ホッタラケの島 遥と魔法の鏡
監督:佐藤信介
声の出演:綾瀬はるか/沢城みゆき/松元環季/戸田菜穂/大森南朋/谷村美月/うえだゆうじ/甲斐田裕子/宇垣秀成/塩屋浩三/岩崎ひろし/家弓家正
30点満点中16点=監3/話1/出4/芸4/技4
【大切なものを探す旅】
とても大切なはずなのに、いつの間にか失くしてしまうものがある。取り戻したいなら、お稲荷さんの社に卵を供えて願えばいい……。母の形見の手鏡を失くしてしまった女子高生の遥は、生まれた町の神社へと向かう。そこで見かけたのは、“ホッタラケ”のものを集めている奇妙な生き物。彼らが暮らす「ホッタラケの島」へ迷い込んだ遥は、その生き物=テオの助けを得て手鏡を探す。が、島の実力者・男爵の魔の手が忍び寄るのだった。
(2009年 日本 アニメ)
【お話そのものがホッタラケ】
しっかし松元環季って上手いなぁ。『カールじいさんの空飛ぶ家』でも感心させられたが、ここでもコットンという印象的な役を抜群の演技力でまっとうしている。
あと、家弓家正の登場も嬉しい限り。“塔の中の姫君”モノなんだから、やっぱ悪役はこういう声でなきゃダメだ。飛行機がブンブン飛ぶあたりも含めて宮崎アニメへのリスペクトを感じる。
主役・綾瀬はるかも、ほどほどのテンションの高さ+しっとり感を併せ持つ声が遥というキャラクターにもこの世界にもマッチしていて、意外といいキャスティングではないだろうか。
その遥に萌え。セーラー服に着ぐるみ風ヘルメット、豊乳、スカートの中は見えそうで見えず、磔にされ、口にチューブを突っ込まれ……。完璧に狙ってるでしょ、という描かれかた。
つるっ、ぬぺっとした顔の質感は好みのわかれるところだろうし、動きにも『ぼく夏』っぽさが残る(つまり劇場映画クォリティとしては、ちょっと不満)が、柔らかさ、弾み、揺れなどは美しく再現されていて悪くない。おそらく作画・描画上の都合でショートカットにしたのだろうが、それもまた遥のキュートさを押し上げている。
遥だけでなくテオや父親など、全体に視線の動きや細かな指の所作を大切にした演技を見せる。縫い目などテクスチュアも上々。実写的なカットとアニメ的な見せかたを自在に使い分け、広がりや距離が実感できるような立体的世界をキープ、レンズの種類も人物のサイズも多彩だ。
3DCGアニメとして及第点以上の仕上がりだろう。
とりわけ、コットンがマリオネットとして初登場する場面が見どころ。細かな動き、BGMと作画のシンクロ、ライティング、スポットの中で揺れるホコリなど、後半のアクションシーンよりずっと素晴らしい出来栄えだ。
美術は“夢に出てくる系”で、ニギヤカかつ楽しい。この色合いと立体感そのままにPS3かWiiでアドベンチャー・ゲームができるなら、ぜひともやってみたいと思わせるユニークな世界だ。
と、見た目的には質が高いのだが、ストーリーはダメダメ。
いちばん“ホッタラケ”にされているのは思い出、というのなら、それに対応するシーンを序盤の現実世界でちゃんと用意しておくべきだったはず。またテーマを考えれば、コットンは母が作ったもの、それを不器用な父が修理した、という流れがあって然るべきだろう。
島の住民たちにはモノを作る力がないとか、鏡には不思議な力があるという設定も強引で、ストーリー上の処理もいい加減。男爵というキャラクターがこの世界で果たしている役割も不鮮明だし、テオをイジメていた連中が急に心変わりするのも唐突だ。
ラストも、思わず「自分でハンバーグを作って父ちゃんの帰りを待てよ」と突っ込みたくなる。
とにかく全体に行き当たりばったりすぎるのだ。
シナリオは監督自身+乙一。両者の過去作は、佐藤信介監督による『いぬのえいが』の中の1編「恋するコロ」も、乙一原作の『ZOO』もデキとしては14~15点だったから、まぁそれくらいのキャパシティしかないってことなのかも知れない。
お話作りそのものがホッタラケ、という映画である。
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