« 岸辺のふたり | トップページ | タイムリミット »

2010/09/24

最高のともだち

監督:デヴィッド・ドゥカヴニー
出演:アントン・イェルチン/ティア・レオーニ/デヴィッド・ドゥカヴニー/エリカ・バドゥ/フランク・ランジェラ/ゼルダ・ウィリアムズ/メガリ・アマデイ/オルガ・ソスノフスカ/オーランド・ジョーンズ/アリス・ドラモンド/ハロルド・カルティエ/マーク・マルゴリス/ロビン・ウィリアムズ

30点満点中18点=監3/話4/出4/芸4/技3

【いまも心に残る、数十年前、13歳になったあの日】
 パリで暮らすアメリカ生まれの挿絵画家トミー。息子オデールの13歳の誕生日、彼は妻コラリーとオデールに対して、自分が13歳になった日のことを話し始める。それは1973年のNY、父を亡くして1年が経った頃。情緒不安定な母を慰め、学校の用務員をしているパパスと小銭を稼ぎ、メリッサへの淡い恋心を抱き、女囚のレディから刑務所の窓越しにアドバイスを得て……。そんなトミーに、人生を左右するときが訪れることになる。
(2004年 アメリカ)

★ややネタバレを含みます★

【ファクターや構成を楽しむ映画】
 先の読めないストーリーは、次第に「大人になる、ということ」へ収束していく。
 それは、周囲との関係(過去)を整理し、現在の自分の立ち位置を見つけたり築いたりして、そして未来を描くこと。その過程では、誰も不変ではいられない。逃げるにせよ立ち向かうにせよ、いまいるポジションからのシフトチェンジを要求されることも、きっとある。
 ひょっとすると予期せぬ出来事によって引き起こされる“望まぬ変化”にさらされるかも知れない。けれどいずれにしたって、そこで自分の決断に責任を持ち、償うべきことは償うよう努める態度もまた、大人になるということなのだ。
 意外と、深いメッセージ性を湛えた映画である。

 とはいえ、そうしたメッセージそのものは、さして重要ではないようにも感じられる。むしろ、テーマやメッセージを伝えたり、物語を進めたりするために用意されたファクターや構成を楽しむ映画といえるだろう。

 父親の不在という特殊状況下になくとも、この頃(12~13歳)から、それまで優しさの象徴でしかなかった母親の弱さと脆さを感じ始め、いたわりと不安を重ねていくようになるのは、確か。
 また、美しい緑の自転車という“モノ”に目を向け、それを手に入れるための具体策と単純な憧れとの間でフラフラと揺れるのも、12~13歳のあるべき姿だ。

 いっぽうでエロティックなことへの興味もグングンと高まる時期だけに、下ネタも満載。「フランス出身の肉屋の女主人」なんて、下半身直撃の存在じゃないだろうか。芽キャベツ、肉、レモンなど散らされる食べ物も、排泄行為も、ニオイという要素も、すべては“性”に結びつく。

 サウンドトラック、70年代を再現する美術(個人的にはメリッサのハート型の髪留めがツボ)ともあいまって、12~13歳の世界が等身大に描かれる。だからこそトミーが経験する痛みは、画面のこちら側にも実在のものとしてあふれ出してくるわけだ。

 そして、教科書の落書きがトミーの未来へとつながり、母親を見守るために潜り込んだはずの「ベッドの下」が180度異なる残酷な意味を持つようになり、作者当てのクイズが過去と未来の間に橋を渡し……と、各ファクターが有機的に結びついて全体を作り上げていく。要素ひとつひとつをムダにすることなく、考えて組み上げて作られた、そんなシナリオ

 それと、女性たちが常に高い場所からトミーを見下ろしている点もポイントだろう。たぶんトミーは、実の母親に求めることのできなかった「女神の視線」を女性に求めたのだ。で、最終的には妻が“降りてきて、対等の目線で語り合う”というまとめ。その「ちょっと鬱屈した子供性」と、そこからの脱却が、本作のテーマをクッキリと浮かび上がらせる。

 役者たちもみな好演。ロビン・ウィリアムズの安定感は、いわずもがな。母親役のティア・レオーニともども、必要以上にノメリ込むことなく、あくまで若きトミーを“引き立てる”くらいのパワーバランスで自らの役を演じ切る。ロビンの実の娘ゼルダ・ウィリアムズのメリッサも可愛いし、エリカ・バドゥ(『サイダーハウス・ルール』のローズローズ)のレディは、ビルドゥンクスに必要不可欠な“導く者”をまっとうする。
 もちろん、若きアントン・イェルチン(ホントに若い)も、「大人になっていく(ならざるを得ない)」存在としてのトミーを、しっかりと、気持ちよく見せてくれる。

 トータルとして、やはり、各種ファクターとその組み合わせの完成度の高さ・構成の面白さを楽しむ映画となっているように思う。

 それにしても『最高のともだち』っていう邦題は酷いよなぁ。確かに原題の『House of D』(レディが収監されていた刑務所)そのまんまではマズイだろうけれど、もうちょっとナントカならなかったものか。

|

« 岸辺のふたり | トップページ | タイムリミット »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42478/49546762

この記事へのトラックバック一覧です: 最高のともだち:

« 岸辺のふたり | トップページ | タイムリミット »