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2011/02/15

バガー・ヴァンスの伝説

監督:ロバート・レッドフォード
出演:ウィル・スミス/マット・デイモン/シャーリーズ・セロン/ブルース・マッギル/ジョエル・グレッチ/J・マイケル・モンクリーフ/レイン・スミス/ピーター・ゲレティ/マイケル・オニール/トーマス・ジェイ・ライアン/トリップ・ハミルトン/ダーモット・クロウリー/ハーヴ・プレスネル/ジャック・レモン

30点満点中18点=監3/話4/出4/芸4/技3

【自分のスイングを取り戻すために】
 ジョージア州サバナ。ゴルファーのラナルフ・ジュナは、第一次世界大戦で心に傷を負って自分のスイングを忘れ、英雄視されることも嫌い、恋人アデールにも連絡しないまま酒に溺れて暮らしていた。大恐慌で父が背負った借金を返済するため、ボビー・ジョーンズとウォルター・ヘイゲンの対決を企画するアデール。ようやく立ち上がったジュナも、謎めいたキャディー=バガー・ヴァンスやハーディ少年とともに、この試合に挑むのだった。
(2000年 アメリカ)

【ゴルフは人生に、人生はゴルフに似て】
 ゴルフ映画ではなく「人生をゴルフに喩えた映画」。とにかく示唆に富んだ言葉が散りばめられる。

「これはゲーム。勝ち負けではなくプレイすることが大切」
「過去か現在か、それとも未来か。目を閉じて、どこかにある『自分のスイング』を見つけるんだ」
「手のほうが頭より賢い」

 ゴルフは誰か特定の敵を打ち負かすのではなく、自分自身を磨き、コースという舞台設定の中で、ボールを通じて自分自身に挑むスポーツ。スコアの申告もプレーヤー自らがおこなうことになる。
 そして人生もまた、自分自身と向き合うもの。だからバガー・ヴァンスのアドバイスは、すべて人生に置き換えることができる。
 勝ち負けではなく、ただ生きること、生を楽しむことが大切。生きるために必要なのは、自分のスタイルと価値観。得てして、頭で考えるよりも体の中に自然と、自分の形は出来上がっているもの。

 ジュナは「酒の力でも、記憶をつかさどる細胞は死なない」とか「人は失意の中で、何も持たずに人生を終える」などという。過酷な戦争経験の中で自分自身を見失い、過去の自分とは異なる自分になってしまったことに戸惑っているようだ。
 無理のない話だろうが、そのネガティヴな思考を打ち払い、いまの自分にできる方法で、そして過去の自分に対して恥ずかしくない心で、新たな一歩を踏み出す、それこそが人生。彼の目を覚まさせるためにゴルフがあり、バガー・ヴァンスが遣わされた、そんなストーリーである。

 まだ先に歩んでいかなければならない人生を象徴するかのように、画面は常に「空間の奥行き」を意識させるようなレイアウト。夕陽やランプなど明かりを効果的に使い、世界を美しく見せることにも心を砕く。
 その中で人物たちはナチュラルに動き、カメラがそれを追う。1シーンを短く、紙芝居的に展開するシークエンスが多いのも、人生にはいろいろなことがある、と示したかったからだろうか。
 SEやサウンドトラックのオン/オフで上手に場面を盛り上げたり、3人のプレーヤーに浴びせられるエールの声質を微妙に変えたりなど、音関係の仕事も良質だ。

 ウィル・スミスは、飄々とした空気感、不思議と説得力のある口調、いずれも持ち味である特徴を生かして謎のキャディを好演。マット・デイモンは悩める青年となり、シャーリーズ・セロンは美しく、お転婆な中にも寂しさを感じさせる。ブルース・マッギルはサービス精神豊かな、ジョエル・グレッチは生真面目なゴルファーにハマる。そして映画を瑞々しく締める、J・マイケル・モンクリーフ君の活躍。

 もっとさまざまなアングルを駆使し、試合を見た目的にもドラマティックに描くべきだったと思う。また、ジュナの内面の葛藤、勝ち気なアデールが心に抱いている寂しさも、より深く、よりわかりやすく拾い上げるべきだったろう。
 が、トータルとしては気持ちよく、ゴルフを通して人生の“歩みかた”を考えるキッカケにはなってくれる、そんな映画だ。

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