幸せになるための27のドレス
監督:アン・フレッチャー
出演:キャサリン・ハイグル/ジェームズ・マースデン/マリン・アッカーマン/ジュディ・グリア/ブライアン・カーウィン/モーリク・パンチョリー/ミカエル・ジーグフェルド/ペイトン・リスト/クリステン・リッター/デイヴィッド・カストロ/ロナルド・ガットマン/エドワード・バーンズ
30点満点中16点=監4/話2/出3/芸4/技3
【ブライズメイドの幸せは、どこに?】
幼い頃、従姉妹の結婚式でその華やかさと楽しさに魅せられたジェーン。20年後のNY、友人の結婚式や婚約パーティーをコーディネートすることがジェーンの生き甲斐となっていた。が、モデルをしている妹テスが帰郷、ジェーンの上司であるジョージと恋に落ちる。ジョージはジェーンの片想いの相手なのに。さらに、結婚に不信感を抱きながらも結婚式の記事を見事に書き上げる記者ケビンがジェーンを取材することになって……。
(2008年 アメリカ)
【キャラクター設定の悪さが惜しまれる】
面白くないわけじゃない。けれど、いまひとつノリ切れない。その理由がキャラクター設定のマズさにあることは明らかだ。
まずはジェーン。たとえば「母親のドレスを着て挙式する」という妄想シーンがあるだけでも、この人物に厚みが加わり、その後の展開にも説得力が生まれたはず。また「他人の結婚式のプランについては『こんな飾りつけじゃダメ!』と“ノー”を突きつけるのに、自分の恋に関しては臆病」という味つけもあって然るべきだった。
かつてコーディネートを担当した27人との交流も「礼状は来たけれど、それ以後は会っていない。それでも私は満足」みたいな場面を入れておいてもよかったのではないか。
特に惜しいのは、ふと見せてしまった素の顔、その写真が新聞に掲載されたというところ。予想しなかった記事の内容よりも、あの寂しい表情が自分の本当の内面だと気づいたジェーンの孤独感をズボっと拾い上げてやらなければならない。
キャサリン・ハイグル自身はキュートで健闘しているけれど、“他人の幸せに幸福を感じつつも、自分自身の幸せな瞬間も夢見ている”、そんな感情が描写不足だ。
妹テスの扱いは、さらに悪い。ジョージに惚れられるだけの存在でなくてはならないはずだが、ただのバカ女、色気もない。それに、ジェーンから男だけでなく仕事も奪うべきだった。それでこそ「彼に求められる存在、つまりお姉ちゃんになりたかった」という言葉にも納得できるというものだ。
ジョージについても、どれくらい仕事ができるのか、どれくらい魅力的な男性なのかが提示されず。
ケビンだって仕事に関しての悩みを掘り下げてあげてもよかったし、ジェーンと惹かれあう過程ももっと丁寧に描くべきだった。
こうしたキャラクターの練り込み不足が、まず結末ありきの性急な展開につながってしまっている。
価値観の衝突、幸せの隣にある寂しさ、いずれもラブコメとしては王道ともいえる設定。わかりやすく説明しながら進み、人物配置もありきたり。だからこそ「楽に観られる」映画なのだが、だからこそ「細かな部分に配慮して面白さを強化すべき映画」でもあったはずだ。
その“不足”を脚本のせいにするなら、演出は、オーソドックスながらも楽しく軽快で及第点以上。鮮やかな衣装や楽しいBGMともあいまって観やすく作られているとは思う。
たぶん、1時間×9話くらいのTVドラマで各人のキャラクターを掘り下げる方向で作ったほうが、はるかにいい作品になっただろう。
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