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2010/02/27

幸せの1ページ

監督:マーク・レヴィン/ジェニファー・フラケット
出演:アビゲイル・ブレスリン/ジョディ・フォスター/ジェラルド・バトラー/マイケル・カーマン/マーク・ブラディ/アンソニー・シムコー/クリストファー・ベイカー/ピーター・カーラン/ロンダ・ドイル/ラッセル・バトラー/シャノン・ヴァンダー・ドリフト/マディソン・ジョイス

30点満点中17点=監4/話2/出4/芸4/技3

【海賊襲来、難破、そして冒険の旅】
 南太平洋に浮かぶ、とある火山島。少女ニムは、海洋生物学者の父ジャック・ルソー、そしてトカゲやアザラシ、ペリカンやウミガメらに囲まれて暮らしていた。が、観測のため船で出かけたジャックが嵐に巻き込まれ、ニムはひとりきりに。おまけに海賊も来襲。彼女からのSOSを受け取ったのは冒険小説『アレックス・ローバー』シリーズの作者アレクサンドラ。潔癖症で外出恐怖症の彼女は、意を決してニム救出の旅へと出るのだが……。
(2008年 アメリカ)

【開いて触れることの大切さ】
 お話は、薄くてベタで少々乱雑で、ご家族連れをターゲットとする夏休み映画といった趣。中盤以降の『ホーム・アローン』的な展開も、目に見えるものすべてをセリフにしてしゃべるという作りも、まさにお子様向けだ。
 あまり頭のいい映画ではない

 ただ、上手に撮られている部分も印象に残る。
 ニムとジャックは、離れた場所にいても“おやすみの儀式”でつながりを確認しあう。ニムの登山&アレクサンドラによるポストへの決死行、2つの冒険がシンクロする。小説の主人公アレックスは実体化し、アレクサンドラに語りかける。そのアレックスの風貌はジャックそのもの。
 海上、島、執筆用の部屋、そして空想。4つの時空がシームレスに描かれて、世界の“つながり”を感じ取らせる。

 役者たちも楽しい。
 アビゲイル・ブレスリンは、さすがにオスカー・ノミニー、等身大の“頑張る少女”を堂々と熱演する。ジョディ・フォスターはめずらしく、わかりやすぅいコメディ演技で懐の深さを披露。
 瞠目はジェラルド・バトラー。これまでは「野暮ったくて不器用で暑苦しくて得体の知れない、ザ・漢(オトコ)」という役柄ばかりだったが、その持ち味=野性に、学者としての知性、パパとしての優しさ・マヌケさを程よくミックスしたジャックというキャラクターを上手に作り出していて、過去のどの映画よりも魅力的だ。

 そして、心に残るセリフも散りばめられている。
「想像力があればどこにでも行ける」
「勇気は、学ぶ心を持っていれば自然と身につく」
 それらの“言葉”を全肯定しているわけじゃない、というのもポイント。

 僕らは、家に引きこもっていてもすべてが手に入る便利な世界に生きている。インターネットにつながったパソコンと、クレジット・カードさえあればOK。運動だって在宅のままできるし、要件を伝えたいときは留守電とメールで事足りる。わずらわしい対人関係に悩む必要はない。外の世界にあるものなんか、恐怖とバイキンだけだ。
 その象徴がアレクサンドラ。

 いっぽうのニムも、自然に囲まれて暮らしているように見えて、他者を受け入れようとしない性格の持ち主。優しいパパと、いうことをなんでも聞いてくれる動物さえいれば、それでいい。価値観の相違とか、自分の夢やテリトリーに入ってくるものなんて、認めてやるもんか。

 でも、面と向かって自分とは異なる誰かと関わりあい、いろいろな価値観があることを知り、認めあい、世界が自分の思い通りに動いているわけではないと実感することは大切だ。
 アレックスはいう。「タッチ・ザ・ワールド」と。部屋のドアも心のドアも開いて飛び出して、触れることから、世界とのつながりの1歩目、幸せの1ページ目は始まるものなのだ。
 それに、知識と勇気を武器にして、危機を潜り抜けて達成感へと至る、その行為は「誰かと関わりあった経験、あるいは関わりあおうとする決意の結果」として存在するはずだ。

 やがてアレックスは、自ら消える。それはアレクサンドラが、潜在意識の中では「タッチ・ザ・ワールド」を望んでいた証拠。その代替物として彼女の小説は作られていたわけだ。彼の消失は、ここからが「ニムとジャックとアレキサンドラ、他者とつながった“人”が紡いでいく本当の物語」の始まりであることを告げる。
 閉じたまま、独りのままでは、1ページ目は始まらないのである。

 南緯20度・西経162度というと、フランス領ポリネシアのあたり。はるか彼方まで旅をする、その物理的な移動が“開き”をもたらすってのもまた真理かも知れない。旅って、心を開放させるもんね。

 とはいえ忘れてならないのは、この映画を観ている僕らの大多数が、海賊船の側にいるってこと。ただ与えられたものを疑問なく受け取って、ズケズケと聖域に踏み込んで楽しむ、という生活。
 それは、開いているようで閉じた生きかた。そうならないためにも、自分を取り囲んでいる世界がどんなふうにできていて、どんな人たちが暮らしているかを理解し認めることが、やっぱり大切なんである。

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