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2010/07/20

アポロ13

監督:ロン・ハワード
出演:トム・ハンクス/ビル・パクストン/ケヴィン・ベーコン/ゲイリー・シニーズ/エド・ハリス/キャスリーン・クインラン/メアリー・ケイト・シェルハート/エミリー・アン・ロイド/ミコ・ヒューズ/マックス・エリオット・スレイド/ジーン・スピーグル・ハワード/トレイシー・ライナー/デヴィッド・アンドリュース/ミシェル・リトル/クリス・エリス/ジョー・スパーノ/ザンダー・バークレイ/マーク・マクルーア/ベン・マーレイ/クリント・ハワード/ローレン・ディーン/トム・ウッド/グーギー・グレス/パトリック・ミックラー/レイ・マッキノン/マックス・グロデンチック/クリスチャン・クレメンソン

30点満点中21点=監5/話4/出4/芸4/技4

【彼らは無事に生還できるのか】
 1969年、アポロ11号が月面着陸を果たす。その様子を羨ましく見守っていたベテラン宇宙飛行士ジム・ラヴェルとそのチームだったが、急遽アポロ13号で次の月面着陸を担当することになり意気あがる。メンバーの変更など不安を抱えつつも、世間の関心が薄まる中で迎えた打上げは無事に成功したが、月へ向かう軌道上でトラブルが発生、アポロ13号は電力を失っていく……。果たして3人の飛行士は地球に生還することができるのか?
(1995年 アメリカ)

【称えよ、人類の意志の力を】
 作中、月への有人飛行は「もっとも偉大なる計画」と紹介される。かの有名な「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」という言葉も登場し、発言の主・アームストロングはコロンブスやリンドバーグといった開拓者・挑戦者と並び賞される。

 だが、アポロ計画におけるヒーローはアームストロングだけではない。この計画は単に“人間を月に送った”ものでもない。
 好奇心、科学技術、危機への対応能力や問題解決能力、なによりもひとつのことをやり遂げようという強い心、すなわち“人類の意志の力”を立証するためのものだったといえるはずだ。だから13という不吉な数字にもひるまず、それを「12の次」とやり過ごすのだ。

 たった3人を打ち上げるために積み重ねられた努力と創意工夫は、想像を絶するものだったろう。計画全体を統べる者、現場で管制にあたる者、ロケットや司令船に使われる部品ひとつひとつの設計者や作成者、床を掃除する者、発射時に見学者を整理する者……。何十万もの人間が、それぞれの深い想いとともにこの計画に関わっている(ああ、小山宙哉の『宇宙兄弟』でも同じことをいってるのが、ちょっと嬉しいなぁ)。
 そこには小さなミスが紛れ込む余地もあるわけだが、たとえミスがあったとしても、そのミスを挽回するための仕事がまた“人類の意志の力”の立証となり、人類にとって栄光のときとなる。

 指で隠れるほど遠くてちっぽけな場所を目指して飛び、同じく指で隠れるほど遠くてちっぽけな場所へ還ろうと、多くの人が働く。13号の乗組員たちが助かったのは、決して幸運ゆえではない。
「何のために作られたかより、何の役に立つかだ」と言い放つ、エド・ハリス演じる主任管制官ジーン・クランツの姿が実に頼もしい。四角いフィルターと丸いフィルターをつなぎ合わせようと知恵を絞る職員たちの奮闘に鳥肌が立つ。ドクターをにらみつけながらも自分ができることをまっとうするケン・マッティングレイ=ゲイリー・シニーズがカッコイイ。盛んに交わされる「Copy That」という返答に痺れる。

 もしアポロ計画陰謀説などを唱える者がいるなら、自覚すればいい。その主張は、寝る間を惜しみ、命も賭して“人類の意志の力”を立証しようとした人々の心を踏みにじるものだと。人類すべてを侮辱するものだと。

 だからこの映画も「ウソはつかない」ことを第一義に考えて作られているように感じる。司令船や着陸機の内外、シミュレーター、ハッチを構成する細かなパーツ、コントルール・ルーム、そこで見られるモニター画面と働く人々、月面、さまざまな手順、当時のファッションや音楽までを精巧に再現し、打上げシーンや宇宙空間もCGで緻密に描く。
 代替要員に選ばれたスワイガートは喜んで叫び、コントルール・ルームの担当者たちは冷静に事態の打開を検討し、すべてが終わった後のジーン・クランツはホっとして涙を拭う。そんな心の動きも余さずうつす。

 と同時に、下手な説明を省き、それでいて技術面や手順の詳細までわからなくても理解できるという作りになっている点が見事。司令船/着陸機の狭い空間へとカメラは潜り込み、人々の様子を俯瞰から寄りまで多彩な画面で追って、飛行士、コントルール・ルーム、家族など、各立場の人と観る者とが感情を共有できるように上手く仕上げられている。

 クライマックスでは、ジェームズ・ホーナーの音楽であからさまに盛り上げる演出ともあいまって、わかっていても、何度観ても泣けてくる。
 その涙は、私自身が“人類の意志の力”を信じているから、そしてこの映画が意志の力をもって作られたものだと実感できるから流れるものである。

 アポロ計画は予算の削減で1972年に終了したが、その後も人類は宇宙を目指し続けている。スペース・シャトルが飛び、国際宇宙ステーションには日本人が長期滞在するようになり、NASAではふたたび月へ、さらには火星探査を目指す「コンステレーション計画」が進められている。
 人類が意志の力を手放すことは決してないし、未知を目指す歩みをやめることもない。

「現在ほとんど使われていないモールス信号の訓練に、これだけの予算を割く必要はありますか?」
「いや、それがないと宇宙人が攻めてきたときにアメリカと連携できないんです。絶対に必要なんです」
 っていうのは『インディペンデンス・デイ』と事業仕分けを観ながら考えたジョーク(現実にGXロケットの開発計画が廃止勧告を受けていて笑えないんだけれど)。でも、そういうことなんだ。ちっちゃな積み重ねが、ひとつの偉大な計画を成功へと導くのだ。

 ケネディはアポロ計画を進める意義と理由について、こう述べている。
「容易ではなく困難であるからであり、この目標がわれわれのエネルギーや技術を組織し評価するのに有用だからだ。またわれわれはその挑戦を後回しせずに受けて立つことを望み、これに勝利する意志があるからだ」
(Wikipediaより)

 まさに“人類の意志の力”を、政治家も私たちも信じて、未来に夢を託したいものである。

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