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2011/01/08

ぼくたちの奉仕活動

監督:デヴィッド・ウェイン
出演:ショーン・ウィリアム・スコット/ポール・ラッド/クリストファー・ミンツ=プラッセ/ボビー・J・トンプソン/エリザベス・バンクス/ジェーン・リンチ/ケン・チョン/ケン・マリーノ/ケリー・ケニー/A・D・マイルズ/ジョー・ロー・トゥルーヒオ/マット・ウォルシュ/ニコール・ランドール・ジョンソン/アレクサンドル・スタムラー/カーリー・クレイグ/ジェシカ・モリス/ヴィンセント・マルテッラ

30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3

【落ちこぼれと問題児たち】
 ホイーラーはミノタウロスの着ぐるみ姿、ダニーは仏頂面。「ドラッグに手を出すな。これを飲め」とゲロマズなエナジー・ドリンクをPRするのがふたりの仕事だ。が、未来に希望を抱けず、恋人ベスにもフラれてしまったダニーはキレて暴走、ホイーラーともども裁判所から150時間の奉仕活動を命じられる。口の悪いロニーとファンタジー・ゲームに夢中のオージー、ふたりの少年の面倒を見ることになったホイーラーとダニーは……。
(2008年 アメリカ/ドイツ)

【不思議と温かい】
 映画として上出来というわけじゃない。
 無責任な落ちこぼれが新たな世界との交流によって目覚めていくという、ありがちなフォーマット。失敗や思いやりや衝突や恋があって、最後には大団円と、展開もベッタベタ。それらを、さして鮮やかに撮るでもなく、フツーに流していく感じだ。
 でも不思議と温かく、最後まで「ほわぁ~」と観てしまう。

 たぶん、ホイーラー役のショーン・ウィリアム・スコット、ダニーのポール・ラッド、ロニーを演じたボビー・J・トンプソン、オージーのクリストファー・ミンツ=プラッセ、この4人が「問題児だけれど悪いヤツでも変なヤツでもない」という空気をナチュラルに漂わせていて、かつ「どこにでもいる」というタイプだからだろう。
 そんな、助け合ったり認め合ったりしないと世の中を渡っていけないと自然に気づいている連中が、自然に関係を作り出し、モノゴトに対処しようとする物語だから、僕らに近い世界のお話として温かくなれるのだ。

 ついでに、ベス役エリザベス・バンクス、イケてないオージーが惚れてしまうちょっと可愛い女の子として説得力のあるエスプリン姫=アレクサンドル・スタムラーなど、女優陣もみな美しくて楽しい。
 音楽もイマ風で軽快。とりわけ『ベス』は名曲で、この軽くて温かな作品の締めにピッタリだ。
 小さな映画ながら細かくカットを割るなど丁寧さもあり、そうした安っぽさの排除も観やすさにつながっている。
 そして何より、KISSを上手に組み込んだ点を称えたい。

 本性をメイクで隠し、つまりは自分自身をコントロールすることで地位を築いたロックバンド。彼らと同じようにホイーラー/ダニー/ロニー/オージーも、偽りの自分に対する葛藤や、どうあるべきかがわからない不安を抱えていることだろう。
 でも、そうしたモヤモヤも自分の一部なのだと受け入れて、周囲の期待や好奇の目なんか放っておいて、とりあえず「好きなことをやろう」と、あるいは自分の価値観にしたがい損得抜きで行動しようとすることが、まずは大切なのだ。

 4人の関係をPIC=Partners in Crimeとするのはオーバーだし、原題である『ROLE MODELS』=お手本だとも考えにくい。ただ、やりたいこととやるべきことをやり遂げた先には、確かに相互理解や未来や可能性が生まれるはずだ。
 そんなテーマが、自然とにじみ出てくる「ほわぁ~」とした作品である。

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