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2010/08/22

ブッシュ

監督:オリヴァー・ストーン
出演:ジョシュ・ブローリン/エリザベス・バンクス/エレン・バースティン/ジェームズ・クロムウェル/リチャード・ドレイファス/スコット・グレン/トビー・ジョーンズ/ステイシー・キーチ/ブルース・マッギル/タンディ・ニュートン/ジェフリー・ライト/ヨアン・グリフィズ/ノア・ワイリー/デニス・ボウトシカリス/マイケル・ガストン/ブレント・セクストン/ポール・ライ/ロブ・コードリー/メアリー・シェルトン/コリン・ハンクス/ジェイソン・リッター

30点満点中17点=監4/話3/出4/芸3/技3

【第43代合衆国大統領】
 名家に生まれ育ち、名門大学を卒業したジョージ・W・ブッシュ。だが酒浸りの毎日で、たびたび問題を起こし、どの仕事に就いても長続きせず、意を決して臨んだ下院議員選挙にも落選する。それでも父の大統領選を助けて勝利に導くと、自らもテキサス州知事、そして大統領へと上り詰める。やがて9・11の悲劇が起こり、第43代アメリカ合衆国大統領ブッシュは“悪の枢軸”との対テロ戦争へと突入していくことになる。
(2008年 アメリカ/香港/ドイツ/イギリス/オーストラリア)

【なぜなら彼だから】
 ホワイトハウス、額をつき合わせて相談している人々。
 リチャード・ドレイファスのチェイニー副大統領は似過ぎ。タンディ・ニュートンのライス補佐官もそのまんま。パパブッシュはジェームズ“大統領といえばこの人”クロムウェルが演じ、ジェフリー・ライトもパウエル国務長官によく化けている。
 でも、なんだか犯罪映画であるかのようなコワモテとクセモノたち、というのが、なかなかに面白いキャスティング。

 で、ブッシュになりきったジョシュ・ブローリンの直近で、カメラはゆらゆらと動きながら彼の表情を捉える。まぁ無責任で躁鬱。
 しかも、ご丁寧に「1993」と西暦を明示しながら時制の行き来はどこか不確かで、ボンクラだった昔と、歴史的大事件に対峙する現在とで、彼が何ら変わっていないことを匂わせる。

 たぶんWは、信念も持っていないし啓示だって受けていない。彼の頭上に光の輪を置いて「天使」を思わせるカットも登場するけれど、たぶん神の御使いになりたかったわけでもない。かといって、一時の思いつきで行動しているわけでもない。

 じゃあ彼は何になろうとしたのか、彼を突き動かしたのは何なのか。

 細かな動作や身につけているものを一瞬うつすなど、多用されるムダ(に思える)カットが答えをくれる。
 つまり、その人を構成している要素は山のようにあるのだ。酒や野球や信仰や家族へのコンプレックスもそうだけれど、そうしたわかりやすいものばかりじゃない。いろんな小さなものから人はできている。その1つずつが時おりポンとクローズアップされることはあっても、それらすべてを把握することはできないし、たとえ可能だったとしても、そのひとのすべてを理解することまではできないだろう。

 第43代合衆国大統領がどういう人かといえば、解答は唯一「ジョージ・W・ブッシュ」なんである。他の誰でもない自分だけの行動を目指した、ジョージ・W・ブッシュであろうとした、そんな人物を描いた映画であることを『W.』という原題が教えてくれる。
 恐らくブッシュ自身にも、自分が何を目指しているのか、何に突き動かされているのか、わかっていないはず。だからこそ「混乱するから考えすぎるな」なんて台詞も吐くし、彼の行動の背景には明るくて牧歌的な音楽が常に流れるのだ。
 放蕩生活から選挙での敗戦に至るまで、その動機や理由も彼自身には説明できないんじゃないか。ただ「私がジョージ・W・ブッシュだからだ」としかいえないだろう。開き直りではなく、実際そうなのだ。
 それが人というものなのだ。

 そして、どれだけ神の意思を強調しても、どれだけ祈っても、人が自分自身であるために行動するとき、そこに神はいない。いるのはただ、そうしようと決断した“その人”だけ。
 いわば神の不在。ボブ・ディランが「神がついているなら次の戦争は止めてくれるはず」と歌う『With God On Our Side』に、そんなことを考えてしまう映画でもある。

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