或る旅人の日記
監督:加藤久仁生
30点満点中15点=監3/話2/出3/芸4/技3
【不思議の国を旅する、ひとりと一匹】
幻想に満ちた国トルタリアを旅する男、トートフ・ロドル。彼を遠くへと運ぶ相棒は、脚の長いブタ。動く都市、コーヒーの中に跳ねる影、映写技師と笑う子どもたち、月へ向かう一向、悪夢、美しい花の精、陽気に光る赤い実……。ひとりと一匹が出会う、不思議の数々を描く。
(2003~2004年 日本 アニメ)
【自分が求めるものの再確認】
イメージとしては、たむらしげる、ますむらひろし、レイモン・ペイネあたりに通じる“柔らかだけれど、どこか怖さも秘めるキャラクターたち”が織り成すノスタルジック・ファンタジー、といった雰囲気を持つ作品。
かつ、脚の長いブタ、クマの背中を使った上映、ウサギの擬人化など、ユニークなキャラクターでお話を動かしていくような作りとなっている。
そこに見られる「各キャラクター・各パーツと、世界全体、ストーリーのトータルバランス」は素晴らしく、デザインセンスの面白さや色づかいの楽しさも感じる。昼と夜、明暗、好天と雨など、対照的な世界の表現も上質といえるだろう。
ただし個々のエピソードには出来不出来(というか、好みかそうでないかなんだけれど)があって、「小さな街の映画会」「憂鬱な雨」「赤い実」(他のエピソードより後に作られたもので、少しタッチが堅く軽くなっている)の3本は、動きの楽しさがあり、お話としてもスパイシーで、まずまず面白い。いっぽう「光の都」「真夜中の珈琲屋」「月夜の旅人」「花と女」は、壁に飾りたい作品=動くイラストにとどまっている印象が強い。
そう、『岸辺のふたり』と同様、絵本を動かしたような仕上がりなのだ。
振り返ると『つみきのいえ』は、一見すると「動く絵」に感じられて、実はシッカリと映画的な、アートではなくエンターテインメント側からのアプローチで作られた作品だった。
自分は“それ”を求めているんだなと、あらためて実感した次第。
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