ラスト・ブラッド
監督:クリス・ナオン
出演:チョン・ジヒョン/アリソン・ミラー/リーアム・カニンガム/JJ・フィールド/ラリー・ラム/アンドリュー・プレヴィン/マイケル・バーン/コリン・サーモン/マシエラ・ルーシャ/アイリッシュ・オコーナー/コンスタンティン・グレゴリー/リウ・レイ/チュン・イヒ/小雪/倉田保昭
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4
【オニを倒す、宿命を背負った少女】
応仁の乱に乗じて人の世に姿を現した、生き血を喰らうオニ。その勢力を根絶やしにすべく奮闘した名将・清正だったが、逆にオニの首領オニゲンによって葬られてしまった。時は流れ、ベトナム戦争さなかの1970年。人間社会に潜むオニを父の形見の日本刀で斬り続ける少女サヤと、彼女をサポートする“組織”は、在日米軍の関東基地へと潜入する。不幸な過去を抱えるサヤと、ふたたび動き出したオニゲンとの死闘が始まった。
(2009年 香港/フランス/中国)
【面白くもつまらなくもならなかった実写化】
『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の実写化作品。前半40分がアニメ版をアレンジしたような内容で、そこから先はオリジナル、というスタイルだ。
そのアレンジや増補=“まとめ”の方向性として、人間としてのサヤと心を通わせるアリスを登場させたり、組織が必ずしも一枚岩でないことを示したり、「戦争のさなかにノホホンと暮らす米軍基地内の若者たち」を挿入することで“平和と戦いとのコントラスト”を感じさせたり、そして当然のようにサヤとオニゲンとの因縁を盛り込んだり……といったモロモロは、決して間違いではないだろう。
が、依然として浅いというか、単に「継ぎ足した設定を、とりあえず全部見せるという方法論」が安っぽいというか……。面白いストーリー/映画にしきれていない印象だ。
本来ならサヤが抱える悲しみと苦悩をもっと前面に押し出していいはず。それが「アクション映画の小っちゃな土台」としか扱われていないため、全体的に浅さを感じる仕上がりになっているのだろう。
監督クリス・ナオンといえば『エンパイア・オブ・ザ・ウルフ』の人。あちらは「映像的なセンスは、まぁソコソコ以上。が、出来事の裏とか真相については、唐突に、しかもセリフで説明・提示。そこから強引に力まかせの解決へと持っていく」という作品だった。
今回はそこまでバカではないけれど、安直に回想に頼ったり、アリスの役割が掘り下げ不足だったり、中盤までの大乱闘に比べてクライマックスがあっけなかったりなど、ストーリー映画としての面白さを創出する腕に疑問が残るのは確かだ。
ただ、色調や陰影にこだわった画面作り、シンプルな出来事をつないでいくテンポのいい語り口、説明抜きにアクションで畳み掛けていく展開など、ソコソコ以上のセンスがあることも確か。
コリー・ユンが手がけたアクションも、スローあり、スピードをアップさせて見せる処理あり、ワイアーあり、剣も鉄槌もジャンプもキックも回転もありと多彩で、なかなかに楽しい(まぁ香港B級映画特有の安っぽさもあるけれど)。
そして、やはりチョン・ジヒョンである。相変わらず可愛いうえに、アクションも(映像的な工夫に助けられてはいるものの)意外とキレがいい。大金槌を振り回す姿なんか、けっこうイケてます。太ももにも萌え。
チャーミングな笑顔はほとんど見られないけれど、そのぶん苦しんだり悩んだり歯を食いしばったり哀しんだり、キリっとした流し目を送ったりと、魅力タップリだ(英名はGianna Junっていうのね)。
小雪も、こういう「見るからに悪いオンナ」の役にピッタリとハマっているし、倉田保昭にも見せ場がふんだんに用意されている。アリス役のアリソン・ミラーも、極めてアジア臭の強いこの作品の雰囲気を乱すことなく収まっている。
というわけで、カッコよさ重視という部分も含めて原作から大きく乖離することなく、かといって大幅に面白さが増したわけでもつまらなくしたわけでもなく、アクションとキャストの魅力を引き出すことに注力して、それにはとりあえず成功した実写化作品、という感じである。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント