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2010/02/05

ラスベガスをぶっつぶせ

監督:ロバート・ルケティック
出演:ジム・スタージェス/ケイト・ボスワース/アーロン・ヨー/ライザ・ラピラ/ジェイコブ・ピッツ/ジョシュ・ギャッド/サム・ゴルザリ/ヘレン・ケアリー/ジャック・マクギー/ジャック・ギルピン/ローレンス・フィッシュバーン/ケヴィン・スペイシー

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

【目標は30万ドル。けれど……】
 成績は極めて優秀、マサチューセッツ工科大の卒業を間近に控え、いまはロボット大会への参加準備を進めるベン・キャンベル。が、夢であるハーバード医科大へ進むためには30万ドルもの大金が必要だ。そんな折、彼は数学教授ミッキーに誘われる。カウンティングを駆使してブラックジャックで荒稼ぎする“チーム”に加われというのだ。ラスベガスへと飛ぶベンだったが、そこにはミッキーに恨みを持つ保安担当者コールが待ち受けていた。
(2008年 アメリカ)

【まとまりのいいエンターテインメント】
 自慢じゃないがギャンブルは下手。マンションの頭金は馬券で稼いだけれどトータルではその何倍も……何十倍もスっている。totoだってもう何年も当たりナシ。儲けている人にやっかみを感じるほどだ。
 もっと弱いのが数学、っていうか数字。足し算すらままならない。確率論なんか滔々と述べ立てられてもサッパリ。記憶力も悪いので出てきたカードをカウンティングするなんて無理である。

 という人間にも楽しく観られるよう、しっかりと作られた映画。
 同じくカードゲームを扱った『ラッキー・ユー』も“格”のある映画だったが、あちらは「もう少し冒険もして欲しかった」と感じさせたのに対し、こちらは撮りかたにも工夫を凝らし、ともすれば地味になってしまう題材/ストーリーを、小さくまとめすぎることなくエンターテインメントとして仕上げてある。

 美麗なCGによるオープニングに始まり、自転車に乗るベンの姿を大胆に捉えたショット、何でもないカットでも大きく動いてスリルとスピードと楽しさを作り出すカメラ、微速度撮影に合成に、と、実にゴージャス。
 自然光を生かした臨場感の創出もよく、サントラも若者にウケる楽曲で固めて映画のリズム/テンポを上げる。
 監督のロバート・ルケティックは軽めのラブコメで腕を揮ってきた人のようだが、このまんまスタイリッシュ・アクション巨編を撮れそうなくらいメジャー感あふれる作りだ。

 役者も上質。素直に“崩れる若者”を好演するジム・スタージェスをはじめチームメンバーは各キャラクターにハマっているし、ケイト・ボスワースの可愛さにも目を奪われて、観る者を作品世界に引き込む。
 そこへケヴィン・スペイシーとローレンス・フィッシュバーンが存在感たっぷりに加わって、でも「あくまでも主役は若者たちだから」という奥ゆかしさも感じさせて、作品全体に格と重みを与えている。

 ストーリー/シナリオのまとまりもいい。
 まずは前述の通り、ブラックジャックに馴染みがなくとも理解でき、楽しめるよう構成されている点が良心的だ。
 ブラックジャックとカウンティングを題材としながら、恋、衝突、友情、裏切り、逆転とさまざまな要素を散らして、ミステリー要素のあるスリリングなストーリーと、「何にでもなれる=何かになろうとしなかった」ベンの青春物語を上手に融合。その手際がよく、(やや出来すぎにも感じるが)展開の面白さにも収まりのよさにも秀でている。
 邦題でかなり損をしており、ブラックジャックとベンの年齢のダブル・ミーニングである原題『21』にふさわしい仕上がりといえるだろう。

 ミッキーの“汚さ”がやや唐突に思えること、ジルがベンに惹かれる経緯の省略、クライマックス=逃走の際におこなわれたことの描写がちょっとクドイこと、以上3つは少々残念だが、それ以外は全体に満足できる完成度の映画だと思う。

 で、ブラックジャックで勝てるか、カウンティングは可能かということに関して。
 カウンティング(と、それにともなう確率計算)が難しいことも、けれどその技術を駆使すれば勝率を大幅に上げられることも、さすがにわかる。なんでもカウンティング&戦略に関する「データ集やシミュレーションソフト等は、専門ショップ等で購入することができる」(wikipedia)らしく、数学的見地からの必勝法研究もかなり進んでいるようだ。
 この「必勝法の研究」というのがミソで、実はギャンブラーにとっては、儲けることよりも「勝つための方法論を見つけ出す」ことのほうがはるかに大きな魅力。それができる可能性を漂わせている点で、ブラックジャックは吸引力のあるギャンブルといえるだろう。

 いっぽうカジノ側でも、本作に登場した生体認証のほか、カードカウンティングを見破るシステム/技術の導入に取り組んでいるのだとか。そうした思惑のさらに上を行く方法論を見つけるべく、さらにギャンブラーたちはやっきになることだろう。

 が、何らかのチートを仕掛けない限り、しょせんは確率論。発生率1パーセントしかないはずの出来事が原因で負けることだってありうる。
 結局ゲームでも人生でも、勝ち負けって、本作で述べられている変数変換のように「変化する状況に応じて立場を変える」という臨機応変さに左右されるものなのかも知れない。

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