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2010/07/28

トイ・ストーリー

監督:ジョン・ラセター
声の出演:トム・ハンクス/ティム・アレン/ドン・リックルズ/ジム・ヴァーニー/ウォーレス・ショーン/ジョン・ラッツェンバーガー/アニー・ポッツ/ジョン・モリス/エリック・フォン・デットン/ローリー・メトカーフ/R・リー・アーメイ/サラ・フリーマン/デビー・デリーベリー/ジェフ・ピジョン/ジョー・ランフト
吹き替え:唐沢寿明/所ジョージ/名古屋章/永井一郎/三ツ矢雄二/大塚周夫/戸田恵子/市村浩佑/堀裕晶/小宮和枝/谷口節/笠原清美/落合弘治/八代駿

30点満点中18点=監4/話4/出3/芸4/技3

【カウボーイとスペースレンジャーは無事に還れるのか?】
 アンディの誕生日がやって来た。ポテト・ヘッドやレックスといったおもちゃたちは「新しいプレゼントのせいで、俺たちは忘れ去られるかも」と戦々恐々だ。カウボーイのおしゃべり人形ウッディだけは落ち着き払っていたが、ハイテクおもちゃのプレゼント=バズ・ライトイヤーの登場で“アンディのお気に入り”の座を奪われてしまう。何とかバズを追い出そうと企むウッディ。ところがバズも自分もアンディとはぐれてしまって……。
(1995年 アメリカ アニメ)

★ネタバレを含みます★

【映画史における記念碑的作品】
 最新作を観る前に、まずは復習。
 全編3DCGで作られた初の劇場用長編アニメであるわけだが、その事実だけに甘えず、早くも「3DCGアニメーションは、こう作るべきだ」という志のようなものが全編に漲っていると感じる。

 広がり・高低をしっかりと認識できるような立体的空間。鮮やかな陽光とネオンと夜空を表す照明効果。幼い女の子のいる母子家庭はちょっとファンシーで、シドの家は外観までどことなくおどろおどろしい。音の響きは場所によって妥当に変化する。
 そんな“世界”がまず作られ、カメラはその中を縦横無尽に動き、サイズもレンズの種類も多彩。たるみや揺れや反動まで豊かに表現され、キャラクターたちは顔と全身でユニークな演技を披露する。なるほど3DCGらしい作り。
 もともとディズニー作品には、2Dアニメであっても奥行き感やダイナミックな画面構成が徹底されている印象があるが、いっそう大きく「紙芝居からの飛躍」を果たしているといえるだろう。

 ただ、テクスチュアの処理(犬の毛並など)が雑だったり人間の動きがギクシャクしていたり、正直、CG技術の細かな部分はすでに“過去の物”と化している感はある。さすがに『ピクサー・ショート・フィルムス』で観られる黎明期短編よりクォリティは格段に上だが、まだまだ人間を主人公とするにはキツいレベルだ。

 それは誰よりも製作者サイドが認識していたはず。そこで逆転の発想を働かせ、「ならば人間以外を動かそう」と、つまりは苦肉の策というか、そうせざるを得なくて「主人公はおもちゃ」となったのだと思う。
 が、当然ながら、おもちゃが主人公であることの必然性・妥当性を考慮したうえでストーリーも演出も練られていて、それがエライ。
 次から次へと新顔がやって来るおもちゃの立場・心情を物語の軸とし、雑多なおもちゃたちはそれぞれの特性を生かした活躍を見せ、“おもちゃとしての禁じ手”が重要なキーとなる。「たまたま主人公がおもちゃ」なのではない。ちゃんと「主人公がおもちゃである意味」まで考えられているのだ。

 そんなおもちゃたちへの感情移入を促すべく多用される一人称視点は、予想のつかない展開とともに緊迫感とサスペンスとリズムを生み、ハウリングやシートベルトを締めるバズといった細かなニヤリも忘れず、ウッディとバズの登場のさせかたには「彼らが主役なんですっ」という気配が漂う。すなわち、映画的な見せかたや演出の巧みさもたっぷり。
 コメディ映画としてのニギヤカさや楽しいテンション(特に空手チョップの場面が好き)、アドベンチャー映画としてのワクワク感をキープしたまま一気呵成にエンディングまで突っ走る。

 また個人的には、『フリークス』や『ゾンビ』、「選ばれたものだけが、もっといい世界へ行ける」というSF的な価値観まで盛り込んで、必ずしも善良で健全なお子さま向け・ご家族連れ向けではないというか、ある意味で「意外と好き勝手やってやがんなぁ」的な奔放さがあるのも良。「おもちゃは大切にしましょう」という説教臭さがないことにも好感を覚える。

 そして「ハッピーエンドへ至るためには、いったんネガティヴなところへ物語を落とさなければならない」というドラマツルギー。
 死と再生、なんていうと大袈裟だけれど、自分たちは役立たずだと滅入るアンディとバズが、それでもおもちゃとして生きる希望に自分を奮い立たせる。その上下の振り幅とシンクロするように、滑空~上昇~着地と続くクライマックスが実に鮮やかだ。

 やや喋りすぎのきらいはあるけれど、全編3DCGで作られた初の劇場用長編アニメという事実に加え、映画としてのデキの良さ・面白さがあったからこそ、本作は掛け値なしに「映画史における記念碑的作品」と成り得たのだろう。
 この作品の成功によって、モンスタークマノミクルマネズミロボットといった人間以外が、人間ではない強みを十分に感じさせながら活躍するピクサー・ワールドの土壌と仕組みが作られ、僕らを楽しませることになったわけで、全編3DCGで作られた初の劇場用長編アニメが『トイ・ストーリー』であることのありがたさを感じるところである。

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作品情報 タイトル:トイ・ストーリー 制作:1995年・アメリカ 監督:ジョン・ラセター 出演:トム・ハンクス、ティム・アレン、ドン・リックルズ、ジム・パーニー あらすじ:カウボーイ人形のウッディはアンディ少年の大のお気に入り。だがそれも誕生日プレゼントでアクション人形バズ・ライトイヤーを手にするまでの事だった。NO.1の座を奪われたウッディは何とかバズをこらしめようとするが、バズはバズで自分が本物のスペース・レンジャーだと思い込んでいる有り様。そんな二人がふとしたいざこざから外の世界に飛び出してし... [続きを読む]

受信: 2010/09/01 14:19

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