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2011/04/07

チェイサー

監督:ナ・ホンジン
出演:キム・ユンソク/ハ・ジョンウ/ソ・ヨンヒ/チョン・インギ/パク・ヒョジュ/キム・ユジョン/ハ・ソングァン/ク・ボヌン/イ・ジョング/イ・ムヨン

30点満点中19点=監4/話3/出4/芸4/技4

【追跡の果てにあるものは?】
 警察から追い出され、いまは風俗業の元締めをしているジュンホ。女2人が相次いで行方をくらましたことに腹を立てながら、ミジンを客のもとへと送り出す。相手の男が消えた2人と失踪直前に会っていたことを知ったジュンホは、その人物が女たちをどこかへ売り飛ばしていると踏み、ミジンと連絡を取ろうとする。が、実はその男=ヨンミンは、次々と女性を手にかけている連続殺人犯だった。ジュンホの追跡は、真相へ辿り着けるのか?
(2008年 韓国)

【疾走感とダークさと】
 実際に起こった事件をもとにしているらしいが、それよりも、ナ・ホンジン監督にとってこれが長編デビュー作ということのほうが驚き。相当なセンスの持ち主だろう。

 夜や室内はアンダー気味、逆に日中はギラリ。ダークな空気と放り出したくなる倦怠感のコントラストの中に、血と汗の臭いが漂う。
 かといって奇をてらった撮りかたではなく、むしろ、いま何が起こっているのか、何がキーとなるのか、各人の表情、体の動き、位置関係、アイテムなどを、そのシャープな映像でしっかりと、空間を広めに捉えながら、あるいはグっと寄りながら、うつすべきものをうつしていくような作り。

 メリハリの利いたカットはスピーディにつながれ、疾走感あふれるシーンを作り出す。そして各シーンは全体の中にバランスよく配置され、ジュンホの行動、ヨンミンの狂気、警察による捜査、ミジンの様子など、出来事や各人の思惑を、グダグダと説明せず、ときおりはポンと間を飛ばしてリズムを生み出して、観ればわかるように、テンポよくストーリーの流れを構成していく。
 サウンドトラックは重厚さとジョコジョコ感がほどよくミックスされたものとなっていて、「ここからが面白いとこです!」という盛り上げにひと役買っている。

 そうやって、先の読めぬストーリーでグイグイと引っ張っていく。
 ハリウッド的な作りだな、っていうかハリウッドが喜んでリメイク権を買いそうな仕上がりだな、と思ったら、案の定レオ様が動いたんだとか。それも納得できる、スタイリッシュさと血なまぐささとスピード感とわかりやすさとサスペンスとユーモアのバランス感覚に優れた作品だ。

 ただ、LAあたりを白人が走りまわるよりも、こうしてアジアの湿っぽい街並の中で、韓国人のオッサンが加齢臭と汗とを撒き散らすほうがリアル。
 ジュンホ役キム・ユンソクのクタビレた感と懸命さとがなかなかに素晴らしい。ヨンミン=ハ・ジョンウも見た目はフツーだが、だからこそ、その裏に潜む気色悪さを強く感じることができる。ミジンのソ・ヨンヒも美しい。

 とにかく、油断して観始めると、いつの間にか引っ張りまわされることは確実といえる、ストーリーとカットの走りっぷり。
 成り行きで仕方なかったとはいえジュンホがこんなにも駈けずりまわることになる、それに対するエクスキューズ(性格設定の深み、ミジンの娘との関係、ヨンミンを許せなくなる感情の描写など)だけがちょっと足りないようにも思えるが、十分に満足できるクライム・サスペンスだ。

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