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2010/09/02

フライド・グリーン・トマト

監督:ジョン・アヴネット
出演:キャシー・ベイツ/メアリー・スチュアート・マスターソン/メアリー=ルイーズ・パーカー/ジェシカ・タンディ/シシリー・タイソン/クリス・オドネル/スタン・ショウ/ゲイラード・サーテイン/ティモシー・スコット/ゲイリー・バサラバ/ロイス・スミス/マコン・マッカルマン/レイノール・シェイン/ナンシー・アッチソン/ニック・セアシー/ヘインズ・ブルーク/グレイソン・フリッケ

30点満点中18点=監4/話3/出5/芸3/技3

【女と女の友情の物語】
 子育てを終えた主婦エヴリンは、スポーツ中継にしか感心のない夫エドとの関係を案じ、さまざまな自己啓発講座に通うものの心は晴れぬまま。そんな折、介護施設に義母を見舞ったエヴリンはニニーという老婆に話しかけられる。ニニーが語るのは、まだ人種差別が色濃く残っていた頃、黒人や貧しい人々にも分け隔てなく接したカフェ経営者イギーと、その友人ルースのストーリー。夢中になったエヴリンは、毎週のように施設へ通う。
(1991年 アメリカ)

【大切さのプライオリティ】
 いやぁ、まさかキャシー・ベイツを「可愛い」と思うなんて、考えもしなかった。だってね、イメージとしてはホラーでイヤミで気味の悪いおばちゃんですよ。それが本作では、くるぶしのない脚も、トランポリンでぴょんぴょん跳ねる姿も、チョコバーを頬張る顔も、涙も笑みも、みぃんな“一所懸命に自分の人生を立て直そうとしている等身大のおばちゃん”として、実に可愛らしいのだ。

 彼女だけでなく、キャストが大きな魅力として光っている映画。
 メアリー・スチュアート・マスターソンは熱さを秘めながら、ゆらゆら不安定に、けれどマイペースで生きるイギーを好演。メアリー=ルイーズ・パーカーも儚げで少し汚れた美貌を全開にし、ジェシカ・タンディは安定した存在感で観る者を作品世界へと誘う。

 視線や歩幅に気を遣ったお芝居を、カメラは大きく動きながら「そこにあるもの」としてうつし出していく。あるときは近くからしっかりと表情を捉えて、またあるときはやや離れた位置から人と人との関係を捉えて。
 急ぎすぎず、遅すぎるわけでもない流れが心地よい。どんな魔法なのかはわからないが、現代風コメディと、暗く寂しげで刹那的な回想とを、1本の作品の中に同居させた技がスゴイ。

 内容としては、「人生において大切なものは何か?」と自問する映画といえるだろう。
 一応は作中で答えが出されるのだが、その答え=friendshipは、単に友情や友だちを意味するものではないような気がする。
 ハートは裂かれても鼓動を続ける。そのことに気づき、鼓動が鳴り止まないよう注意し、繕い、傷を忘れさせ、与えられれば別のものを返してあげたいと思う、そんな関係を築くことが大切だと語るのだ。

 そこに、プライオリティというものも感じさせるように作られている。
 たとえばエヴリンの義母は、いっさい画面に登場しない。それだけエヴリンにとっての存在価値は小さいということだろう。逆にエヴリンと語り手ニニーとの距離感はごく近いものとして描かれ、エヴリンは義母の見舞いなどそっちのけで、ニニーも世話するはずの相手を放っておいて語り合う。たがいに「いま現在の人生において優先順位の高い相手」であるわけだ。

 イジーとルースとの関係も同様だ。最初はしっかりと手をつなぐ姿がうつされ、けれど悲劇をきっかけに離れてしまい、そこから少しずつ近づいていくという展開。その過程で、無茶ばかりしていたイジーは自分と周囲をいたわるようになり、堅苦しかったルースも心を許して弾けるようになり、たがいを優先順位の高い相手として認識するようになる。
 もちろんイジー&ルースと周囲との関係も、たがいに大切なもの、守りたいもの、人生における優先順位の高い存在として描かれていく。

 ルースの夫フランクが姿を消した事件の真相はかなりショッキングなものだが、登場人物たちは意外と軽く受け流している。それはまさに、“大切さのプライオリティ”を考えたとき、フランクなど取るに足りない存在、彼に味方する者たちも同様、もっとも大切なのは、この時間と場所を共有しながら暮らしている仲間たち、という意識が働いていることを示す。

 そして彼女たちは、ファースト・プライオリティを行動へと移すとき、でもそれが決して他人にとっては重要でないことも、その行動が周囲に迷惑を及ぼしてしまう可能性も心得ていて、だから自分を奮い立たせるために「トゥワンダ!」と叫ぶのだ。

 ただ、1点だけ弁明しておきたいことがある。夫エドの態度を不服に思っているらしいエヴリンだが、この旦那さん、決して悪いヤツではないし、彼にとってのファースト・プライオリティがTVというわけでもないはずだ。
 エドは「そんなにめかして、どうしたんだ?」とエヴリンの変化にちゃんと気づいている。エヴリンが側に来れば、ちゃんと体をズラして彼女の座れる場所を作っている。イヤミはいうけれど、絶対に怒鳴り散らすことはないし、エヴリンが突飛なことを口にすれば面と向かって否定する。
 それは、エドにとってエヴリンがプライオリティの高い存在であるからにほかならないからだと、ひとりの夫として申し上げておきたい。

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    "FRIED GREEN TOMATOES" [フライド・グリーン・トマト] お気に入り映画のひとつ『フライド・グリーン・トマト』のDVDを嫁さんが借りていたので、久しぶりに一緒に観ました。 -----story------------- ジョージア州に住む主婦「エヴリン」は、子供たちも独立し、自分に無関心な夫「エド」への愛情も失せつつあった。 そんなある日、叔母への面会で訪ねた老人ホームで、はつらつと元気な老女「ニニー」に出会う。 怠惰な生活を送る「エヴリン」に、「ニニー」はそっと昔話... [続きを読む]

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