パニック・エレベーター
監督:リゴベルト・カスタニーダ
出演:アンバー・タンブリン/アイダン・ギーレン/アーミー・ハマー/ケイティ・スチュアート/マーベル・リベラ/ケイト・ジェニングス・グラント/エマ・プレスコット/クローディア・バソルズ/アンドリュー・ターベット/マーク・ブーン・ジュニア
30点満点中16点=監4/話2/出3/芸3/技4
【閉じ込められた3人】
工事中の古いアパート、故障したエレベーターに3人の男女が閉じ込められてしまう。喘息持ちの若い女性クローディアは、急いで病院へ向かわなければならない。拳に怪我をしているトミーは、恋人フランチェスカに関するトラブルを抱えている。慌てるふたりに「よくあること。すぐに動く」と医師のカールだけは落ち着いていたが、一向に救出隊はやって来ない。カールにもまた、早くここから抜け出さなければならない事情があるのだが……。
(2007年 イギリス/スペイン)
【作りは、そう悪くない】
何がどうなるのか、それぞれどんな事情があるのか、不明のままに引っ張り、フラッシュバックを挿入して3人の過去と現状を少しずつ明らかにしていく、という構成。展開も事情も実は大したことはないのだが、そのもったいぶったお話の進めかたでスリリングなテンションを保つ。
作りと見せかたも、やはり「大したことのない話に、どう惹きつけるか」というベクトルで練られている。監督、撮影ともメキシコでホラー中心に撮っている若手のようで、イマっぽいスタイリッシュな仕上がり。
覗き見的な視点、粒子感のある絵、露出はアンダー。近距離からの広角も望遠も使い、必要なものをキュっとうつすクローズアップも織り交ぜ、気忙しいカッティングを駆使。回想シーンでは音や色調をコントロールして、フラッシュバックであることを明確にする。そうして臨場感と緊迫感、わかりやすさをキープ。
また「ただちに警備員が向かいます」のアナウンスが引き起こす絶望感など、下手に説明せず観客に「ああ……」と溜息をつかせる技も上手い。
音楽は『ラン・ローラ・ラン』や『パフューム ある人殺しの物語』といったトム・ティクヴァ作品、『ザ・バンク 堕ちた巨像』などのジョニー・クリメックとラインホルト・ハイルで、その低く神経質に響くサントラも雰囲気アップにひと役買っている。
まぁ「どんなことでも起こる」という人生の真理+他人が居合わせる最狭空間としてのエレベーター、その組み合わせの割には面白い話でも面白い映画でもないけれど、「こう作りたい」というプランニングをそのまま形にしている印象はあって、悪くはない。
ただ「あっちの若者も携帯とゲームのことしか頭になくって、大人はそれにイラついているんだなぁ」という、どうでもいい感想しか残らない作品かも知れない。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント