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2010/10/29

CASSHERN

監督:紀里谷和明
出演:伊勢谷友介/麻生久美子/寺尾聰/樋口可南子/小日向文世/宮迫博之/佐田真由美/要潤/西島秀俊/及川光博/森口瑤子/鶴田真由/寺島進/玉山鉄二/りょう/大滝秀治/三橋達也/唐沢寿明/納谷悟朗(声の出演)

30点満点中16点=監3/話2/出4/芸4/技3

【人は何のために戦うのか?】
 ユーラシアを手中に収めつつある軍事国家・大亜細亜連邦では、公害病や兵士の疲弊が問題視されていた。第七管区に住む小数部族がどんな器官にも進化できる“新造細胞”の持ち主であることを発見した東博士は、これを妻ミドリや軍上層部の治療に生かそうと思い立つ。研究は遅々として進まなかったが、施設に謎の稲妻が落ちたことで“新造人間”が誕生、さらに戦死したはずの東の息子・鉄也も蘇る。鉄也と新造人間たちの死闘が始まる。
(2004年 日本)

★ややネタバレを含みます★

【借用を、そこそこ上手くまとめたけれど】
 宇多田ヒカルのミュージック・ビデオを観て「紀里谷監督ってのは、あちこちからアイディアを借りまくって、そこそこ上手くまとめる人」という印象を抱いていた。本作も、そのまんま。

 デザイン・ワークや世界観(美術は『大日本人』の林田裕至)は「日本が第二次大戦で勝ち進んでいたら」を中心とするアナザー日本史系やスチーム・パンクなど、既存ジャンル諸作品のイメージから脱することはない。『帝都物語』とか『サムライガン』とか『紅い眼鏡』とか。学天則がひょっこり登場してもおかしくない雰囲気。
 柴田昌弘っぽいところもあるし、戦争のBGMといったら『月光』でしょというノリも感じる。内面の実写化は『エヴァ』的、アクションシーンにもアニメの方法論を流用(絵コンテは樋口真嗣)し、エンディングなんか完全にアレである。

 それら借用(まぁそもそもリメイクだし)に満ちた道具立てと設定を、デジタル臭たっぷりのヴィジュアルで見せていく。ギラギラしたオレンジ、モノクロ、プリント見本かのような極彩色と、1本の映画とは思えぬほどカラー・トーンは多彩だ。
 そこに意外と違和感はないし、必要以上に安っぽくもなっていない。カットを細かく割ったりアングルを工夫したり、人物たちにビシっとポーズを取らせたり、手間ひまかけて撮っているせいだろう(唯一、鷺巣詩郎のサントラはジョコジョコとチープ)。フツーに撮るとテレ東深夜になるところを、センスとデジタルでカバーしているという感じだ。
 ゴマカシ、コケオドシといえばそれまでだが、見た目的なまとまりは思っていたより悪くないし、たとえば『300』あたりより「あんなこともこんなこともやってみよう」「こう見せたいんだ」という意欲にあふれている。

 それと、キャスト。寺尾聰、小日向文世、寺島進、大滝秀治といった人間臭い“おっさん”たちに罪とエゴイズムを背負わせ、伊勢谷友介、要潤、西島秀俊、及川光博と、シャープでどこか非人間的な顔立ちの役者を若い世代に据えて戦争に直面させる、というコントラストは、恐らく狙ったものだろう。その格差・温度差がテーマにもヴィジュアルにも合っている。そこに、大友チックな目線が印象的な唐沢寿明が劇画調の空気をもたらす。
 また、樋口可南子、りょう、佐田真由美と、やっぱり人間離れした美貌の女優を揃え、しかも、綺麗に撮る。とりわけ麻生久美子は絶品で、間違いなく「女優さんたちを、いちばん美しく撮る」ことが本作の(内容的にではなく製作的な)テーマであったはずだ。

 が、さすがに寄せ集め、ストーリー映画としてのまとまりはよくない
 破綻とまではいかないものの、リアリティや「スムーズな流れ」を作る配慮はゼロに近いといえるだろう。たとえば、ただの1兵士である鉄也が国葬にされる理由とか、新造人間をいきなり撃ち殺しちゃう軍部とか、のし上がってくる上条中佐の唐突さとか、完全に無視されちゃっている稲妻型モノリスとか。とにかく強引に走る。

 で、根底には、人の進化と原罪、人とは何か、戦争の意義とは何か、といったテーマがあり、「憎しみと争いと人はイコールで結びつくが、それでも僕らには希望が残されている」という方向へ収めようとするわけだが、それらすべてを対話シーンで語る構成、ラストには「これこれこうだったのだ」と突然の告白。ひたすら説明で押し通す。
 要は、映画的なストーリーテリングでは、ない。

 まぁまとめれば、テーマがあり、やりたい見せかたがあり、それを何とかくっつけたけれど、映画にはならなかった、といったところだろうか。

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