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2011/07/20

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2

監督:デヴィッド・イェーツ

30点満点中19点=監4/話3/出5/芸3/技4

【最終決戦! 生き残るのは、どちらだ!?】
 ヴォルデモートの魂を収めた分霊箱の発見と破壊を進めるべく、いまやスネイプに支配されたホグワーツ魔法学校へと侵入するハリー、ロン、ハーマイオニー。だがそこへ、ヴォルデモート率いるデスイーターたちが猛攻を仕掛けてくる。力を合わせて立ち向かう騎士団だったが、犠牲はあまりに大きかった。自身とヴォルデモートの関係、スネイプの秘められた過去を知ったハリーは、単身でヴォルデモートと対峙することを決意するのだが……。
(2011年 イギリス/アメリカ)

★ネタバレを含みます★

【責任を果たした、シリーズの終幕】
 正直、シリーズの中でもややアッサリ風味、静かな作りだと思う。ただし原作そのものの雰囲気も第5巻あたりで“冒険”から“心の旅”へとシフトしているわけで、それは織り込みずみ。こちらも、1本の映画を観る、というより、長らく続いた叙事詩の最後を見届ける、という感覚でスクリーンに向かっている。

 序盤で「それにしても度胸あるなぁ」と感じる。昨今のエンターテインメント映画のセオリーである「出だしからハデに」の逆を行く、ゆったりとした展開だ。そこには終幕へ向けて弾けるための助走=嵐の前の静けさという構成的な意図とともに、製作スタッフの「ハリポタそのものと、自分たちがやってきたことに対する自信」もまた、確かにあるように思える。
 無理やりハデにしなくったって、シリーズのファンはちゃんとついてきてくれるんだという確信。

 いや、やっぱ面白いでしょ、この原作(もちろん読了)。
 とりわけ今回あらためて感じたのは、ネーミングのセンス。ハーマイオニーという響きが持つ理性と可愛らしさと神秘性、アルバス・ダンブルドアの威厳、ルーナ・ラブグッドの不思議さ。「アブラケダブラ」なんて、どの国の誰が聞いても闇の呪文にしか思えないんじゃないか。
 もちろんこの最終章では、これまでのストーリーに詰め込まれた伏線の回収、緻密な構成力、前へ進もうという各人の強い意志と信頼感、成長などを感じ取ることもでき、それらを通じてシリーズ全体・物語全体としての魅力も再確認することができる。

 これだけ面白いんだから、小細工は不要。一貫して原作の持つ世界観を忠実に視覚化・再現するというベクトルで映画は作られており、それが映画シリーズとしても成功した大きな要因であることは間違いない。スタッフとキャストをなるべく共通させることによって、映画としてのイメージに一貫性を持たせた点も良心的だろう。
 もちろんVFXやサウンド面など技術の進化に応じてスケール感は徐々にアップしているし、キュアロン色の濃い『アズカバンの囚人』、監督がイェーツになった『不死鳥の騎士団』と、二度の明確な転換点もあるにはあったしで、『賢者の石』を振り返ると本作は“まったくの別物”ともいえるのだけれど、少なくともこれまで「ハリポタじゃない」と感じたことは一度としてなかったのは事実だ。

 個々のキャラクターを大切にし、原作の中の何が重要かをしっかりと把握している点もまた良心的。たとえば戦場を駆け回る三人の、実に頼もしいこと。これまで幾多の修羅場を潜り抜けてきた経験(そして、それらをちゃんと描いてきたこと)が積み重なって、決戦の中でみんな生き生きと輝き、そこに無理のないところが、シリーズとしての成功の証だろう。
 特にロンとハーマイオニーのキスシーン(原作以上に素晴らしいタイミングだ。あと、ルーナを探すネビルの決意もいい)には思わず涙した。なんかこういう場面を観たくって、ずっとシリーズに付き合ってきた気がする。
 もちろんスネイプが抱え続けてきた想いも大人になったハリーたちも(この2つは完全に「今回観たかったもの」だ。若かりし頃のスネイプ=アラン・リックマンの苦悩する姿と、子をもうけたハリーたちの様子は、ある意味で本作最大の見どころ)、ちゃんと観せてくれる。

