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2010/06/01

ベティの小さな秘密

監督:ジャン=ピエール・アメリス
出演:アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ/ステファーヌ・フレス/マリア・デ・メディロス/ヨランド・モロー/ベンジャミン・ラモン/ロリアーヌ・シール/オリヴィエ・クリュヴェイエ/ヴィルジル・ルクレール/ダニエル・ズニック/ジャン=ポール・ルーヴレ/パトリック・ピエロン

30点満点中17点=監3/話4/出4/芸3/技3

【彼女の名はエリザベス】
 フランスの田舎町に暮らす10歳の“ベティ”ことエリザベス。家に隣接する聖リュシエ精神病院の院長である父親は患者の脱走と家族関係に悩み、姉のアニエスは寄宿学校へ行ってしまい、元ピアニストの母は町で「新しい関係」を見つけたらしい……。父の患者で家政婦を務めるローズ、納屋に匿った脱走患者のイヴォン、顔にアザのある転校生カンタン、週末には殺されてしまう犬のナッツらに囲まれた、ベティの日々が綴られる。
(2006年 フランス)

【やがて少女は、人となる】
 カメラは徹底してベティの直近で回され、ベティが見たり聴いたり感じ取ったりできる範囲のみを捉え続ける。ここまで視点のブレがない作りの映画というのも、意外と珍しいんじゃないだろうか。

 そこに広がるのは“ちょっと奇異なもの”に満ちた世界。
 ひとりでにドアが開く幽霊屋敷、言葉を発しない家政婦、水に浮かんで動かないカエル、人形の目から這い出るクモ、太陽も地球もいつか死んでしまうという衝撃の事実、夫婦喧嘩、アザのある転校生、魔女の呪い、闇や雷鳴に覆われた夜、そして裏切り……。
 10歳の少女を静かに苛むものが、これでもかと散りばめられる。人口的な音=BGMをなるべく排し、その場で聴こえる音、その場の空気感をすくい取ることで、さらに“ちょっと嫌な感じ”は増していく。

 そうしたものや人に囲まれて、静かに、頭の中で考えを反芻しながら生きているベティ役の、アルバちゃんが上手い
 たとえばダコタ・ファニングのスター性、テイタム・オニールの神がかった存在感、ジョデル・フェルランドのヤバさ・イタさ、エミリー・ブラウニングのアイロニカルな美しさ、アヤカ・ウィルソンの卑怯なまでの可愛らしさ、カティンカ・ウンタルーのノーブルさといった強烈な武器はないのだけれど、だからこそ逆に「普通に可愛い、普通の女の子だけが持つ、人生という『普通』に立ち向かっていくパワー」が際立つ。まだ何者でもないベティという役柄をしっかりと演じている。

 彼女が考え続けるのは「生と死について」だ。
 死は、ベティのすぐ近くにあって手招きする。そんなものにウンザリしながら生きるくらいなら、いっそ死と一体となったほうが楽かも知れない。
 けれど彼女は気づく。生は、もっと近くにあるということに。そして、奇異で身勝手で自分を苛むものたちを“どうにかする”ためには、自分自身が世界の中心になること、ベティではなくエリザベスという一個の人間として自立することが必要だと理解する。

 オトナにとってはどうということのないコト・モノの中で、子どもが「ひとりの人」になっていく過程を静かに描いた、小さな映画である。

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