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2010/12/07

チェンジリング

監督:クリント・イーストウッド
出演:アンジェリーナ・ジョリー/ジョン・マルコヴィッチ/ジェフリー・ドノヴァン/マイケル・ケリー/フランク・ウッド/コルム・フィオール/ジェイソン・バトラー・ハーナー/エイミー・ライアン/デニス・オヘア/ジェフ・ピアソン/リード・バーニー/リリー・ナイト/ジェフリー・ハッチソン/ピーター・ゲレティ/ジョン・ハリントン・ブランド/ウェンディ・ワージントン/リキ・リンドーム/ガトリン・グリフィス/デボン・コンティ/エディ・アルダーソン/アッシャー・エイクス

30点満点中18点=監3/話3/出4/芸4/技4

【本当の息子は、どこにいるのか】
 1928年のLA。電話会社で主任を務めるクリスティン・コリンズは、女手ひとつで幼い息子ウォルターを育てていた。だが帰宅の遅れたある日、ウォルターが忽然と姿を消していた。5か月後、ようやく警察はウォルターを発見するが、それはまったくの別人。警察の不正を糾すブリーグレブ牧師の協力を得たクリスティンは捜査の続行を主張するも、ジョーンズ警部は取り合おうとしない。そんな折、ある大量殺人の存在が明るみとなって……。
(2008年 アメリカ)

【責任、というものを感じさせる】
 クリスティンの夫=ウォルターの父は、ある「責任」を放棄して母子の前からいなくなったという。コリンズ家のモットーは「ケンカは売らないが、ケリはつける」だ。
 それらは、まさしく本作のキーワード。それぞれが果たすべき責任と、やるべきことに取り組んで決着を目指す。そうした、心意気とでも呼ぶべき価値観を強く意識した映画になっているのだ。

 より良い社会を作る責任を負う牧師は、警察の腐敗に真っ向から対峙し、事態の解決に奔走する。サンフォード少年は、望まぬ罪に手を染めたことの悔恨から、過ちの責任を少しでも取ろうとする。ヤバラ刑事は刑事としての職務をまっとうしようとする。クレイ夫人は同じ「被害者の家族」の責任としてクリスティンに連絡し、クリスティンの上司ベンは上司としての温かな視線と行動を貫き、医師や教師は責任を果たすべく証言台に立つ。
 もちろん母親の責任を胸に抱くクリスティンは、警察の圧力に対して意志を曲げることなく、いつまでもウォルターの無事を信じ続ける。

 逆にジョーンズをはじめとする警察上層部は、責任を放り出してその機能を果たそうとはせず、殺人犯ゴードン・ノースコットもただ自らの行動規範のみにしたがって、勝手気ままな言動を繰り返すだけだ。

 その対比の中で、事件は一歩ずつ真相へ近づき、責任を果たそうとしなかった者には糾弾のときが迫る。
 いや責任というよりも、思いやりとか自覚とか、人として、あるいは職業人として“当然持っているべき心”というべきだろうか。その心の発露の先に良き世界は築かれると、本作は告げているように思える。
 捜査時における人権の確保(ミランダ警告が発せられるのは1966年)という側面から見ても、また精神科での治療の技術的・人道的な進歩という点でも、人が人としての“当然持っているべき心”を手に入れるのは、まだまだ先のようであるが。

 作りの面でも“責任”にあふれた仕上がりだ。
 明らかに役者たちは、ああしろこうしろと指図されていないような芝居。自らの責任のうえで、それぞれの役柄を完遂していると感じさせる。
 とりわけアンジー。かなり『マイティ・ハート/愛と絆』と近い役で新鮮味には欠けるが、あちらよりも弱さと戸惑いを前面に出し、全身全霊でクリスティンになりきり、演じきる。この人が女優としてできることの振れ幅と細やかさに、あらためて感心させられる演技だ。ほかではサンフォード役のエディ・アルダーソン君が、なかなかに上手い。

 撮影監督トム・スターン、美術のジェームズ・J・ムラカミ、衣装のデボラ・ホッパー、編集のジョエル・コックスとゲイリー・ローチらは、いずれも監督の名パートナーたち。監督からの信頼に応え、陰影の豊富な絵、20年代の街並や人々を鮮やかに作り出し、少ないセリフと少ないカットでもダイナミックな動き・展開を実現する。それぞれの責任を完璧に果たすような仕事ぶりだ。

 全体に、淡々と出来事を追うことと、その中にいる人たちの感情を捉えることだけに終始しており、映画的な面白さやゾクゾク感は少ない。が、詰め込まれた“責任”を十分に感じ取れる作品だとはいえるだろう。

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