グッドナイト・ムーン
監督:クリス・コロンバス
出演:ジュリア・ロバーツ/スーザン・サランドン/エド・ハリス/ジェナ・マローン/リーアム・エイケン/リン・ホイットフィールド/ダレル・ラーソン/ハーバート・ラッセル/ディラン・ミシェルズ
30点満点中17点=監4/話3/出4/芸3/技3
【ふたりの母親】
広告業界で活躍するカメラマンのイザベル。だがアンナとベン、ふたりの子どもの世話に振り回される日々だ。ただし血のつながりはなく、同棲中の弁護士ルークと彼の元妻ジャッキーの子。母親としてイザベルがジャッキーにかなうはずもない。たがいに煙たく思っていたイザベルとジャッキー、イザベルに馴染めないアンナ。だがジャッキーの“秘密”が明らかとなり、ルークがジャッキーにプロポーズすることを決意したことで変化が訪れる。
(1998年 アメリカ)
【役者とアイテムは光るが、トータルでは当たり前】
さすがにクリス・コロンバス、子どもの動かしかたを心得ている。ジェナ・マローンもリーアム・エイケン君も可愛らしく撮れていて、等身大の「離婚した両親と、父親の新しい恋人に挟まれて暮らす子どもたち」を立派に演じている。
ジュリア・ロバーツ、スーザン・サランドン、エド・ハリスという並びなら、子役をもっと小さな扱いにしてもよかっただろうに、意外とアンナやベンにもしっかりとウエイトが置かれていて、それでもバランスを崩さなかった点は立派だ。
その大人たち3人、いずれも役柄からするとちょっと歳を取りすぎている感はあるものの、安心して観ていられるお芝居。イザベル、ジャッキー、ルークが、アンナとベンに対して、子どもというより“家族の一員”として接している、そんな雰囲気作りも上手だ。
特にスーザン・サランドンは「いま自分がどう映っているか」を完璧に理解しているかのように表情や身体の角度を自在に操る。
扱いの上手さといえば、アイテム。ルークがイザベルに婚約指輪を渡すシーンは、あまりにオシャレすぎ。『カリオストロの城』のアレに匹敵する名場面ではないだろうか。イザベルがカメラマンであることを生かしたパネルとか、アンナとベンの“過去”が詰まったマントとキルトなど、美術で物語を重層的にしていく手際もいい。
ただトータルとしては、当たり前すぎという印象。
人間は失敗するもの。それを前提としながらも、自分が与えられるものを与えるべき人に与え、自らも成長していくことで、よりよい関係(たとえば家族)が築き上げられていく。
そうしたメッセージを伝えるために用意された、離婚、新しい恋人、仕事と家族または涙と行動との天秤、ハプニングや“秘密”……といった道具立てに、これといった新鮮味はなく、撮りかたも「実直かつテンポよく」というイメージからハミ出すことはない。
原題の『Stepmom』に対して邦題の『グッドナイト・ムーン』を唐突に感じる人が多いようだが、どうやらシナリオの初期稿では、イザベルがベンに読んであげる絵本が「Goodnight Moon」だった模様。またジャッキーはアンナとともに月を見上げ、ベンが迷子になった際には「もしlunatic(変質者の意だが、lunaはラテン語で月)に見つかっていたら」と案じる。
この“月”をもっとクローズアップしてもよかったのにな、と思う。人を惑わすものでもあり、暗闇の中で見守ってくれるものでもある。受け止めかた次第で、役割は変わる。そうした喩えが、登場人物たちそれぞれの関係に反映された内容であれば、深みも増したのではないだろうか。
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