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2010/07/22

ザ・ムーン

監督:デヴィッド・シントン
出演:バズ・オルドリン/アラン・ビーン/ユージーン・サーナン/マイケル・コリンズ/チャールズ・デューク/ジム・ラヴェル/エドガー・D・ミッチェル/ハリソン・シュミット/デイヴ・スコット/ジョン・ヤング

30点満点中17点=監4/話3/出4/芸3/技3

【月に降り立った12人の男たち】
 1960年代から70年代の初めにかけて、アメリカで進められた有人月着陸計画。が、その時に月面を踏んだ12人の宇宙飛行士を最後として、いまだわれわれは月へ人類を送り込んでいない……。ニール・アームストロングとともにアポロ11号に搭乗したバズ・オルドリンやマイケル・コリンズをはじめ、実際に月へと飛んだ宇宙飛行士たちへのインタビューと、貴重かつ膨大なアーカイブ・フィルムとで構成されるドキュメンタリー。
(2007年 イギリス/アメリカ)

【夢の結実】
 アポロ計画の裏側や技術的側面に関して、真新しい発見・情報が詰め込まれているわけではない。そのあたりについては、むしろ期待はずれとすらいえるかも知れない。
 が、宇宙飛行士たち自身の言葉で構成したことによって、不思議な味わいや独特の感傷・感動が生まれ、「人に寄り添った内容」となっている。

 ベトナム戦争、ガガーリンによる有人宇宙飛行、ベルリンの分断、キューバ危機、ケネディとキング牧師の暗殺、ソ連のチェコ侵攻……。暗い事件の数々と東西対立の中で、なるほど「人類を月に」という“明るさ”が求められたのは確かだろう。
 でもそれは、国威の発揚とか威信とか、そうした政治的思惑よりももっとプリミティブな意味を持つ“明るさ”だと本作は語る。

 すなわち、夢、憧れ、原体験のコーフン。空を飛びたい、宇宙へ出てみたい、月に降り立ってみたい。そうした“ワクワク”が宇宙飛行士という存在を作り、有人月着陸計画を推していった。
 ということを、当の宇宙飛行士自身の言葉で聞けることが楽しい。

 また「われわれ」という言葉も印象的だ。
 宇宙飛行士や技術者たちだけではない、アメリカでもない。「われわれ」人類がそれをやり遂げたのだという喜びとメッセージ。当時世界を覆ったというその“明るさ”が、Homo sapiens(ホモサピエンス=知恵のある人)としての、あるいはHomo somnium(ホモソムニウム=夢見る人)としての「われわれ」の希望と未来を、ふたたび照らしてくれるような思いだ。

 月着陸捏造論について、宇宙飛行士たちが笑いながら反論するエンディングも面白い。
「私が月面に残した足跡は誰にも消せないよ」
 その足跡もまた、ひとりの宇宙飛行士のものではなく「われわれ」が刻んだ一歩であるはずだ。

 最後に。本作でライト兄弟の名前が出てきた際に「えっ?」と感じたのだが、調べてみたら、兄のウィルバーが生まれたのは1867年、私のキッカリ100年前。兄弟が世界初の有人動力飛行に成功したのは1903年で、意外と“最近”であることに驚いた。
 たかが100年~140年ほどで、科学技術はなんとも劇的な発展を遂げたものだ。

 そして「われわれ」は、その歩みを止めてはならないと思う。本作もまた同じ意志を持って作られていることは明らかだろう。

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