 単純な「原作の視覚化・再現」のみにとどまらず、映画としてできること(映画にしかできないこと)に取り組んでいるのもシリーズを通じた特徴というか、製作サイドの矜持だろう。会話だけのシーンでも人とカメラの動きによるダイナミズムを重視し、常に「この物語世界の中で起こっている出来事、生きている人々」というものを意識させてくれる。
 ホウキを見つける→次のカットでは飛んでいる、といったテンポのよさもあるし、原作小説では味わえない音楽・音響を活用した演出も申し分ない。

 不満がないわけではない。最大の見せ場ともいえる「スネイプが抱え続けてきた想い」と「大人になったハリーたち」は、確かに提示してくれるけれどちょっと急ぎ足ですませてしまっているようにも思える。ホグワーツを舞台とした戦闘の詳細などかなりの省略もあって、原作を読んでいないとやや理解しづらい箇所もあるだろう。
 死後の世界を除けば既存の舞台しか出てこず、ヴィジュアルイメージに真新しさは少ない(ドラゴンの肌の質感などは見事だけれど)。3Dにした意味も、それほど大きくは感じられない。

 ただ、これだけのスーパー・ファンタジー小説を、原作と同様ほぼ年1本のペースで映画化するという大それたプロジェクトに、しかも原作の完結前から取り組み、それでも原作ファンを満足させる仕上がりを実現して、最後まで付き合ってよかった(もちろん全部劇場で観ています)と思わせてくれたので、作り手としての“責任は取った”といえるし、感謝もしたい。

 何年か経ったら、また読み返してみよう。そして、映画も“一気観”してみよう。そう感じさせてくれる、終幕である。


●出演
ダニエル・ラドクリフ……ハリー・ポッター
ルパート・グリント……ロン・ウィーズリー
エマ・ワトソン……ハーマイオニー・グレンジャー

マイケル・ガンボン……アルバス・ダンブルドア
アラン・リックマン……セブルス・スネイプ

ロビー・コルトレーン……ルビウス・ハグリッド
マギー・スミス……ミネルバ・マクゴナガル
ボニー・ライト……ジニー・ウィーズリー
マーク・ウィリアムズ……アーサー・ウィーズリー
ジュリー・ウォルターズ……ウィーズリー夫人
ジェームズ・フェルプス……フレッド・ウィーズリー
オリヴァー・フェルプス……ジョージ・ウィーズリー
ダムナール・グリーソン……ビル・ウィーズリー
クレメンス・ポエジー……フレア・デラクール
クリス・ランキン……パーシー・ウィーズリー
デヴィッド・シューリス……リーマス・ルーピン
ナタリア・テナ……ニンファドーラ・トンクス
イヴァナ・リンチ……ルーナ・ラブグッド
マシュー・ルイス……ネビル・ロングボトム
デヴォン・マーレイ……シーマス・フィニガン
ケイティ・リュン……チョウ・チャン
キアラン・ハインズ……アバフォース・ダンブルドア
エマ・トンプソン……シビル・トレローニー
ジム・ブロードベント……ホラス・スラグホーン
ジョージ・ハリス……キングスリー・シャックルボルト

エリー・ダーシー=アルデン……幼い日のリリー
ベネディクト・クラーク……幼い日のセブルス
アーサー・ブラウン……アルバス・セブルス・ポッター
ダフニー・デビーストギー……リリー・ポッター
ウィル・ダン……ジェームズ・ポッター

レイフ・ファインズ……ヴォルデモート
ヘレナ・ボナム=カーター……べラトリックス・レストレンジ
ジェイソン・アイザックス……ルシウス・マルフォイ
ヘレン・マクローリー……ナルシッサ・マルフォイ
トム・フェルトン……ドラコ・マルフォイ

ワーウィック・デイヴィス……グリップフック/フリットウィック
ジョン・ハート……オリバンダー老人
デイヴィッド・ブラッドリー……アルガス・フィンチ

ゲイリー・オールドマン……シリウス・ブラック
ジェラルディン・ソマーヴィル……リリー・ポッター
エイドリアン・ロウリンズ……ジェームズ・ポッター
ケリー・マクドナルド……ヘレナ・レイブンクロー

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