アイズ
監督:ダヴィド・モロー/ザヴィエ・パリュ
出演:ジェシカ・アルバ/アレッサンドロ・ニヴォラ/パーカー・ポージー/レイド・セルベジア/フェルナンダ・ロメロ/レイチェル・ティコティン/オッバ・ババトゥンデ/ダニー・モラ/クロエ・モレッツ/ブレット・A・ハワース
30点満点中17点=監4/話3/出3/芸3/技4
【いま見えているものは、なに?】
角膜移植手術を受け、15年ぶりに戻った視力に喜ぶバイオリニストのシドニー。と同時に彼女は“見えないはずのもの”が見えるようになり、戸惑い苦しむ。変化する部屋、廊下ですすり泣く少年、火事、閉じ込められた少女、106という数字、死んだはずの人々、黒い影……。「ドナーの記憶が角膜に宿っているのではないか?」と考えるシドニーだったが、カウンセラーのポール・フォークナー医師は信用せず、彼女をたしなめるのだった。
(2008年 アメリカ)
【オリジナルそのままに】
ジェシカ・アルバって可愛いよなぁ。儚さと透明感と不思議さと知性には欠けるけれど、愛くるしさと南国風味の色気がほどほどにあって、ちょっと筋肉が堅めな感じ。
いわゆるハリウッド美女のような“整いかた”や“アク”はなくて、唇も厚め。けれど、その野暮ったさが逆にラブリー。メキシコ、フランス、デンマークの血が入っているらしく、その無国籍感も魅力なのかも知れん。さらに今回は、傷だらけの目もと、スッピン、しかめる顔なんかも披露してくれるので眼福なり。まぁバイオリニストには見えないけど。
で、肝心の内容/作りの話。
オキサイド&ダニー・パンの出世作『the EYE』のハリウッド・リメイク版。オリジナル版の感想は「音や編集など各パーツのデキは上々。一気にエンディングまで見せ切るテンポのよさもあるが、それが薄さにもつながっている。ロー先生(今回でいえばポール)がマン(シドニー)を助けたいと感じるようになる印象的なキッカケが必要だっただろうし、タイ(メキシコ)へ行く前に誰かひとり、偶然でもいいから霊を成仏させておくべきだった」。
え~っと、今回もほぼそのまんまなんですけれど。
大まかな展開はもちろん、「世界は美しい」といったセリフなど律儀なまでにオリジナルを尊重(いくつかのエピソードは割愛されて、まとまりやスマートさは向上しているが)し、大きく踏み外さない。
病院の雰囲気、不協和音で盛り上げるスリル、暗さ+薄ボンヤリ見えるという恐怖の創出、アパートの外からシドニーを捉えることで表現される彼女の不安など、撮りかたも至極真っ当。オカルトのセオリーから外れない。
交通事故で死んだ女性を目撃してしまうシーンやクライマックスなどに漂う緊迫感も優れているし、多彩なアングルや青暗い画面、シャープな編集などによって“格”も生まれている。
グラスに指を入れて注がれる飲み物、ネイティヴじゃない指揮者、こぼれた砂糖に残る謎の手形、点字で書かれた譜面……といったディテールにもこだわって、全体に澱みなく進んでいく。
だが反面、その真っ当なストーリー・テリングの中に「ここっ!」「これっ!」という強烈なインパクトが感じられないのも事実。前述の通り「ポールがシドニーを助けたいと感じるようになる印象的なキッカケ」も用意されていないし(抱きつかれるだけじゃ、ねぇ)、メキシコへ行く前に誰かひとり霊を成仏させて「未練からの解放」も示しておきたかったところ。
オリジナルと比べて「哀しさの物語」という雰囲気が薄れてしまったのもマイナスだろう。
あとはアレッサンドロ・ニヴォラ。描きかたやキャラクター設定の悪さのせいもあるが、正直、心理療法士に見えないし、魅力的でもない。せっかくのジェシカの輝きを消してしまっている。
トータルとしては、決して悪くはないし、思ったよりもしっかり撮られているんだけれど“何か”が足りないという、まさにオリジナルそのままの仕上がり。「ジェシカ・アルバが観たいならこっち、でなければオリジナル。どちらか1つでOK」といったところだろう。
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