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2010/05/12

シャッター アイランド

監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ/マーク・ラファロ/ベン・キングズレー/マックス・フォン・シドー/ミシェル・ウィリアムズ/エミリー・モーティマー/パトリシア・クラークソン/ジャッキー・アール・ヘイリー/ジョン・キャロル・リンチ/テッド・レヴィン/イライアス・コティーズ/ロビン・バートレット/クリストファー・デナム/カーティス・クック/ルビー・ジェリンス
吹き替え:加瀬康之/志村知幸/有本欽隆/坂口芳貞/宮島依里/高橋理恵子/一柳みる/青山穣/石住昭彦

30点満点中17点=監4/話2/出4/芸4/技3

【彼は、その島から出ることができるのか?】
 ボストン港沖合いのシャッター・アイランドに建てられたアッシュクリフ病院は、精神を病んだ犯罪者を収容する施設だ。1954年、病院から女性患者レイチェルが忽然と姿を消し、捜査のため連邦保安官テディと相棒のチャックがやって来る。だがテディには、この島を訪れるもう1つの目的があった。何かを隠しているらしいコーリー院長、「4の法則」と書かれた謎のメモ、テディの忌まわしい過去……。果たして事件の真相は?
(2010年 アメリカ)

★ある意味でネタバレを含みます★

【オチは弱いが仕上がりはマズマズ】
 ふだんは字幕派なのだが、モノは試しと「超日本語吹替版」にて鑑賞。翻訳があの人であることに加え、安っぽい声や芝居だと作品全体のイメージが崩れちゃうんじゃないかなぁ、という不安は抱いたものの、十分に納得できるデキ。ちゃんとお芝居のできる人が吹き替えを担当していて、役者と声質の違和感もなし。高橋理恵子さんの声なんか、モロに好みだし。
 むしろ「警備副隊長マクフィアソン」とか、いちいち入る字幕が野暮。なんか、こうやって役名を出さないとアンタらわかんないでしょ、と馬鹿にされているみたいだ。

 ただ、超日本語吹替版が謳っている「唇の動きと日本語のセリフとを合わせる」とか「より自然な日本語に近づける」とかは、そもそも当然のように考慮すべきことであるはず(個人的には「いかにも翻訳」という堅苦しい言葉遣いも好きだったりするが)。
 また「字幕を読まなくてすみ、おかげで画面に集中できる」というありがたみは、今回さほど感じられなかった。
 だって、画面を凝視して謎を解くような映画じゃないし。

 いや、確かにミステリーであり、ある意味“ダマシ系”に含まれる作品ではある。なるほど画面のあちらこちらに伏線・ヒントが散りばめられているし、宣伝文句の「全ての“謎”が解けるまで、この島を出る事はできない」もウソではない。
 が、真相(オチ)はといえば「まさかとは思ったけれど、いまどきソレですか?」という内容。なんか、展開とか馬場とかさんざん考えても穴馬が見つからず、結局1番人気が逃げ切っちゃった、みたいな。いや実際、「テディって、やたら左手をポケットに突っ込んでいるよな」とか、どうでもいいことばかり気になっちゃった(まぁそこにはミス・ディレクションの意図があるのかも知れないけれど)。
 その「いまさらながらのアイディア」以上に、真相をセリフでベラベラっと説明しちゃう安っぽさも気に入らない。

 とはいえ、辻褄はちゃんとあっているし、弱いオチながら「なるほどね」と感じさせ、余韻も残す“まとめ”にはなっている。
 でも思うに、これって本来は悲しい物語であるはず。ならば奇をてらわずハナっから病院側からの目線で描いたほうがよかったのではないか。そうすれば観客にはテディの想いを読む楽しみが与えられるし、ラストで彼が示す“選択”の哀しさもより引き立つだろう。
 犯人とか謎とかヒントとか思い込みとか、ミステリー風味を強めた作りかた、オモワセブリックなアオリ文句に頼る売りかたが間違っていた、という気がする。

 もちろん、さすがはスコセッシ、与えられたフィールド/シナリオの範囲内で上々の仕上がりへと持っていく。
 しきりに俯瞰を用い、テディを“観察”する目線を保ったのは、理にかなった作り。『救命士』『アビエイター』でもスコセッシと組み、『グッド・シェパード』ではデ・ニーロを助けたロバート・リチャードソンの撮影もシャープで、嵐の後の湿り気を帯びた空気をきっちりと写し取る。
 プロダクションデザインのダンテ・フェレッティの仕事は、『スウィーニー・トッド』に続きここでも良質、島とアッシュクリフ病院の内外をミステリアスに作り出す。クラシックから現代音楽まで多彩に散りばめられたサウンドトラックも申し分ない。

 気になったのは、どうも音が“浅く”感じたこと。劇場が悪いのか吹替版のせいなのか、もともとこういうレベルなのか、「ぶぅおん」と包み込むようなサラウンド感と低域のボリュームに欠ける。
 またカットのつながりもぞんざい、切り返したときの手の位置が違っていたり、コンマ何秒かスっ飛ばされているような雰囲気も。おかげで「テディは同じ場面を何回も経験しているのではないか?」なんて深読みしてしまった(深読みじゃない可能性もある)。

 キャストはみんな頑張っている。ディカプリオの熱演は意外と気持ちいいし、マーク・ラファロもベン・キングズレーもマックス・フォン・シドーもパトリシア・クラークソンもジョン・キャロル・リンチも、それぞれの役にふさわしいハマり具合。ミシェル・ウィリアムズの陰のある可愛らしさや、エミリー・モーティマーの美しさも嬉しい。

 その役者たちの“ナマ”を感じるためにも、やっぱ映画は字幕で観たいなぁと思う次第。少なくとも、デジタル3D上映のように「画面に集中する意味のある映画」でこそ、吹き替えは生きるんじゃないかと感じた。

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