの狙いは、ペールゼンが研究していた「驚異的な確率で戦争を生き残る者」。その“異能生存体”であるキリコ・キュービィーは各地を転戦しながらしぶとく生き延びる。
(2008年 日本 アニメ)
【ファンアイテム+アルファ】
全12話のOVAを再構成した劇場公開版。オリジナル(原点)であるTVシリーズの前日譚としてファンには興味深い展開/ストーリーだ。
まぁバーコフ部隊が挑む作戦があまりに強引だったり無計画だったり、オープニング・バトルは『プライベート・ライアン』のパクリだったり、セリフによる説明に頼った部分も多かったり……など、上質なシナリオとはいえないだろう。
けれど、シリーズを知らない者が見てもまったく意味不明という内容にしなかったのは良心的。ダイジェスト色は薄く、ペールゼンとウォッカムの対峙と、キリコらバーコフ部隊の活躍とを交互にテンポよく見せる作りで、一応は1本の劇映画としてのまとまりを実現している。
絵としては、CGの多用がポイント。戦艦の動かしかたに“こなれていない”感じは残るが、それを補って余りあるのがAT=アーマード・トルーパーの躍動感。
機体のテクスチュアは渋く、煙に霞むシルエットは雰囲気たっぷり、それらがわらわらと無数に飛び交う。舞台の遠近の表現ともあいまって、なかなかにカッコいい。
特に雪上でのバトルはスピード感豊か。その他も舞台/シチュエーションを上手に生かした戦闘バリエーションが維持されているし、舞台メンバーのキャラクター設定も鮮明。「小隊の活躍モノ」あるいは「4mサイズの兵器を3DCGで戦わせる」映画としては、魅せる作りだ。
ATが“消耗品である1つの兵器”として描かれている点も、本作に戦争映画としての格を与えている。
が、それでもやはり、TVサイズの絵作りやゴマカシなども見られ、劇場用映画のスケールに達していない。BGMは一昔前のTVゲームかと思うほど安っぽい。
ただ「もういっぺんシリーズ通して観たいなぁ」と思わせる空気に満ちているし、「これ、ハリウッドに持っていって、ほぼこのまんまの設定と展開で実写+CGの映画にすれば、結構ヒットするんじゃないか」と感じさせる可能性にも満ちていることは確かである。
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