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2010/01/04

東京マーブルチョコレート

監督:塩谷直義
声の出演:水樹奈々/櫻井孝宏/岩田光央/井上麻里奈/中村悠一

30点満点中16点=監3/話3/出3/芸4/技3

【愛してるといえない、ふたり】
 ドジばかりで失恋続きのチヅル。いまの彼=悠大とは何とか上手くやっているが、相手から本当に愛されたことはあるかと悩み、自分からの別れを考えるようになる。そんなとき、悠大からミニロバをプレゼントされ……『マタアイマショウ』/臆病で優柔不断な悠大は、何度も恋に失敗してきた。今度こそは自分の想いを伝えなければと、チヅルにプレゼントを手渡そうとするのだが、相変わらず彼女とは心がすれ違って……『全力少年』
(2007年 日本 アニメ)

【見た目の雰囲気や構成はいいが、踏み込まない】
 人と人との関係の初期段階において、5本の指と5本の指がガッチリ絡みつくようなつながりなんて、極めて稀なんだと思う。せいぜい、小指と小指が不器用に交差する程度。
 その危うげなつながりから人は、他の4本の温もりも感じ取ろうとする。そしていつの間にか“手をつないでいる”状態へとふたりの関係が進んでいることに気づくのだ。

 恋に自己完結しようとしてしまうチヅルと、不器用ながら全力でぶつかろうとする悠大の、小指と小指のつながり、感じ取ろうとしても感じ取れない4本のもどかしさを、最初は女性からの視点、次に男性からの視点で描くのが本作。純愛アニメでは珍しい構成だ。

 目を引かれるのは、熟練・小林七郎の美術が描く、冬の東京の淡さと美しさ。ケータイ着信音の響きをポケットから取り出す前と後で微妙に変えてみたり、絶妙なタイミングでサウンドトラックのオン/オフを操ってみたり、音関係の演出(音響監督は蝦名恭範)も丁寧だ。
 また、風、高さ、ビクビク感を表現した作画も上質。谷川史子キャラクター・デザインによる人物の「肌の柔らかさと透明感と温度」も、きっちりと伝わってくる。

 ただ、その谷川史子の起用が“壁”になったことも否めない。
 なにしろ『早春に降る雪』とか『君と僕の街で』では、作品と切り離して単独で味わっても“これぞ人生の、ことに恋における真理”だと感動できるセリフを発してくれた人である。自然と、それだけの“ズドンと弾を撃ち込まれるような身震い”を、本作にも期待してしまうじゃないか。

 が、視点変更のユニークさはともかく、それ以前に大切であるはずのチヅルと悠大それぞれの“想い”の描写が、ちょっと稚拙
 恋に失敗ばかりしているふたりの心は内省にとどまり、どうも「相手をどう想っているか」へと踏み込んでいかない。
 それがないと「あなたが思っているような人じゃない」というチヅルの言葉は唐突なものとなり、悠大への「優柔不断だ」という評価も「けれど、大好き」へとつながっていかない。悠大の疾走からも意味が失われる。
 また、独白を主軸としてストーリーが進むという手法そのものはあってもいいと思うが、にしても喋りすぎ。目に見えているものすべてをセリフで再現してしまう点に、頭の悪さを感じてしまう(脚本は尾崎将也、フジテレビとかテレビ朝日で数多くドラマを手がけている人らしいが)。

 まぁ谷川史子レベルとはいかなくとも、もっと“恋の真理”へと踏み込んだものにして欲しかった、と思う。
 あと、旧タワーとスカイツリー、離れて並び立つ2つの鉄塔というシチュエーションも、ストーリーや描写に生かせたはずで、そのあたりももったいないと感じる作品だ。

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