ニセ札
監督:木村祐一
出演:倍賞美津子/青木崇高/板倉俊之/西方凌/木村祐一/三浦誠己/村上淳/宇梶剛士/加藤虎ノ介/泉谷しげる/中田ボタン/ハイヒールリンゴ/新食感ハシモト/キムラ緑子/板尾創路/遠藤憲一/段田安則
30点満点中15点=監2/話2/出4/芸4/技3
【ニセ札作りの顛末は】
昭和25年1月、戦後初の千円札が発行される。まだ本物を見た人が少ないいまがチャンスと、ニセ札作りを思い立ち、紙の原料であるみつまたを買い漁る大津シンゴ。さらには村一番の名家である元軍人の戸浦、写真屋の典兵衛、紙漉き職人の喜代多、小学校の校長かげ子、印刷技術を持つ小笠原を引き込んで、本格的にニセ札作りの計画はスタート。儲けたい、面白いことをやりたい、村の人たちの生活を楽にしたいと願う彼らだったが……。
(2009年 日本)
★ネタバレを含みます★
【肝心なところで力不足】
いかにも昭和な街並を再現した美術は上等。音楽も、当時の“意味のない浮かれ”を上手に表現している。
キャストも、みんなひたすら昭和っぽい顔つき。草々兄さんと四草兄さんの取っ組み合い(っていうか、草々兄さんをイジメる四草兄さんという珍しいシーン)が見られたのも嬉しい。
ネイティヴではない西日本方言スピーカーが混じり、関西なのか四国なのか曖昧になっているけれど、それは恐らく舞台を「場所不明」にしたかったがためだろう。日本家屋や蔵の中のベタっとした空気を陰影とともにすくい取っていて、“どこかの、その場感”というものを感じさせてくれる。
と、パーツにいい部分はあるものの、トータルとしては貧乏臭いというか古いというか、小学校の頃に体育館で観せられた教育映画のような、ちょっとヌけたデキ。
ムダな間、ムダなカット、必要のない字幕が多く、テンポが悪い。それが味になっているならともかく、もどかしさや野暮ったさにしかつながっていない。オペレーターが悪いのか機材が悪いのか、手持ち撮影の部分で「ちょっと揺れちゃいました」という絵になっているのも気障りだ。
ラスト、おかげさんの述懐も取ってつけたよう。「だんだん楽しくなってきた」とか「お金なんて、ただの紙切れ」という主張を生かすなら、お札で紙飛行機を折ってしまう哲也の存在をもっとクローズアップし、カネで幸せをつかむ者、不幸せになる者、本物の金で買った本とニセ札で買った本の中身の違い……などを、おかげさんがじっと見守って何かを感じ取っていく展開でなければならなかったはずだ。
現状では、ニセ札を作りました、使いました、バレました、開き直って唐突なことをいい始めました、という、カッコのつかない流れになってしまっている。
小さな村の、フツーの人々が始めたニセ札作りの顛末。その発想や、発想をカタチにするために用意されたパーツには感心できる部分はあるものの、どう組み立てれば面白くかつ破綻のない映画になるか、という肝心なところで力不足となってしまった作品だろう。
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