« ベティの小さな秘密 | トップページ | ラースと、その彼女 »

2010/06/03

守護神

監督:アンドリュー・デイヴィス
出演:ケヴィン・コスナー/アシュトン・カッチャー/セーラ・ウォード/メリッサ・サージミラー/クランシー・ブラウン/ニール・マクドノー/ジョン・ハード/ブライアン・ジェラティ/ボニー・ブラムレット/オマリ・ハードウィック/アレックス・ダニエルズ

30点満点中17点=監3/話4/出3/芸3/技4

【救難士の物語】
 数多くの人命を救い、すでに伝説となっている沿岸警備隊のベン・ランドール上級曹長。だが家庭を顧みず現場にこだわるあまり妻ヘレンは彼のもとを去り、仲間を事故で失い、心に大きな傷を負う。上司から命令されたランドールは、救難士訓練施設の教官を1期・18週間だけ務めることになる。そこで出会った訓練生のひとりは高校の水泳チャンピオン、ジェイク・フィッシャー。彼もまた過去に、拭い去れない哀しい記憶を抱えていた。
(2006年 アメリカ)

★ややネタバレを含みます★

【プロであることの難しさ】
 トラウマを抱えた主人公、妻は医師、生意気で優秀だけれど暗い過去を持つ若者、その恋人は小学校の先生、ちょっと弱気な訓練生、頼れる上司、といったキャラクター配置があり、救難士を取り巻く環境、過酷な訓練と成長に恋も絡めて、物語の土台が完成。
 そのわかりやすい構図を、あまり深みにハマらないよう、手堅くテンポよく、ハラハラと笑いと涙とをバランスよく散らし、この監督ならではのスローモーションを織り交ぜながら描いていく。
 かなりオーソドックス、いかにもハリウッド的な作りといえる。

 つまり、エンターテインメント色がやや勝っていて(それだけに退屈せず観られる)、心の奥底に迫るような作品ではない。それでも、ランドールがフィッシャーらに伝えようとしたことは、わかる。
 それは覚悟、あるいは純粋な使命感。ただただ「助けたい」という想いがあり、そのために必要な体力、精神力、知識、判断力を身につけ、たとえ非情・冷酷に感じられる行動だとしても、目的へ向けて正しい道を歩むのだというプロフェッショナリズムの大切さだ。

 もちろん、終始一貫して揺るぎないプロであることは極めて困難だ。救難士といえど人、悩み苦しむ生き物である。「それを乗り越えて必要なことを実行できるか」が問われるという、さらなる苦しみを味わうことになる。
 このあたりの処理(ランドールの悪夢や妻との別れ話、フィッシャーの過去)にはまさしくハリウッド流の“浅さ・軽さ”というか、「とりあえず要素としては入れておきました」という雰囲気しかないのだが、まとめかたとしてはクドすぎずに上々。ケヴィン・コスナーもアシュトン・カッチャーも与えられた役柄をしっかりとまっとうしている。

 それに、なまじ御都合主義に走らず、登場人物がスーパーマンになることもなく、こういうエンディングを迎えたことは正解だったと思う。
 もう助けられない者をあっさりと切り捨て、少しでも助かる人数/確率を高めるためには犠牲をも厭わない。それでこそ「救難士の何たるか」を語る映画である。
 加えて「実際にはこれまで何人助けたんですか?」と訊ねるフィッシャーに対するランドールの「22人だ」という答えは、絶対に入れるべき内容であり、かつ妥当なやりとりだろう。
 つまりはやはり、プロであり続けることの厳しさ、あるいはプロであり続けた結果としての現実が、根底にきっちりと感じられるのだ。

 あとは、荒れ狂う海、沈みゆく船など海難現場の描写が見事。こういう部分のリアリティに力を入れることこそ、作品内で語られることの説得力を高めるための唯一無二の方策である。

 期待以上の重みはないものの、手堅く作られた、そこそこ面白く、そこそこ考えさせる1本だろう。

|

« ベティの小さな秘密 | トップページ | ラースと、その彼女 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 守護神:

« ベティの小さな秘密 | トップページ | ラースと、その彼女 »