ザ・クリーナー 消された殺人
監督:レニー・ハーリン
出演:サミュエル・L・ジャクソン/エド・ハリス/エヴァ・メンデス/ルイス・ガスマン/キキ・パーマー/マギー・ローソン/ホセ・パブロ・カンティージョ/ロバート・フォスター/エドリック・プロウニ/マーク・マコーレイ/サラ・ジェイン・エンリケ/アンジェリーナ・リベラ
30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4
【殺された証人、遺された証拠。事件の真相と真犯人は?】
妻を強盗に殺された過去を持つ、元警官のトム・カトラー。いまは特殊な汚ればかり専門に扱うハウス・クリーニング会社を経営しながら、ひとり娘のローズを育てていた。大邸宅のリビング、殺人現場の血しぶきを清掃したカトラーは、そこが警官汚職事件の重要証人の家であること、死体はなく失踪として扱われていること、仕事を依頼した警官が存在しないことなどを知る。事件のニオイを嗅ぎ取ったカトラーは元相棒エディに相談するが……。
(2007年 アメリカ)
★ややネタバレを含みます★
【見せかたもまとめもいいが、ちょっと乱暴】
解像度の高い画で、カトラーの内面へと抉り込んでいく。誰かが彼の行動を見ているような視線には、静かな危うさが募っていく。
クローズアップのカットを短く畳みかけ、そこへSEも扇情的に乗っけて不安を増長させるのは『レクイエム・フォー・ドリーム』などでも見られた新世代的な作り。レニー・ハーリンは90年代の作品しか観たことはなく、派手でストレートでユーモアもある純アクション屋さんだと思っていたのだが、こういうエッジの効いた撮りかたもできるとは驚きだ。
とりわけ殺人現場の証拠を引き出しにしまいこむ場面のヒリヒリした雰囲気が上質だ。
お話としても、まずまず上手くまとめてある。娘ローズのしっかりした性格やエディの福祉活動などを伏線として散らし、そこに「守りたいもの=家族」というテーマも自然に盛り込む(ミゲールの家族のノーブルな様子をポンと入れる、空気の緩ませかたがいい)。収賄事件やカトラーの過去を背景として機能させ、全体に語りすぎることなく、スマートに物語を進めているな、というイメージだ。
ただ、未亡人アンがたやすくカトラーを信頼してしまったり、クライマックスが“やりすぎ”または“安っぽすぎ”だったり、やや乱暴な面があることも確か。登場人物が少なく、怪しいと思わせる存在が限られていてふくらみにも欠ける。
描写がカトラーとローズのみに寄り過ぎていて、もうちょっとアンやエディ、ジムの内面も掘り下げるべきだったんじゃないかとも感じる。「潔癖なカトラー」だけでなく、周辺人物も描き込んでキャラクターとしての造形を深めることが、単なる犯罪サスペンスを超えたものとして、作品の格を上げることにつながったはずだ。
で、某所でも書かれていたけれど、これって連続TVドラマシリーズとしても成立しそうな設定/アイディアだ。
カトラーの仕事ならまだまだいろいろとヤバイ状況や奇妙な現場に出くわすことは多そうだし、復讐のための刑務所内での殺人などカトラーの過去ももっと掘り下げられそう。監察医アーロとの関係、秘書シェリーや出所したばかりのミゲールなど、ふくらますことのできる要素はゴマンとある。
たぶんサミュエル・L・ジャクソン自身(製作を兼務)もレニー・ハーリンも「本作が序章。後々TVシリーズとして展開」ということを念頭に置きながら作ったように思うのだが、どうだろうか。
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