鴨川ホルモー
監督:本木克英
出演:山田孝之/栗山千明/濱田岳/石田卓也/芦名星/斉藤祥太/斉藤慶太/渡部豪太/藤間宇宙/梅林亮太/三村恭代/オジンオズボーン/和田正人/趙民和/佐藤めぐみ/大谷英子/甲本雅裕/パパイヤ鈴木/笑福亭鶴光/荒川良々/石橋蓮司
30点満点中15点=監2/話2/出4/芸3/技4
【謎のサークルに咲く、恋と友情とバトルの華】
青竜会の新歓コンパに参加した京大生の安倍明は、早良京子の美しさに惹かれて友人・高村とともに入会する。「普通のサークル」という触れ込みの青竜会だったが、その正体は祇園祭の宵山で明らかとなる。ホルモーと呼ばれる謎の競技! 安倍、早良、嫌味な芦屋、マッシュルームカット&大きなメガネが特徴の楠木らが織り成す恋! 安倍と高村の友情、さらには全京都を巻き込む神の怒り……。果たして青竜会が存在する意義とは!?
(2009年 日本)
【もっと面白く作れたはずなのに】
もうちょっとキチンと、少なくとも、もうちょっと面白く作れんものか、というのが素直な印象。原作は未読だが、このお話・世界の楽しさを十分に表現できていないんじゃないだろうか。
序盤がタラタラとしすぎ。最初のクライマックスであるホルモー初陣までに50分も要している。
この序盤部分で、本作のもう1つの核である恋愛要素をタップリと見せてくれるのなら、まだよかった。が、安倍は高村とウダウダしているだけ、早良や楠木の出番は少なく、ひたすらヤなヤツである芦屋以外は、キャラクターや各人の思いが丸っきり描けていない。
好意的に解釈すれば、観る側も安倍も「なぁんか意味不明でアヤシゲな青竜会と菅原さんに、ズルズルと付き合わされている」という空気が出ているとはいえるだろう。が、テンポは悪いし深みもないことは確か。説明セリフや不要なテロップも多い。
撮りかた的にも「ここは、こういう絵にしたい」という意志を感じられるのは早良の鼻のアップくらい(それだって、とりたてて美しくはない)。
アングルやレンズの種類が少なく、ベッタリとした色合いの、邦画特有の安っぽい絵作り。肝心のバトルシーンも、ただ撮っているだけでダイナミズムに欠ける。
救いは役者たち。
山田孝之はボソボソと五月病の大学生を好演し、栗山千明は見事な化けっぷりと楽しく器用にドライバーを回す指先で楠木を怪演。
濱田岳はいつもの調子で場の空気を和ませ、石田卓也は生まれながらの嫌われ顔で芦屋という男になり切る。芦名星は好みのタイプではないが、話せば意外と可愛く、そのウラにあるジコチューぶりもよく出ている。
パパイヤ鈴木や笑福亭鶴光の起用もアクセントとして効き、荒川良々は善良で生真面目なこの役をびっくりするくらいスマートにこなしている。石橋蓮司も、最近の芸風である奇っ怪ぷりが愉快。
あとはGONZOを軸とするVFXもかなり頑張っていると思うが、トータルとしては、恋や友情といった「青春」も、特異な登場人物・設定・振り付けが醸し出す「ユーモア」も、ホルモーや怒った神の「迫力」も、すべてが中途半端。お話としての面白さも映画としての面白さも前面に出てこないデキとなっている。
このバカっぽい世界も青春の蹉跌も嫌いじゃないだけに「作りかた次第ではもっと楽しい作品になったのになぁ。残念」と思わざるを得ない仕上がりである。
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