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2011/04/21

カオス・セオリー

監督:マルコス・シーガ
出演:ライアン・レイノルズ/エミリー・モーティマー/スチュアート・タウンゼント/サラ・チャーク/マイク・アーウィン/コンスタンス・ジマー/マトレヤ・フェダー/エリザベス・ハーノス/クリス・ウィリアム・マーティン/タイ・オルソン/ジョセリン・ローウェン

30点満点中18点=監4/話4/出3/芸4/技3

【人生は混沌だ】
 フランク・アレンは、1日の行動をすべてリスト化し、時間通り・優先順位通りに事を進めることが大切だと信じていた。ところがフランクの講演会当日、妻スーザンはイタズラ心で時計を10分進めてしまう。おかげで彼のリストには狂いが生じ、浮気疑惑や隠し子騒動も持ち上がり、知りたくなかった事実まで知ることになる。スーザンと仲違いし、すべてを信じられなくなったフランクは、親友バディの心配もよそに自暴自棄に陥って……。
(2007年 アメリカ)

【じっくり&軽快&上品な、大人向けコメディ】
 なんだかSFアクションみたいなタイトルだが、もし邦題をつけるとしたら『僕のハチャメチャ人生(ライフ)』だろうか。
 そういう、コンパクトでビデオスルーなコメディ。
 でも、おバカじゃない

 真横や真正面から平面的に舞台を捉え、シンメトリーを意識したカットが多い。それが退屈ではなく「綺麗に構成された画面」になっている。ライトをバックに女性を登場させたり、キーとなる場面ではカメラがすぅ~と寄っていったりなど、絵的なリズム感もいい。
 あらかじめ友だちの飲み物を注文しておくことでフランクの優しさ・律儀さを示す。バラの花束というアイテムにきっちりと仕事をさせる。つまりはセリフに頼らない語り口の上手さもある。
 コミカルなサントラや展開のスピード感・意外性が笑いを生むシーン(妊婦のくだりやホッケー観戦の場面)もあれば、しっとりとした音楽と芝居で青く沈むシーンも。その配分と、流れるようなテンポも上質。

 監督は主にTVで活躍している人物。それだけに大仰な作りではないのだけれど、このクラスのコメディにありがちな「ドタバタ&ガチャガチャ」としただけの気忙しいものにはしていない。じっくりと、軽快に、上品に、大人向けにまとめられた、観やすい作品となっている。

 キャストも、ジタバタと悩めば悩むほど深みにハマっていくフランクをライアン・レイノルズが好演し、エミリー・モーティマーやスチュアート・タウンゼントはそれぞれの人物像に合っていて、マトレヤ・フェダーちゃんも可愛くて、問題のない配役だ。

 そして「愛とは何か?」という、結構重いテーマへと踏み込んでくる。
 私見では、愛はすべてを超越する絶対的なものだけれど、脆くて壊れやすくて歪んでいるものでもある、と思う。たやすく誰かを好きになったり、簡単なことで冷めてしまったり、すぐにどこかへ消えてしまったり、人を傷つけてしまったり。
 が、そういう不確かなものだからこそ、人は殊更に愛だLOVEだと大騒ぎして、懸命になって守ろうとするのだ。

 たとえば冷静に考えれば、スーザンって酷い人間かも知れない。でもそこで彼女を自分の人生から追い出せば、もう“終わり”なのだ。愛の不確かさに負けることになるのだ。
 絶対的なものであるはずの愛は不確かなものでもあるわけで、つまり、この世に絶対は存在しない。人生はカオス。だから人は、せめて自分にできる最善の方法で、混沌の中に信じられるものを作り上げ、守るしかない。

 そういうことを、笑いの中で考えさせてくれる小品だ。

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