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2011/01/16

アンストッパブル

監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン/クリス・パイン/ロザリオ・ドーソン/イーサン・サプリー/ケヴィン・ダン/ケヴィン・コリガン/ケヴィン・チャップマン/リュー・テンプル/T・J・ミラー/ジェシー・シュラム/デヴィッド・ウォーショフスキー/アンディ・アンバーガー/エリザベス・マシス/ミーガン・タンディ/ディラン・ブルース/ライアン・アヘム/トニ・サラドナ/アイシャ・ハインズ

30点満点中19点=監4/話3/出4/芸4/技4

【暴走する列車を止めろ!】
 運転士の不手際で無人の列車「777」が暴走を始める。ブレーキは故障中、積み荷は危険な毒物、行く手には急カーブと人口密集地……。操車場の主任コニーや運行部長ガルヴィンらは何とか止めようとするが、777はスピードを増していく。同じ路線上を走る「1206」に乗るのは、ベテラン運転士フランク・バーンズと、コネで入社したばかりのウィル・コルソン。ふたりは家族の住む町を救うため、危険な追跡をスタートさせる。
(2010年 アメリカ)

【映画的な作品】
 早い話が「暴走列車を止めようとする(だけの)映画」。一応は「家族」というファクターが加えられているものの、それは穴埋め、味つけ程度。離れたところからの協力、男前の女性、いけすかない上司といった「お話に厚みを持たせる常套要素」も盛り込んであるが、なぜエアブレーキが外れていたのか、なぜスピードが出ちゃったのかといったあたりはテキトーにすませてあって、「走り出しましたっ。止めてくださいっ」で突き進んでいく。
 比較対象としては『暴走機関車』や『スピード』があげられるはずだが、その両者よりもシンプルなお話(脚本は『ダイ・ハード4.0』『彼が二度愛したS』などのマーク・ボンバック)だ。

 シンプルだからこそ、どう描くかが重要。たとえば「ヘリから列車の屋根へ乗り移ろうとする」という1行を、いかにスリリングに見せるか。ベクトルとしては『宇宙戦争』あたりに近い、作り手の“映画として見せる力”が問われる作品といえるだろう。
 その点で、さすがの仕上がり。パンフレットに「トニーもデンゼルも、見えていないところまでリアリティにこだわる」という言葉があって笑えるのだが、まさにそういうスタンスを実感できる映画。

 列車の汚れ、サビ、水滴、操車場司令室のデザインといったディテールが上質(美術は『サブウェイ123 激突』のクリス・シーガーズ)。ホンモノの衝突や爆発や脱線をドカンと見せつつ(SFXは『デジャヴ』などのジョー・パンケーキや『オーシャン・オブ・ファイヤー』などのブルーノ・ヴァン・ジーブロックら)、VFX(『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』などのネイサン・マクギネスら)を適度に混ぜ込んでさらに迫力をアップさせてある様子。

 野次馬にはエキストラをどっさり呼び、その直近にヘリコプターを何機も飛ばす大胆さ。運転席を中からも外からも撮り、カメラはダイナミックに動き、列車に近づき、あらゆる角度から場面を押さえる(撮影は『トランスフォーマー/リベンジ』などのベン・セレシン)。
 編集(『落下の王国』のロバート・ダフィと『ビッグ・フィッシュ』などのクリス・レベンゾン)もスピーディ、サウンド(『スター・トレック』『アバター』などに携わったスタッフ)は立体的かつ重低音が轟き、音楽はジョコジョコ系で疾走感にあふれる(『マイ・ボディガード』『ドミノ』のハリー・グレッグソン=ウィリアムズ)。もちろんスタント(新007シリーズのゲイリー・パウエル)も頑張っている。
 スコット節に慣れているスタッフを中心に「本当に暴走している列車を、本当に止めようとしている状況」を見事に作り出している。ひたすら手に汗握るシーンの連続だ。

 単なるリアリティと迫力の追求にとどまらず、描写の妥当性というか、1カットに意味を持たせる上手さも感じるところ。
 ネッドがレストランから現場へ向かう場面では、クルマがドリフトしながら急発進、彼の「荒っぽいけれど腕は確か」なドライビング・テクニックをポンと印象づける。ダーシーの携帯からウィルの写真が消されていないのはまだ夫を見限っていない証拠だし、ハンドブレーキ操作のため運転席を出て行くフランクはコートを羽織りニットキャップも被って防寒と安全に気を払う。こういう細かさが、適確で味わい深い。
 おなじみの気忙しいスコット節が、ゴチャゴチャっとしたニュース映像と違和感なく融合するのも面白い発見である。

 演技陣では、デンゼル・ワシントンの余裕(いやハラハラの役柄なんだが役者としては「若いモンにいい場面を譲りつつ自分も美味しいところを貰っていくよ」という気持ちが見える)もクリス・パインの実直さも作品にハマっているが、何といってもロザリオ・ドーソン。『イーグル・アイ』に近い役どころながら、あちらより現場への馴染みかたとかスマートさ、頼もしさが増し、男社会で出世するために奮闘しながらも軽やかさを忘れていないコニーという人物を好演。思わず「姐さん」と呼びたくなる。

 と、いろいろ書いたものの、観ないと楽しさ・良さはわからない作品(当たり前か)。そういう意味で映画的な映画といえるだろう。

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