マンマ・ミーア!
監督:フィリダ・ロイド
出演:メリル・ストリープ/アマンダ・セイフライド/ピアース・ブロスナン/コリン・ファース/ステラン・スカルスガルド/ジュリー・ウォルターズ/クリスティーン・バランスキー/ドミニク・クーパー/レイチェル・マクドウォール/アシュレイ・リリー
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸4/技3
【ホントのパパは誰?】
エーゲ海に浮かぶカロカイリ島、小さくて古いホテルを切り盛りする元歌手のドナ。明日は女手ひとつで20歳まで育て上げた娘ソフィの結婚式だ。そのソフィは自分の父親候補が建築家のサム、銀行員のハリー、冒険家のビルの誰かだと知り、3人を密かに招待する。ひと目見れば誰がホントのパパかわかると考えていたソフィだったが、3人はそれぞれ「自分が父親だ」と信じるようになって……。アバのヒット曲に乗せて描く結婚狂想曲。
(2008年 イギリス/アメリカ/ドイツ)
【楽しさから尻すぼみへ】
カロカイリ島の風景が圧倒的に美しい。海と空の鮮やかなブルー、木々の明るいグリーン、ホテルのまぶしいホワイト。衣装も小道具も華やかでカラフル。それを解像度の粗いギラっとした画質で捉え、燦々と降り注ぐ陽の光を印象づける。小気味よくカットをつないで、もう見た目からして楽しい雰囲気が広がる。
この舞台であれば、ミュージカルが抱える「突然歌い出す」という不自然さは消し飛ばされてしまう。非日常への憧れこそがミュージカルの本質なのだとよくわかる。
跳ね回る面々も、なんとも楽しそう。特にメリル・ストリープは、常について回る悪女・才女の雰囲気から大転換、「ちょっと贅肉のついた明るいおばちゃん」になって、不器用に歌い踊って、それが逆に女優としての幅の広さを感じさせる。
ソフィ役のアマンダ・セイフライドも素晴らしい。派手な顔立ちと健康的な肉付きが、エーゲ海を背景にして映える。下心などまるでないようにパっと弾ける笑顔、ちょっと困ったときの眉、恋人スカイを見つめるときのウットリした視線など、なかなかに可愛らしいヒロインぶりだ。
繰り広げられるアバのナンバーも陽光のように華やかだ。タイトルにもなっている「Mamma Mia」、「Money,Money,Money」に「Dancing Queen」、さらには「Gimme! Gimme! Gimme!」に「Voulez-Vous」に「SOS」と惜し気もなくヒット曲を連続させる。
音楽に引っ張られて、誰が本当のパパなのか、いま3人はドナをどう想っているのか、ドナの気持ちは……と、観客に気を揉ませながらストーリーも軽快に進んでいく。
が、「アバといったらコレでしょ」と誰もが知っている曲が尽きた(まぁファンなら全曲おなじみなんだろうけれど)あたりから、流れがちょっとおかしくなる。
展開が足早かつ大味になり、それぞれの心情を掘り下げることなく、カット割りや編集にもキレがなくなって、なぁんか知らないうちに終幕……。明らかに尻すぼみというか、歌うだけ歌ったらお話としてのまとめはハッピーエンドのウヤムヤテキトーでOK、という雰囲気だ。
その尻すぼみ感にあわせて細かな不満も浮かび上がってくる。
せっかく3人の父親候補に個性的なキャストを揃えながら、キャラクターの描き分けは中途半端。たとえば冒頭部、地下を通って部屋へと案内される際に、銀行員のハリーは顔をしかめるのに対して冒険家のビルはニコニコしている。こういう“味”がもっとあればよかったのだが。
同様に、ドナ&ロージー&ターニャのトリオだって、ソフィと友人ふたりの3人組だって、「アフロディーテの泉」の伝説だって、展開の中でもっと生かせたんじゃないか。
それに、正直アマンダ・セイフライド以外のキャストは、さして歌が上手いわけじゃない。全体にコーラスで誤魔化している。ダンスのレベルだってそれほど高くない。前半はそれを「楽しい島の1日」と好意的に受け止めることができるんだけれど、後半のグダグダ感の中で「うむぅ」という落胆へと変わっていく。
少なくとも「サントラ買うか?」と聞かれれば「いや、アバのベスト版なら買うかもしれないけれど」と答えるだろう。それってミュージカル映画としては失敗であるはず。その原因はウヤムヤテキトーな後半にあることは明らかで、なんとも残念な仕上がり。
そういえば『アクロス・ザ・ユニバース』もストーリーとしてはイマイチだったけれど、アレンジと歌唱力で大健闘、サントラ版が欲しいと思わせたので、音楽映画としての完成度は本作より遥かに上だといえるだろう。
で、どうやらレイチェル・マクアダムスもソフィ役のオーディションを受けていたらしいが、アマンダ・セイフライドの前に敗退。でもふたりが共演している『ミーン・ガールズ』では、同じ役を競ってレイチェルが勝ったんだとか。こりゃあ『ミーン・ガールズ』も観んといかんなぁ。
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