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2010/11/11

アンダーワールド:ビギンズ

監督:パトリック・タトポロス
出演:マイケル・シーン/ビル・ナイ/ローナ・ミトラ/スティーヴン・マッキントッシュ/ケヴィン・グレイヴォー/デイヴィッド・アシュトン/ターニャ・ノーラン/シェーン・ブローリー/アレックス・キャロル/オリヴィア・テイルフォース/ケイト・ベッキンセイル

30点満点中17点=監4/話3/出3/芸4/技3

【種族を超えた愛】
 ヴァンパイアとライカンの抗争が続く世。ヴァンパイアの領主ヴィクターはライカンの子ルシアンを捉え、彼の能力の高さを感じ取る。ルシアンの血を利用して人間の奴隷を狼男化し、城の護衛や労役に役立てるヴィクター。ルシアンもまた「自分は人の意識を失った獣人たちとは違う」と囚われの身に甘んじている。だがルシアンと、父ヴィクターに反抗的な態度を取るソーニャが愛しあったことを機に、両種族の闘いは激化することになる。
(2009年 アメリカ/ニュージーランド)

★ネタバレを含みます★

【小さいなりに、まずまずの仕上がり】
 まずはシリーズ第1作『アンダーワールド』と、第2作『アンダーワールド:エボリューション』から基本設定のおさらい。

 不死の血脈であるコルヴィナス家に双子が生まれ、兄マーカスはヴァンパイア(吸血鬼)の、弟ウィリアムはライカン(狼男)の始祖となる。
 マーカスの血によって永遠の命と絶大な力を得た領主ヴィクターは、ウィリアムを捕縛・投獄し、狼男たちを隷属させることに成功。その後1000年以上に渡って両種族の抗争は続いたが、ライカンのリーダー格ルシアンが死んだことにより、趨勢はヴァンパイアへと傾いていくことになる。
 が、実はルシアンは存命。しかもヴィクターが眠っている間の留守を預かるクレイヴンと共謀し、密かに地下で戦力を蓄えていた。加えてルシアンはコルヴィナス家の直系子孫マイケルの血からヴァンパイアとライカンのハイブリッドを生み出すことを画策。やがてマイケルはヴァンパイアのセリーンと愛しあうようになる。
 禁断の愛の中、ヴィクターを命の恩人と敬うセリーンだったが、実はヴィクターこそ彼女の家族を殺した張本人。かつてヴィクターは自分の愛娘ソーニャも処刑していたが、ソーニャと瓜二つであるがゆえセリーンを手元に置いていた。そして戦いは、ヴィクター、復讐に燃えるセリーン、彼女を助けるマイケル、ヴィクターに私怨を抱くルシアンらか入り混じってクライマックスへと向かう……。

 ふう。前2作のことなんか、すっかり忘れていたよ。

 ただ本作は、忘れていても一応ついていけるよう上手にまとめてある。しかもズラズラっと解説するのではなく、なんとなく流れで設定や背景、登場人物の相関や“その後”を想像できるようにしてあって、良心的な作りだ。
 いかにしてヴィクターとルシアンが憎みあうようになったか、という点に絞ってストーリーを展開させたシンプルさが効いているのだろう。

 そのぶん、たとえばルシアンと人間の奴隷レイズの結びつき、ソーニャの侍女らしきルカの扱い、ヴィクターの側近タニスや長老たちの思惑……といった細かな部分はほったらかし、物語としての深みには欠ける。舞台はほぼ城内に限られていて、スケール感にも乏しい。

 いってしまえば小さい映画。でも小さいなりに、その範囲内でのトータルバランスは意外と良質だと思う。

 ブルーと光と闇とでまとめられた色調。派手ではないが手堅いCG。串刺しの迫力。スローやワイヤーに頼ってはいるものの、まずまずのリズムを出せているアクション。それらを盛り立てるBGM。
 セリフには「森よりも議会が怖い」とか「自由は伝染病」といった諧謔がこめられ、Death Dealerや「Hold your tongue!」など言葉遣いは独特で作品世界に馴染む。火種は常に身内にある、というシリーズを通じてのベースも押さえてある。

 監督は、前作や『ダイ・ハード4.0』『アイ,ロボット』などのプロダクション・デザインを担当し、またVFXやクリーチャー・デザインの仕事で『ヴァン・ヘルシング』『AVP』『エラゴン』『サイレントヒル』『バイオハザード III』『アイ・アム・レジェンド』といったモンスター系ヒット作に携わった人物だそうで、この映画が監督としては初長編作。その割には個性を最小限に押しとどめ、「怪物どばぁ~」にも陥らず、このシリーズらしさをキープ、実直に仕上げたという印象だ。
 キャストも、マイケル・シーン&ビル・ナイというシリーズにおける最重要人物をきっちりと用意し、ケイト・ベッキンセイルに似たローナ・ミトラを見事に持ってきて、これまた実直。

 で、いまさらながら感じたのは「愛と憎しみをベースにしたサーガ」、これって多分に『スター・ウォーズ』を意識しているよな、ということ。さすがに『スター・ウォーズ』と重み・深み・スケールを比べるのは酷だが、スモールな伝奇アクションのシリーズ第3作としては、まずまずの仕上がりといえるのではないだろうか。
 あ、観るなら、1-3-2の順をオススメしておこう。

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