彼が二度愛したS
監督:マーセル・ランゲネッガー
出演:ユアン・マクレガー/ミシェル・ウィリアムズ/ナターシャ・ヘンストリッジ/リサ・ゲイ・ハミルトン/マギー・Q/ポール・スパークス/フランク・ジラルデュー/シャーロット・ランプリング/ヒュー・ジャックマン
30点満点中16点=監4/話2/出3/芸3/技4
【ある出会いから始まるサスペンス】
クライアントのもとでひたすら帳簿を睨むだけの仕事。会計士のジョナサン・マコーリーは孤独で退屈な日々を過ごしていたが、弁護士事務所で出会ったワイアット・ボーズに誘われ、さまざまな遊ぶを経験するようになる。さらにワイアットと携帯電話を取り違えたことから、ある秘密クラブの存在を知ったジョナサン。そこで、ずっと気になっていた“名前がSで始まる”女性と再会した彼の身に、恐ろしい計略が忍び寄ろうとしていた。
(2008年 アメリカ)
【見せかたの上手さはあるけれど】
この秘密クラブ、男なら誰でも興味をそそられそうな設定。それだけに、ジョナサンが没入していくのと同様、見る側も成り行きにノメリ込んでいくことになる。
恐らく、シナリオは(枚数的に)相当薄いはず。それをスリリングかつダークに、間延びなく見せていく腕を感じる。ランゲネッガー監督はこれが第1作目とのことだが、なかなか素晴らしい“作り”だ。
特に背徳感たっぷりの撮りかたが上質。全体にアンダー気味で、ワイアットや秘密クラブ、そこに参加している人たちの“影ある背景”を上手に視覚化している。低くリズムが刻まれるサントラも雰囲気を盛り上げ、音のオン/オフで場面にテンポや緊迫感を与える手際も冴えている。
撮影は『インサイダー』や『X-MEN:ファイナルディシジョン』のダンテ・スピノッティ、音楽は『プリズン・ブレイク』のほか『リクルート』や『バットマン ビギンズ』、『アイランド』などにも参加しているラミン・ジャヴァディ。
ただ、トータルの内容、あるいは事件のカラクリは、ありがちで驚くほどのものではない。おまけにクライマックスはかなり強引、Sがああいう行動に出た動機も曖昧なままだし、エンディングにつながる“情”のようなものも足りない。
脚本は『ダイ・ハード4.0』のマーク・ボンバック。あちらはギッシリ感もあってよくできたハチャメチャ・アクションだったけれど、今回はちょっと薄すぎる。
主演のふたり、ユアン・マクレガーとヒュー・ジャックマンはそれなりに役どころをまっとうしていたものの、特にプラスアルファはなく、ミシェル・ウィリアムズは可愛かったけれど、Sというキャラクターの描きこみ不足ゆえ損をしてしまっている印象だ。
原題『Deception』は「偽装」の意。ならば、もうひとつふたつ「本当はこうだったんだよ」という驚きを与えて欲しかったところ。見せかたの上手さはあるのだけれど、土台となる物語がいま一歩、という作品である。
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