アイアンマン
監督:ジョン・ファヴロー
出演:ロバート・ダウニー・Jr/テレンス・ハワード/ジェフ・ブリッジス/グウィネス・パルトロー/レスリー・ビブ/ショーン・トーブ/ファラン・タヒール/クラーク・グレッグ/ビル・スミトロヴィッチ/サイード・バドレヤ/ジョン・ファヴロー/ポール・ベタニー(声の出演)/サミュエル・L・ジャクソン
30点満点中17点=監3/話3/出3/芸4/技4
【鋼鉄の男、空を往く】
新型ミサイル兵器のデモンストレーションを敢行するのは、巨大軍需企業スターク・インダストリーズを率いる天才科学者トニー・スターク。だが彼はテロリストに拉致され、自分の開発した兵器が敵の手にも渡っていることを知る。密かに作り上げた小型反応炉アーク・リアクターとパワードスーツを用い無事に敵地から脱出したトニーは、兵器開発の中止を宣言。それを快く思わない彼の後見役オバディアは策謀をめぐらすのだった。
(2008年 アメリカ)
【パッケージングの上手さ】
マッド・サイエンティストが自らヒーローになるというのは、日米通じて意外と珍しい設定かも知れない。そのアイディアに説得力を持たせるべく、丁寧に作られている映画だ。
キーとなるハイ・テクノロジー『アーク・リアクター』をはじめ、神経麻痺誘発装置とその防護用イヤー・キャップ、3Dディスプレイ、タッチ操作の各種パネル、不器用クン、イヤミをいうコンピュータ『ジャーヴィス』など細かなガジェットが楽しい。「初号心臓」なんていうネーミングも、なかなかのセンス(これは日本語版製作スタッフのお手柄か)。
マーク1~マーク3の開発過程もジックリと描かれるのがポイント。「できました」ではなく「作りました」という雰囲気が醸し出されている。
トニーの「小さな機械で生かされている」という設定と、それが本筋と関わってくる物語処理も良質。ホンモノvsコピーの対決図式っていうのもパート1としては贅沢だ。
トニー=ロバート・ダウニー・Jrは演じられる役柄の幅の広さを感じさせ、ちょっと軽めのテレンス・ハワード(軍需企業に担当将校がいるというのが驚きだ)、もう出てきた途端に「こいつ実は悪いヤツ」という体臭をプンプン放つオバディア=ジェフ・ブリッジス、仕事のできる秘書ぶりが可愛らしいグウィネス・パルトローと、キャラクター配置と配役も物語にピタリとハマる。
撮りかたも、影・陰をサラリと使って「戦争という大量殺人を支えてきた張本人がヒーローに転身する」という流れを印象づけ、ニヤリ&クスリも織り交ぜて、楽しく、テンポよく、丁寧で、臨場感も豊か。
CGは、やはり『インクレディブル・ハルク』のような生物より、スーツのような無機物のほうがウソっぽくならなくていい。オバディアにサリエリを弾かせたり、エンディングにブラックサバスの『アイアンマン』をフィーチャーしたり、音楽の使いかたも気が利いている。
まぁ、トニーとペッパーとの関係はもうちょっと描き込むべきだったろうし、クライマックスが問答無用でバカっぽいのは確か。何かが心に残るようなタイプの映画でもない。
が、全体として、アメリカン・プロレスにおけるギミック/アングルの面白さにも通じる“お話のパッケージングの上手さ”があり、そういう技術やセンスがアメリカにはあるんだよな、と実感できる仕上がり。アクション・エンターテインメントとして過不足ない作品といえるんじゃないか。
同監督の『ザスーラ』は「ファミリー向けサスペンス・ファンタジーとしてはよくできているが、全体的な緩急のつけかた、序章から本編へのお話の持って行きかたが雑」という印象だった。そこから随分と語り口も進歩したな、と思わせる。
パート2をはじめ兄弟作品・系列作品すべてで今後もこのクォリティを維持できれば、マーベルのヒーローが一堂に会するという『The Avengers』へ向けての盛り上がりも期待できそうだ。
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