ベガスの恋に勝つルール
監督:トム・ヴォーン
出演:キャメロン・ディアス/アシュトン・カッチャー/ロブ・コードリー/レイク・ベル/ジェイソン・サダイキス/トリート・ウィリアムズ/ディードル・オコンネル/ミシェル・クルージク/デニス・ファリナ/ザック・ガリフィアナキス/クリステン・リッター/キャロライン・ウィルマン/クイーン・ラティファ/デニス・ミラー
30点満点中17点=監3/話4/出4/芸4/技3
【300万ドルを争う駆け引きの果てに】
計画魔の性格が災いして婚約者に捨てられた女性トレーダーのジョイは、友人ティッパーとともに傷心のベガス旅行へ。社長である父親からクビを言い渡されたダメな男ジャックも、憂さ晴らしに友人ヘイターとベガスへやって来る。ひょんなことから出会ったジョイとジャックは酔った勢いで結婚、でも翌朝には後悔して別れることを決める。が「ジョイのお金でジャックがレバーを引いたスロットマシン」が300万ドルの大当たりとなり……。
(2008年 アメリカ)
【ベタだけれど意外と美味しい】
ベッタベタなラブコメ、といってしまっていいだろう。性格の合わない男女とその友人たち、親、上司、元カレといったキャラクター配置、予定調和的な展開から「まぁそうなるわな」のラストまで、若いカップル向けのおバカなデート・ムービーの域を出ない骨格である。
が、その範囲内でなかなかスマートな見せかたと話のまとめかたを示してくれる。
主役ふたりを引き合わせ、人生の蹉跌の反作用と酒とで浮かれさせ、結婚させて喧嘩させ、そして大問題を発生させる、序盤の速い展開が楽しい。
ラブコメの重要な構成要素である「ないだろうけれど、あってもおかしくない設定」へと、問答無用、ゴチャゴチャした細かな説明抜きに引きずり込むテンポのよさがいい。ああ、アメリカにベガスがある幸せ。
ディテールもまずまず。確かに男女の始まりって偶然とか「一杯だけ」からだろう。その関係が悪化していく原因も、お決まりの“便座問題”など些細な「イラっ」であるはず。その中に時おり漂う「何やってんだか」という虚脱感と、それを吹き飛ばすニギヤカなサントラ。
主演ふたりも、意外と説得力あり。アラフォーとは思えないキャメロンの可愛らしさ(先日のアカデミー賞授賞式では、えらいフケて見えたが)と、いざドレッシーになった際の色香。
ダメ男ぶり炸裂のコメディ演技とフォーマルな男前っぷりを両立させてみせるアシュトン。
このカップルだから「ありえない設定の中で、いつしか惹かれていく」という展開にも納得できるというものだ。
この年のラジー賞でワースト・アクトレスとワースト・カップルにノミネートされたらしい(ちなみに『アイズ』のジェシカ・アルバもノミネート。晴れて受賞したのはパリス・ヒルトン)けれど、なぁんだ、要するに観ている側のジェラシーじゃんと思わせるほど、キュートなふたりである。
おバカムービーである事実は動かしようがないのだけれど、楽しぃく気楽に「そういえば最近、WiiとかSUMSUNGってハリウッド映画でよく見るよね」とか「キャメロンの回し蹴りって『チャーリーズ・エンジェル』の賜物だよな」なんて考えながら、フフフンっと観ていられる。
いわば、意外と美味しいミートソース・スパ。特別なことも新しいことも何もしていないし高級でもないんだけれど、ちゃんと作ってあるし店員の愛想もいいから、楽しく食べられる、みたいな。
まぁ、ジョイが「他人に認められるために自分を偽って、そのせいで失敗する」という場面や、ジャックがモラトリアムに甘えている様子はもっとしっかり盛り込むべきだったろうし、ふたりがたがいの魅力に目覚めていく過程ももう少し時間をかけて描くべきだったろう。サミーを挟んだ擬似家族のシーンなんか、もうちょっと印象的に作れたはず。ひょっとすると全10話のトレンディ・ドラマのほうが作りやすい題材だったかも知れない。
でも、そうした不満をサラリと流したくなる、軽快な笑いに満ちた1本である。
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