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2010/07/26

トロピック・サンダー/史上最低の作戦

監督:ベン・スティラー
出演:ベン・スティラー/ジャック・ブラック/ロバート・ダウニー・Jr/ブランドン・T・ジャクソン/ジェイ・バルチェル/ダニー・マクブライド/ニック・ノルティ/スティーヴ・クーガン/ビル・ヘイダー/ブランドン・スー・フー/レジー・リー/ジョン・ヴォイト/ジェニファー・ラヴ・ヒューイット/ジェイソン・ベイトマン/ランス・ベース/アリシア・シルヴァーストーン/トビー・マグワイア/マシュー・マコノヒー/トム・クルーズ

30点満点中17点=監4/話2/出4/芸3/技4

【これは映画? それとも戦争?】
 ベトナム戦争の惨状を描く『トロピック・サンダー』、兵士を演じるのは落ち目のアクション俳優タグ・スピードマン、お下劣でヤク中のジェフ・ポートノイ、オスカー5度受賞のカーク・ラザラス、ヒップホップの新星アルパ・チーノ、新人俳優ケヴィン・サンダスキー。監督と原作者は役者らを森に置き去りにしてリアルな恐怖を撮影しようとするが、そこは偶然にも麻薬カルテルの中心地で、彼らはホンモノの銃撃戦に巻き込まれていく。
(2008年 アメリカ/イギリス/ドイツ)

【壮大なジョーク】
 いきなり「本作の登場人物たちが主演する実在しない映画の予告編」というジョークで幕開け。以後もふんだんにパロディが詰め込まれる。
 ざっとあげるだけで『ナッティ・プロフェッサー』に『ランボー』に『プライベート・ライアン』に『地獄の黙示録』に『未知との遭遇』。

 ほかにも、わがままな役者に振り回される英国人監督とか、オーストラリア人俳優の潜在能力とか、次世代メディアを巡る競争にブルーレイが勝った理由とか、絶大な権力を誇る出資者とか、彼らが乗り回すビジネスジェットとか、エージェントがねじ込むどーでもいい契約条項とか、不必要なグロとか……。「実際ハリウッドってこうなのかもね」と笑ってしまうファクターのオンパレードだ。
 しかも映画の撮影シーン=「芝居している芝居」を見せるメタ構造となっていて、観ている側は、どこまでがホンキでどこからがジョークなのか、煙に巻かれることになる。

 驚いたのは、そんなジョーク映画を極めて真っ当に、カネも手間ひまもかけてちゃんと撮っていること。撮影も美術も音楽も特殊効果もロケーションも編集も、そのまんま本物の『トロピック・サンダー』を作れるくらいのクォリティ。この手のパロディ映画にありがちな「ちょっと大掛かりだけれど結局はコント」に堕していないのが素晴らしい。やるじゃん、ベン・スティラー。

 出演陣も、この「素晴らしくよくできたジョーク」に真正面からぶつかっていく。
 俳優たちにとっては誇りであるはずの“役者魂”を自ら揶揄し、けれどそれを揶揄に思わせないロバート・ダウニー・Jrの力演が見事。弾けちゃってるトム・クルーズも笑える、または笑えない(実際トムもこういう人に悩まされてるのかも)。
 義理人情に生きるマシュー・マコノヒーは観客が期待した通りに行動して図らずも笑いを取ったり、マッチョなはずのニック・ノルティがイカサマ師だったりという皮肉に満ちた配役も、豪華チョイ役陣も楽しい。
 まぁベン・スティラー自身とジャック・ブラックはいつも通りだけれど、それを補って余りある怪演を周囲が披露、みんな喜んで演じていることもわかるし、それを監督がキッチリすくい取っている点にも好感が持てる。

 で、散らされたジョークの中でも特に印象に残ったのはオスカーに関すること。「賞が欲しければ完璧に演じるな」とか「ノミネートには政治的配慮も働いている」とか、妙に納得してしまう。
 いや実際、『I Am Sam』でショーン・ペンが受賞できなかった理由ってホントにそういうことなのかも知れないなぁ、とか、最近日本人俳優や日本作品の評価が高いのは日本を大きなマーケットと考えているからだよなぁ、なんて思ったり。

 が、何といっても極めつけは、本人が「何かのジョークだと思った」というロバート・ダウニー・Jrのオスカー助演男優賞ノミネート。
 映画製作の現場や賞レースを真っ向から笑い、その象徴たる役柄のカーク・ラザラスを本物の賞レースに押し上げて、かくして壮大なジョークは完成を見た、といったところか。
 ちなみに同年の主演男優賞はショーン・ペン、助演男優賞はヒース・レジャー、監督賞は英国人のダニー・ボイル、外国語映画賞は『おくりびと』。なんだかみぃんなジョークに思えてくる。

 そのあたりもひっくるめて“映画”というより“作品”とか“出来事”と呼びたくなる1本である。

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