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2010/01/24

ルイスと未来泥棒

監督:スティーヴン・J・アンダーソン
声の出演:ダニエル・ハンセン/ジョーダン・フライ/ウェズリー・シンガーマン/スティーヴン・J・アンダーソン/マシュー・ヨーステン/トム・ケニー/ローリー・メトカーフ/トレイシー・ミラー・ザーニーク/ハーランド・ウィリアムズ/ニコール・サリヴァン/オーリアン・レッドソン/トム・セレック/イーサン・サンドラー/ドン・ホール/アンジェラ・バセット
吹き替え:白石涼子/吉野裕行/屋良有作/小林翼/小高三良/小宮和枝/みつき/多田野曜平/本田貴子/宮下栄治/井上和彦/江川央生/小林幸子

30点満点中16点=監3/話3/出3/芸3/技4

【過去と未来をつなぐ大冒険】
 6丁目子ども養護施設の前に捨てられた、ひとりの赤ん坊。彼=ルイスは賢く育ったものの、奇妙な発明に打ち込むあまり養子縁組が決まらず、世話役のミルドレッド、ルームメイトのグーブらは呆れ顔だ。自信の新発明「記憶スキャナー」を手に科学フェアへ参加したルイスが出会ったのは、未来から来たという少年ウィルバー。彼によれば山高帽の男がタイムマシンを盗んでこの時代に到来、何か悪だくみを考えているというのだが……。
(2007年 アメリカ アニメ)

【まずは第一歩】
 ディズニーの3DCGアニメで「Walt Disney Animation Studios」名義の映画(つまり非ピクサー作品)。まだ経験不足からか、ちょっと“こなれていない”仕上がりだ。

 感心させられる部分は多い。
 たとえば開けられたドアは「開いたまま」ではなく「いっぱいに開いた後で少し戻る」という細かな動きを見せる。慣性や飛翔感の表現は見事だし、山高帽の男の顔の立体感も素晴らしい。
 ルイスの目覚まし時計にアインシュタインがデザインされているなど細々とした遊びも見られ、未来世界全体はカラー粘土のようにファンシー。一転して歴史が書き換えられた後のディストピアにはダークが漂う。

 完成した発明品を撫でるルイス、という味な演出もあるものの、基本的には各キャラクターがオーバーアクションでストーリーをグイグイと引っ張っていく作り。それも楽しい。特に、洗脳された人たちに囲まれてルイスがタイムマシンを修理する場面のスピード感が上質だ。

 が、そのスピード感が本作のキズにつながっている。冒頭からラストまで落ち着かないまま、あまりにギッシリ、あまりにハイスピードで「心情や出来事をじっくりたっぷり見せる」場面が一切ない。
 また、せっかくタイムマシンを題材にしていながら行き来するのはせいぜい40年(恐竜は出てくるけれど)、飛んでいる範囲も意外と狭く、主たる舞台は養護施設、科学フェアの会場、ロビンソン家の中とその周囲、大企業の会議室だけ。

 デザイン面でも、ルイスやコーネリアスの発明品には“ガラクタパンク”とでも呼ぶべきにぎやかさはあるものの、ドリスにしろカールにしろ既存の価値観を大きく覆したりキャラクター製品として愛されるパワーに満ちていたりするほどではない。

 全体として、メリハリやスケール感や情に欠け、「これを誰からも愛されるヒット作にしよう」という志や熱意の点でも不満が残る仕上がりだ。
 ひょっとすると3D版で観れば、そのハイスピード感に“酔える”のかも知れないが、1本の映画の完成度としては、まだまだだろう。

 山高帽の男の正体には驚かされた。ドリスを撃退する際の「意志から始まるパラドックス」もありそうでなかったアイディアだ。そうしたセンス・オブ・ワンダーはあるし、随所に上手さや楽しさも感じる。
 その“良さ”を生かしつつ、さらにエンターテインメントとして作品をブラッシュアップしていくことを、Walt Disney Animation Studiosには求めたいものだ。
 何しろテーマは「Keep Moving Ahead」。大きな前進のための、まずは第一歩的作品、といったところだろうか。

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