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2010/11/15

つぐない

監督:ジョー・ライト
出演:ジェームズ・マカヴォイ/キーラ・ナイトレイ/シアーシャ・ローナン/ブレンダ・ブレシン/ハリエット・ウォルター/ジュノ・テンプル/フェリックス・フォン・シムソン/チャーリー・フォン・シムソン/アルフィー・アレン/パトリック・ケネディ/ベネディクト・カンバーバッチ/ピーター・ワイト/ダニエル・メイズ/ノンソー・アノジー/ジーナ・マッキー/ミシェル・ダンカン/ロモーラ・ガライ/ジェレミー・レニエ/ヴァネッサ・レッドグレーヴ/アンソニー・ミンゲラ

30点満点中18点=監4/話2/出4/芸4/技4

【幼い罪、引き裂かれたふたり】
 1935年、大戦の影が近づくイングランド。長男リーオンの帰宅を前に食事会の準備が進められるタリス家の大邸宅では、長女セシーリアと家政婦の息子ロビー・ターナーはたがいの想いを確認し、愛し合う。が、それを目撃した末娘ブライオニーの虚言により、ロビーは投獄されてしまう。やがて戦争が勃発、ロビーはフランスの前線で従軍し、ロンドンには看護師として働くセシーリアと、後悔に苛まれるブライオニーの姿があった。
(2007年 イギリス/フランス)

【作りの面白さと質の高さはあるが】
 日本ダービー馬ラッキールーラや宝塚記念を勝ったカツアールの父で、名脇役ランニングフリーのブルードメアサイアーでもあるStupendous。その馬名の意味が「途方もない/すばらしい」だと知った。
 ブライオニーが初めて書いたお芝居の台本を母親がそういって褒めるわけだが、まさにブライオニーの紡ぎ出した“途方もない”ストーリーを映画として見せるのが本作。

 タイプを叩く、クルマを殴る、そうした「出来事から派生する音」が自然とBGMに組み込まれていくサウンドメイクが面白い。しかもそれぞれの音楽は、まるで転がっていくようなリズムを刻み、あるいは理由のない強い意志のように響き、抗いようのない運命に流されていく人たちの様子をしっかりと支える。

 細かな動きを丹念に拾う反面、問いかけに対する答えを見せないなど、うつすもの・うつさないものの選択と編集で、人物の心情を浮かび上がらせていく手際も見事。
 とりわけ手紙をしたためるロビーと服を着替えるセシーリアのカットバックは、想いを直接ぶつけあっているわけではないのに「たがいにどう思っているか」がありありと伝わってきて、素晴らしいシーンだ。
 また、3歩進んで2歩下がる、という時制の作りも独特。これにより、同じ時空で異なる意志がさまざまにうごめく人の世の不思議とか、まったく前に進めない人の哀しさなどが漂うことになる。

 前半とはガラリ一転する後半部にはやや戸惑いを覚えるものの、ここでは海岸に集結する軍隊を1カットで描写してみせる場面が圧巻。物量を投入して観る者を“そこ”へ叩き込み、製作サイドの意気込みも感じさせる。当時のロンドンの風景を上手に見せたことも含め、美術チームと撮影チームの仕事は相当に立派だ。

 キャストではジェームズ・マカヴォイが、演じる役柄に合わせて「知性と情熱と粗暴さと優しさ」のバランスを上手にコントロールできる役者であると再確認できる。キーラ・ナイトレイの美しさも相変わらずだ。
 が、なんといってもシアーシャ・ローナン(最近のお気に入り)。立ち姿と歩く姿、結んだ唇と視線の動きで“少女と女の間”を鮮やかに表現してみせる。各映画賞の助演女優賞にノミネートされたのも納得の演技だ。

 そのほか、米アカデミー賞/ゴールデン・グローブ賞/英アカデミー賞などにおいて作品、監督、脚色、主演男優、主演女優、衣装デザイン、編集、撮影(『ワールド・トレード・センター』のシーマス・マッガーヴェイ)など数多くノミネートされ、ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門と英アカデミー賞で作品賞を受賞。音楽(『Vフォー・ヴェンデッタ』『ブラザーズ・グリム』『マンデラの名もなき看守』『ブレイブワン』のダリオ・マリアネッリ)がゴールデン・グローブとオスカーを獲得し、美術(『シャーロック・ホームズ』のサラ・グリーンウッドとケイティ・スペンサー)が英アカデミー賞を受賞。
 確かに、それだけの質を持つ格のある映画だといえるだろう。

 ただ「結局のところ、誰も(特にブライオニー)、意味のあることや救いにつながることを何もしていないじゃん」というストーリーには、最後まで感情移入することができなかった
 もちろん「幼い愛が引き起こした罪。それによって自分も周囲も苦しめられることの哀れ。そうしたことが繰り返される人の世の運命の惨さ」を描きたかったのだろうが、なんだか「どうしようかしら。いいえ、どうすることもできないわ」で終わってしまっているようで、釈然としない。

 作りの面白さとクオリティには目を見張るものがあるものの、もどかしさというか、「不幸せを描くなら、その不幸せに酔わせてくれよ」という思いの残る作品である。

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