フェイク シティ ある男のルール
監督:デヴィッド・エアー
出演:キアヌ・リーヴス/フォレスト・ウィテカー/クリス・エヴァンス/セドリック・ジ・エンターテイナー/ジェイ・モーア/テリー・クルーズ/ナオミ・ハリス/コモン/マルタ・イガレタ/ジョン・コーベット/アマウリー・ノラスコ/ノエル・グーリーエミ/マイケル・モンクス/ヒュー・ローリー
30点満点中17点=監4/話3/出4/芸3/技3
【警察の暗部へと男は近づいていく】
特捜課のトム・ラドロー刑事は、違法な捜査も厭わず、身の危険も顧みない強引な手法でワンダー部長の信頼を得ており、多少のやりすぎも証拠隠滅などで庇われていた。元相棒ワシントンが内務調査部のビッグス警部に密告していると知ったトムだったが、彼の目の前でワシントンは何者かに射殺されてしまう。自らが疑われることを案じ、また殺害犯を許してもおけないトムは、周囲の制止も聞かず若いディスカント刑事と独自捜査を開始する。
(2008年 アメリカ)
【キャストの楽しい警察映画】
原案は『L.A.コンフィデンシャル』などのジェームズ・エルロイで、監督は『S.W.A.T.』の脚本家。その2作同様本作もやはり“警察映画”として仕上がっている。
ただし解決するのは冒頭の双子誘拐事件のみ。後はひたすらトムがワシントン殺害犯を追う過程に費やされ、その事件にはウラがあるとわかり、そこから「警察内の暗部で何が起こっているのか」へと進んで、悪党はゴロゴロと出てくるけれど、ほとんど誰も逮捕されることはない。
いやホント、トムでなくとも「(警官本来の職務であるはずの)悪者を捕まえるっていう役目は?」と訊きたくなる。シロもクロも混じりあい、犯罪者と警官が協力し、誰が敵で誰が味方なのか区別のつかない世界。
ぎりぎりダークサイドに墜ちていないのはディスカントくらいで、「警官とは何か?」と問わざるを得ない内容だ。
事件のウラに何があったのかをペラペラっと喋って種明かしする部分はいただけないし、まぁありがちな真相ではあるのだけれど、全体としては、まさに「誰が敵で誰が味方?」「トムはどこへ向かっているの?」と興味を惹き続ける構成。
西海岸らしい乾いた空気が漂い、その中に血のニオイも混じったような絵が続く。テンポもよく、ガンファイトは狭いところに限るよなと思わせる緊迫感もあって、獲りかた・まとめかたは手堅い。
キャストも楽しい。
キアヌ・リーヴスの無機質な顔の作りは、こういう揺らぐ価値観の中で生きる男にピッタリ。フォレスト・ウィテカーも、正義と悪を体内に混在させて大物ぶっている役柄が実に合う。クリス・エヴァンスは血気盛んで「自分はデキる」と思っている若い刑事に適役だ。
その他、犯罪者や警官たちも“それっぽい”顔ぶればかり。ワシントンの未亡人を演じたナオミ・ハリス、ガルシア看護士役のマルタ・イガレタはいずれも美しくって、殺伐としたこの作品にあって眼に幸せな要素。アマウリー・ノラスコとかマイケル・モンクスも、アメリカン・ドラマ好きには嬉しい登場だ。
で、ヒュー・ローリー。ハウスっぽくヒネクレてはいるものの、意外なまでにカッコイイ。パロディと思しき描かれかた(ヒアリングが確かなら「医者みたいに鋭い」とか評されていたはず。傍らにはフォアマンっぽい部下もついているし)もされていて、なかなかに面白い存在だ。
と、軽い鑑賞も可能。描かれているのは、ドロドロっとしていて、警察への信頼感も損ねるようなことだけれど、作りとしてはスピーディで、重くならずに観られるエンターテインメントである。
にしても、あちらの警察って本当にこんな感じなんだろうか?
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コメント
「鳴尾記念なら連に絡むけどAJCCなら掲示板」って、わかりやすいんだかにくいんだか(笑)
母父がマイラーのアグネスタキオンかキングカメハメハって感じですか。
あ、でもそこまで上等じゃないなぁ。『バッドタイム』は捻りもスタイルもなくモヤっとしたまま進んでるように思えて、途中でギブアップしました。
そんなこんなで今後ともよろしくです。
投稿: たにがわ | 2010/12/22 17:52
デヴィッド・エアーの脚本かと思ったら違ってたのね。
この人の映画は良く言えばわかり易くって悪く言えば
捻りがない。物語の本質はモヤっと感があるのに
それを旨くまとめてるのはこの人得意の題材だからかな。
観なくても良いが、
「これってどう?」
と聞かれれば
「いいんじゃね」と言ってしまうような。
鳴尾記念なら連に絡むけどAJCCなら掲示板みたいな
そんな感じです。
投稿: ハル | 2010/12/22 11:08