X-MEN:ファースト・ジェネレーション
監督:マシュー・ヴォーン
出演:ジェームズ・マカヴォイ/マイケル・ファスベンダー/ケヴィン・ベーコン/ローズ・バーン/ジェニファー・ローレンス/ニコラス・ホルト/ゾーイ・クラヴィッツ/ルーカス・ティル/ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ/エディ・ガテギ/アレックス・ゴンサレス/ジェイソン・フレミング/ジャニュアリー・ジョーンズ/オリヴァー・プラット/グレン・モーシャワー/マット・クレイヴン/ジェームス・レマー/マイケル・アイアンサイド/レイ・ワイズ/ジェイソン・ベギー/ローレンス・ベルチャー/ビル・ミルナー/モーガン・リリー/ドン・クリーチ/レベッカ・ローミン/ヒュー・ジャックマン
30点満点中18点=監4/話2/出4/芸4/技4
【ミュータントvsミュータントvs人類の戦争勃発】
ナチスのショウによって磁力で金属を操る技を開花させたエリックと、ミュータントの謎を解明すべく遺伝学の研究に勤しむテレパスのチャールズ。冷戦のさなか、ショウが第三次世界大戦の勃発を企てていることが明らかとなり、チャールズはCIAと協力、さらにショウを母の仇として憎むエリックや、隠れて生活している能力者たちも仲間に引き入れてショウに対抗しようとする。ただ人類は、彼らの存在を受け入れようとはしなかった。
(2011年 アメリカ)
【十分に面白いし、よくできてはいるんだけれど】
内外での評価があまりに高かったため観に行ったのだが、そうやって期待値を上げ過ぎたのがマズかったか。いや、ツマラないわけではなく確かに十分面白いのだけれど。
冷戦(キューバ危機)のパラレルストーリーに「若き日のプロフェッサーXとマグニートー」を絡めた筋立ては面白いし、その他の人物関係、それぞれの主義主張、対立と強調、能力の開花などをバランスよく盛り込んでテンポも軽快。序盤からラストまで観る者をグっと惹きつける展開は楽しい。
各ミュータントの個性も生かしてあってキャラクターをムダにしていないのもいい点。またチャールズとエリックの息のあったコンビネーションも見せてくれて、これはふたりのその後を知る者にとって嬉しい場面だ。
東欧からキューバ、潜水艦内にお屋敷に近代科学の粋などロケーションと舞台は多彩で、見た目のバリエーションは豊富(アートディレクターとしてなんと12人が関わっている)。各場面を盛り上げる音楽にも重厚感があるしサウンドも迫力たっぷり。
飛翔感にあふれるVFXも質がよく、ソ連での軍隊の行進などスケール感も手間ひまかけている雰囲気も伝わってくる。かといってそれだけに頼らないで、ストレートなドラマ部分もちゃんと描くバランス感覚も良。
とりわけ素晴らしいのが画面構成。室内でも室外でも人工物も自然界も、とにかく舞台を大きく捉えて広がりと奥行き感を作り出し、その中には立体的に人物を配置。『あしたのジョー』ばりに視界が広く、シネマスコープの大画面を目一杯に活用してやろうという気概にあふれる。かと思えばグっと寄ったりフォーカスを手前から奥へ切り替えたりするカットも多く、全体に生き生きとした画面になっている。
どこかの感想で「大スクリーンで観るべき」としてあったけれど、それには120パーセント賛同したい。
キャストの豪華さと適確さも特徴。ジェームズ・マカヴォイとマイケル・ファスベンダーは、意外なほどそれぞれの役柄にマッチしていて、自然と思想まで伝わってくるかのような佇まい。ふたり並んだヴィジュアルもいい感じだ。ケヴィン・ベーコンも(こういう映画は嫌がっていたように思うんだけれど)、悪役がビシリと決まる。
ジェニファー・ローレンスはけっこう可愛いし、ローズ・バーンは登場するシーンすべてで存在感を発揮するし、マイケル・アイアンサイドなどチョイ役でも意外な大物が登場するし、シリーズ・ファン向けのサービスもあるしで、役者を観ているだけでもなかなか楽しめる。
と、かなりの傑作になりうる要素を秘めている本作。マシュー・ヴォーンといえば『スターダスト』だが、あちら以上にパッケージングの上手さを感じる仕上がりだといえる。
ただ、いかんせん急ぎすぎというか、詰め込みすぎというか。
ストーリーとシナリオに計6人もクレジットされていて、それが裏目に出たのか、もう事態と出来事を追うのに手一杯で、チャールズやエリックらの心の奥底をジックリと掘り下げる部分が不足しているように感じる。
まぁ130分退屈させない凝縮感は評価できるものの、本来なら2本分くらい撮れる内容と展開じゃないだろうか。
ふたりの友情と価値観の違い、レイブンの心の揺れ、国家の思惑、ショウの精神の闇、ミュータントたちの個性などを増強したうえで前後編に分割すれば、シリーズ最高傑作どころかアメコミものの中でもベストといえる作品になったかも知れない。そう思うと、ちょっともったいない。
現状では「X-MENシリーズの中でもよくできた1本」という言葉の範疇を出ていないように感じる。
繰り返すが、それでも面白い映画ではあるんだけれどね。
●主なスタッフ
撮影は『オペラ座の怪人』などのジョン・マシソン、編集は『インセプション』などのリー・スミスと『バイオハザードII アポカリプス』のエディ・ハミルトン。
プロダクションデザインは『アンストッパブル』のクリス・シーガーズ、衣装は『キンキーブーツ』のサミー・シェルドン。音楽は『モンスターVSエイリアン』のヘンリー・ジャックマン、サウンドデザインは『トゥルー・グリット』のクレイグ・バーキー。
VFXは『スター・ウォーズ』や『ハンコック』の御大ジョン・ダイクストラ、SFXは『ダークナイト』のクリス・コーボルド。
と、かなり優秀な面々。気合いの入りかたが伝わってくる。
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