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2011/05/18

レスラー

監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ミッキー・ローク/マリサ・トメイ/エヴァン・レイチェル・ウッド/マーク・マーゴリス/トッド・バリー/ワス・スティーヴンス/ジュダ・フリードランダー/アーネスト・ミラー/バーノン・キャンベル/オリヴィア・ベースメン/エマニュエル・ヤーブロー

30点満点中19点=監4/話3/出5/芸3/技4

【老いたレスラーの闘い
 必殺技「ラム・ジャム」を武器に一世を風靡したレスラー、ランディ“ザ・ラム”ロビンソン。伝説となった宿敵アヤトゥラーとの激闘から20年、スーパーマーケットで働きながら、いまだ彼はリングにも立ち続けていた。ただし主戦場はインディーズ団体の試合、相手はこれから売り出そうという若者たち。ボロボロの身体を引き摺って戦い続けるランディに、踊り子キャシディとの親交、重大な転機、娘との和解の機会が訪れるのだが……。
(2008年 アメリカ/フランス)

【タイトル通りの映画】
 あの3・1横アリも観に行ったし、米プロレス界の舞台裏を描いた『ピヨンド・ザ・マット』のDVDもロック様の自伝も持っている。そんな、アメプロにほんの少しだけ思い入れを持っている者にとっては嬉しい映画。

 撮るたびにテーマも作風もガラリと異なるアロノフスキー監督。今回はロートル・レスラーの生きざまを、アンダー気味、ギラリとしながらも浅い色調のハンディ・カム、その場感あふれる録音というドキュメンタリー・タッチで仕上げる。ストーリーどうこうではなく、ランディの周囲をそのまんま切り取っていくような作りだ。

 ギミックやブックの実際、クスリ漬け、日サロ通いに老眼に難聴、トレーラーハウスでのその日暮らし。助け合い、リスペクトを示しながらの肉体の酷使。なるほど、これからのし上がっていこうとする若きレスラーたちと、この世界から足を洗うキッカケを持たずにここまで来てしまった老レスラーの“いま”が、飾ることなく綴られる。
 ステープル・マシンを持ち出してハードコアをやらかすなど、試合/レスラーのリアリティも上々。この点では、SFX、スタント、メイクの力も大きかったはず。

 そうやってリアルに作られ、撮られていく「レスラーの生活」の中で動く人々も、また魅力的だ。ストリッパーになり切るマリサ・トメイ、黒髪で涙を流すエヴァン・レイチェル・ウッド、いずれも新鮮かつ美しく、ランディの生活を、華やかにならない程度に彩る。
 で、そのランディことミッキー・ローク。オスカー・ノミネートの際、しきりにマスコミは「復活」ともてはやしたが、いや、それどころではない。鍛え上げ、そこまで頑張るかというほど身体を投げ打って、「80年代に活躍したレスラー」といわれれば信じてしまいそう。
 ピュアで、器用貧乏で、自分を愛しているけれど筋肉の中には後悔もたっぷり詰まっているという役柄を、全身でまっとうする。

 長らく低迷したローク(『ドミノ』なんかはカッコよかったけれど)とランディとのイメージの“ダブり”が、本作がウケた要因であることは間違いないだろう。でも、そんなありきたりな評価とは別に、1レスラーであるランディの「他に何もできない漢(おとこ)」っぷりを描いた点こそが、この映画の魅力だ。

 ランディ“ザ・ラム”という呼び名に自らのアイデンティティを見出し、戦いで負ったのとは種類の異なる傷に恥を感じ、バックステージという現実からスポットライトの下にある夢の世界へ歩み出す瞬間に高揚を覚える。
 が、その夢の世界は実は彼にとってのリアルであり、ファンが日常を忘れるひとときは彼にとっての日常だという、ねじれ。
 そんなレスラーの“ありよう”が彼らの存在意義。全編にロックが流れ、揺れながら疾走するその“ありよう”を引き立たせる。『パッション』を引き合いに出して、傷だらけになって戦う男どもをキリスト(救世主)視までしてしまう。

 そう、まさに『レスラー』というタイトルにふさわしい映画になっている点が、本作の魅力なのである。

●主なスタッフ
 SFXは『エターナル・サンシャイン』のドリュー・ジリターノ、スタントは『アイ・アム・レジェンド』などに関わったダグラス・クロスビー、メイクは『レクイエム・フォー・ドリーム』『ファウンテン 永遠につづく愛』にも参加したジュディ・チン。

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