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2010/02/09

10人のワケあり男女

監督:カート・ヴォルカー
出演:ダグニー・カー/デヴィッド・フェナー/イザベラ・ミコ/トレント・フォード/モーリク・パンチョリー/アン・デュデック/メラニー・リンスキー/ウィリアム・ボールドウィン/チェリ・オテリ/リッキー・レイク/アンソニー・“トリーチ”・クリス/フランチェスコ・クイン

30点満点中15点=監3/話3/出3/芸3/技3

【真昼の公園、ちょっとおかしな10人の男女】
 男からひどい仕打ちを受けて自殺を思い立ったエイプリル、成り上がろうとするポーランド人女性クリスタ、彼女に思いを寄せるペット・サービスのイアン、ヌーディストのネイサンとババール、その同僚であるメレディスとシェリル、高級SUVの車内でクリスタを抱くデニス、彼を監視する妻のペギーと親友クレア……。ロスの郊外、小高い丘の上にある公園、クルマの内外で繰り広げられるのは、10人の男女のちょっとおかしな物語。
(2006年 アメリカ)

★ややネタバレを含みます★

【小さくて、不思議な仕上がり】
 何かいい脚本を書いたか、自主制作か卒業制作でソコソコのものを撮ったのか、そういう人が才能を見込まれてチャンスをもらい、でも低予算と短期間で作った、というイメージの作品。
 それだけに小さくて地味、公園の中の半径100m内で会話中心にお話は進んでいく。舞台劇か身の周り系のマンガか小説か、といった雰囲気だ。

 まぁ小さいなりに、丁寧には撮られている。
 コントラストや明度が調整された画面、退屈させないカットワーク、場面や人物に合わせた多彩なBGM、無名(知っているのはウィリアム・ボールドウィンとアン・デュデックだけだな)ながら各人物に適した配役。それらがあいまって必要以上に安っぽさや窮屈さは感じられず、テンポも軽快だ。

 それに、不思議な温かさも伝わってくる。

 自殺願望、移民、冴えない片想い、公園でのランチ、妙ちくりんな哲学、素直になれない自分、自分のことがわからない自分、ゲイである秘密、浮気に自己否定……。登場人物の配置は、たぶんロスで暮らす人たちの縮図。と同時に、人間世界が多くの問題を抱えている(極端ではあるが)ことの象徴でもあるだろう。

 そして、そんな出来損ないのヒトは、ウダウダの、できれば忘れてしまいたい時間を過ごすことになる。繰り広げられるのは“ズレたヒト”が引き起こす“ちょっとおかしな事件”ばかりだ。
 でもその“ちょっと”が各人の今後を大きく左右することもある。登場人物中、救いを用意されていないのは傲慢なデニスだけ。たとえウダウダの中にあっても(あるいはウダウダの中だからこそ)、自分を見つめ直して傷ついてぶっ壊すことで、この1時間半は、次へと進む、新しい何かを始める、そんな可能性を秘めた時間になりうるのだ。
 いわば「忘れてしまいたいウダウダ経験」を肯定するかのようなドラマ。その温かさが心地よい。

 なんてことのない、映画として“観るべき点”も感じられない作品だが、点数ほどにはつまらないわけじゃない、という不思議な仕上がりだ。

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