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2010/10/28

重力ピエロ

監督:森淳一
出演:加瀬亮/岡田将生/小日向文世/渡部篤郎/吉高由里子/岡田義徳/鈴木京香

30点満点中15点=監3/話3/出3/芸3/技3

【連続放火事件と、家族の過去】
 父の正志は癌に侵され、長男の泉水は大学院で遺伝子を研究中、次男の春は街中に残されたグラフィック・アートを消して歩く、奥野家の人々。仙台で暮らすこの一家と深い関わりのある犯罪者・葛城が町へ戻ってきたことを機に、放火事件が頻発。春は放火現場とグラフィック・アートとの関連性に気づき、泉水はそこから遺伝子にまつわる暗号を読み解いていく。やがて一家の哀しい過去が明らかとなったとき、兄弟が取った行動とは……。
(2009年 日本)

【掘り下げ不足】
 原作は未読だが、どうやらかなり脚色されている模様。
 遺伝、一家の過去、グラフィック・アート、ストーカーなどの各要素を上手にムダなく整理してあり、「嘘をつくときのクセ」という重要なファクターを“救い”として用意するなど、まとめとしてはマズマズだろう。
 だが、それ以上ではない。

 恐らく“家族”というテーマに注力するため、謎解き部分を相当に端折っていると思われる。その方向性じたいは正解だと思うが、「これこれこうでした」系の安直な処理へと走っているのがいただけない。

 また“家族”部分も、掘り下げ不足。とりわけ、兄・泉水のキャラクター設定がどうもフワフワしているのが痛い。真面目で勉強だけが取り得、肝心なところで何もできない彼が抱く、家族への想い、春に振り回されることの戸惑い、行動の陰にある決意などが滲み出てこないのだ。

 キーとして扱っていいはずの「深刻な話は陽気にすべき」というセリフも生かされていないし、「お前以上にこのことを真剣に考えた者はいないんだから、他の誰かに何かをいわれる筋合いはない」という“ムチャクチャだが説得力はある”泉水の言葉も唐突に感じられる。
 企画・脚本は『大停電の夜に』の相沢友子。そういえばあちらも、芯はあるんだけれど練り切れていない&不足が気になるシナリオだった。

 出演陣も同様で、悪くはないんだけれど「この人はこういう想いを熱く持っているんだ」と強烈に感じさせる光に欠ける。
 中でも、常にオドオド顔で心境の振幅を感じられない加瀬亮の芝居が、泉水のキャラクターの魅力を削いでいるように感じる。
 吉高由里子の夏子さんだけは見ていて楽しいので、もうちょっと登場シーンを増やしてあげたかったところだ。

 撮りかたも、雪道、エレベーター内の逆光、ビデオカメラを使った泉水と葛城の対話には「こんなふうに見せたい」という狙いが見られるものの、トータルとしてはフツーに撮っているだけでTVサイズ。
 1カット、1シーンが微妙に長く、各人物の心情をすくい取っているわけでもない。ラストの葛城も不用意というか、なんだかマヌケ。
 シナリオにおける不足を演出で補うまでには至っていないという印象だ。
 監督は『恋愛小説』の森淳一。あちらも消化不良なところの残る映画だったが、本作よりも「張り詰めた時間の流れ、つまらない作品にしたくないという決意、手間をかけて撮っている印象、叙情的な雰囲気」があったのに、今回に関しては残念だ。

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