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2011/03/27

ウォッチメン

監督:ザック・スナイダー
出演:マリン・アッカーマン/ビリー・クラダップ/マシュー・グード/ジャッキー・アール・ヘイリー/ジェフリー・ディーン・モーガン/パトリック・ウィルソン/カーラ・グギーノ/マット・フルーワー/スティーヴン・マクハティ/ローラ・メネル/ロブ・ラベル/ロバート・ウィスデン

30点満点中18点=監4/話3/出3/芸4/技4

【かつてヒーローと呼ばれた者たち】
 歴史の表と裏を支えてきた“ウォッチメン”と呼ばれるヒーローたち。だが、いまはニクソン大統領の施行したキーン条例により、彼らは活動を禁じられていた。冷戦が深刻化する中、世界を救うための新エネルギー開発に取り組む元ウォッチメンのオジマンディアスとDr.マンハッタン。そんな折、ウォッチメンのひとりコメディアンが何者かに殺害される。平和に暮らすナイトオウルや真相究明に奮闘するロールシャッハを待つ運命とは?
(2009年 アメリカ)

★ネタバレを含みます★

【派手なヴィジュアルの向こうの現実】
 同監督の『ドーン・オブ・ザ・デッド』『300』はある意味“バカ映画”だったが、今回は一転、架空の70~80年代アメリカで繰り広げられるアイロニカルで哀しい謎解きストーリーという、まったく毛色の異なる世界へと踏み込んでいる。

 見た目的には、この監督“らしさ”がタップリと発揮されている。
 デジタル処理バリバリの画面に、ふんだんに使用されたCG、アニメ的な絵づくりや決めポーズ。『300』ではアクションのスピーディな迫力を削ぐ原因となっていたスローモーションの多用も、ここでは使いかたの配分センスが向上したのか、なかなかカッコいい。

 ヒーローたちのデザインもそれっぽく、でもどこかイビツで、作品世界にマッチ。ナイトオウルの乗るアーチーや新エネルギーに関する装置などガジェット類も楽しい。
 サントラは、ナット・キング・コールにボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクルにジャニス・ジョプリン、ビリー・ホリデイにジミヘンと実にニギヤカ。モーツァルトやワーグナーも効果的に使われる。
 当時の有名人や事件をフィーチャーしたオープニング(ここからしてカネと手間ひまが尋常じゃないくらいかかっている)ともども、当時のアメリカを浮かび上がらせている。

 出演陣も、コメディアン役ジェフリー・ディーン・モーガンだけはそのまんまイメージ通りだけれど、ジョン=マンハッタンのビリー・クラダップやダニエル=ナイトオウルのパトリック・ウィルソンはこれまでと雰囲気をガラリと変え、オジマンディアスのマシュー・グードはいい具合に古さと堅さを漂わせ、ローリーのマリン・アッカーマンには素顔とヒーロー時に微妙なギャップがあり、ロールシャッハのジャッキー・アール・ヘイリーは渋くハードボイルド・テイスト……と、強烈ではないものの各キャラクターを立派に表現している。

 つまりは、外観や細かな部分からビルドアップして1つのフィクションを作り上げているわけで、「素材を生かし切れていない」と感じた『300』よりもグっと腕を上げたという印象だ。

 で、中身はといえば、これまた進化。ありがちなマッド・サイエンティストものといえなくもないけれど、過去作よりも“詰まった”ものとなっているのは確かだ。

 ウォッチメンとは、アメリカ的正義、あるいは大戦以後に形作られてきたアメリカ的価値観、アメリカの姿そのもの。科学万能主義(ダニエル)、倫理観の欠如(ローリー)、神の絶対性と宗教の不在の混沌(ジョン)、善と悪とのミックス(コメディアン)といった各要素を、それぞれのヒーローが背負っているように感じる。
 どれに頼っても、結局は戦争へと進む、この国。「いまあるものは、すべて奇跡」と神に語らせながら、その神は「人の心だけはどうにもできない」と人類を見放してしまう(あるいは「どちらへ進むかは人間次第」とも解釈できるか)。
 人が人である限り全人類的な危機を回避できないというジレンマの中で、最終的に選択されるのは、独善的かつ一方的で多大な犠牲の上に成り立つ世界平和(オジマンディアス)だ。純粋さと理想とを求める潜在意識(ロールシャッハ)は救いかも知れないが、その存在も消されてしまう。

 外観もストーリーも“作り物”でありながら、強く“現実”を意識させる内容ではないか。
 なんだか「正義のためには、まず悪を知ること」でスタートした『バットマン』シリーズに対して、「いやいや、そもそも正義とか悪とか境界線はなくて、ただ『何が効率的で現実的か』という選択で世界は作られているんですよ」と放たれたカウンター(『バットマン』より残虐な描写が多いことも含めて)のようにも思える。

 何度か登場するWTCツインタワー。その姿を現代まで守るためには、やっぱり独善的平和しかない、という点に、キツい皮肉を感じる作品である。と同時に、原子力発電の存在がクローズアップされているいまこそ観るべき映画なのかも知れない。

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