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2011/01/14

いとしい人

監督:ヘレン・ハント
出演:ヘレン・ハント/ベット・ミドラー/コリン・ファース/マシュー・ブロデリック/ベン・シェンクマン/リン・コーエン/ジョン・ベンジャミン・ヒッキー/サーマン・ラシュディ/デイジー・ターハン/トミー・ネルソン

30点満点中17点=監4/話3/出4/芸3/技3

【恋と人生に悩む39歳】
 育ての母から愛情を注がれて育った小学校教諭のエイプリル。同僚ベンとの結婚も幸福に包まれているように思えたが、子宝に恵まれず、ふたりの関係は冷えていく。ベンが出て行った直後、エイプリルにふたつの出逢いが。ひとりは実の母だというトークショーの司会者バーニス。そして、男手ひとつでふたりの子を育てている生徒の父フランク。新たな幸せを模索し始めるエイプリルに、思わぬ事態と“ウソ”が次々と降りかかるのだった。
(2007年 アメリカ)

★ややネタバレを含みます★

【本物の家族を求めて】
 さて、エイプリルが求めていたものは何だったのだろうか。
 たぶん、ありふれた愛情に満ちる“ありふれた家族”。育ての母に感謝しつつも、養子として育てられたことにどこか晴れない思いを抱き、だから自分は養子を取ることを拒み、自分を捨てた母も拒み続ける。

 でも結局のところ、彼女が築いたのは“特別な家族”だ。彼女の周りにいるのは、ウソつきの母、血のつながりのない弟、再婚、連れ子、肉体的・精神的な関係なしに生まれてくる子……。およそ「ありふれた」とはいえない存在ばかり。
 ただしキッカケや過程はどうあれ、エイプリルは「たがいに命の重みを感じあえる存在」としての、いわば“本物の家族”を手に入れたということなのだろう。

 調べてみると、ヘレン・ハント自身、本作で共演しているマシュー・ブロデリックと交際、別の俳優と結婚・離婚、9・11を目撃、40歳を超えてからボーイフレンドとの間に娘が生まれ、と、目まぐるしい人生を送っているらしい。

 ひとつのことにこだわったり、自分の置かれた状況に悩んだり、過去の失敗を悔やんだり未来に不安を抱いたり、ともかく否定したくなることに囲まれているアラフォーの女性に「こうありたいと願うこともいいけれど、いまあるもの、手に入れたものをどう受け止めるかが大切。周囲を尊い存在として感じることから始まる幸せもあるのよ」と訴えかけるべく、エイプリルの生きざまが用意されている。そんな映画だといえそうだ。

 女優ヘレン・ハントの監督作らしく、演技を大切にした作り。長回しを用いながら、自身やベット・ミドラー(自分に都合よくて、でもどこか憎めないおばちゃんセレブを好演)、コリン・ファース、マシュー・ブロデリックの芝居を丁寧にうつす。
 かといって「お芝居映画」にはせず、急にテンポアップしたりポンとシーンを遷移させたりするなどメリハリを効かせながら予測不能のストーリーを軽快に進めていく(切り返しのカットのつなぎに乱暴さはあるが)。

 とりわけ上手さを感じるのは、音の扱い。学校でも病院でもパーティーでもTV局でも、細かく「その場の音」を拾い上げて、人物たちの周りに広がる実在世界を画面の中に作り上げていく。
 あるいはBGMと人の心情・動きとをシンクロさせて、各シーンを立体的に仕上げていく。

 エイプリルの価値観がフラフラと動いて(というより「養子ではない男」である自分には身近に感じられなくて)、ちょっと感情移入しにくいところもあるけれど、初監督作としては上々、家族というものに関して考えさせる力を持つ映画になっているのではないだろうか。

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